大戸屋買収の「コロワイド」 約▲100億円の最終赤字
LIMO / 2021年7月12日 7時0分
![大戸屋買収の「コロワイド」 約▲100億円の最終赤字](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_24165_0-small.jpg)
大戸屋買収の「コロワイド」 約▲100億円の最終赤字
昨年『大戸屋』の買収が話題となったコロワイドは、2021年3月期に約▲100億円の最終赤字を計上しました。大幅赤字は、子会社で焼肉店『牛角』などを運営するレインズインターナショナルの赤字転落が最大の要因です。
これまで焼肉事業が最大の利益事業であった同社ですが、コロナ禍で焼肉のスタイルの変化が生じる中で焼肉事業の復活がなされるのか注目されます。
コロワイドが2021年3月期に約▲100億円の赤字を計上
外食チェーン店の積極的な買収で知られ、昨年はTOBで『大戸屋』(大戸屋HD:2705)を子会社化したコロワイド<7616>が、2021年3月期は(親会社の所有者に帰属する)当期利益▲97億円の大幅な赤字を計上しました。コロナ禍で各外食チェーン店の経営が苦境に陥っていますが、2期連続の赤字(2020年3月期の当期利益▲64億円)であり同社も例外ではありません。
拡大する(/mwimgs/1/9/-/img_196e2f338cdbd0bbe624f6a246784bf4202373.png)
【出典】株式会社コロワイド「2021年3月期の業績に関する説明資料及び中期経営計画」
コロワイドは居酒屋『甘太郎』が事業の源流となりますが、現在の店舗はレストラン事業85%、居酒屋15%であり、レストラン事業が中心です。ただしレストラン事業の中でもアルコールを伴う飲食が多い「焼肉」主体の店舗構成です。
『牛角』のレインズインターナショナルが37億円の黒字→▲42億円の赤字に
2021年3月期の同社の各事業部門の子会社の損益は下記となりました。
アトム(回転寿司) 事業利益▲10億円(前期15億円)
レインズインターナショナル(焼肉) 事業利益▲42億円(同37億円)
カッパ・クリエイト(回転寿司) 事業利益▲3.5億円(同7.6億円)
大戸屋HD(定食) 事業利益▲0.6億円(前期は子会社化前)
現在の同社は「焼肉・しゃぶしゃぶ」業態が1218店と全店の43%(直営+FC)を占める最多の状態です。「焼肉・しゃぶしゃぶ」業態の多くを占めるレインズインターナショナルが前期の37億円の黒字から▲42億円の赤字に転じており、全体の赤字に大きな影響を与えました。
セグメント別損益では売上の変化も注目されます。前期(2020年3月期)は、レインズ1097億円、カッパ740億円、アトム451億円の順でしたが、今期はカッパ643億円、レインズ584億円、アトム320億円であり、レインズは売上が前期比で約半分となりました(外部顧客への売上のみを対象)。
レインズインターナショナルは2度目の経営危機を乗り切れるか?
レインズインターナショナルは、2000年代初等に格安焼肉店『牛角』で急成長を遂げたことで知られています。しかし急速な多店舗・多業態の展開に行き詰まり経営状態が急速に悪化し、ファンド支援によるMBOで非上場化がなされ、コロワイドが買収し現在に至ります。
レインズインターナショナルは今回2度目の経営危機といえます。コロナ禍はコロナワクチン接種により克服の方向となりつつあります。しかし顧客が机を囲んで焼肉をつつく、という焼肉店のスタイルはアフターコロナの時代に変わらざるを得ません。実際に一人焼肉店の『焼肉ライク』は成長しています。(『焼肉ライク』の創業者はレインズインターナショナルの創業者の西山知義氏)
これまで稼ぎ頭であったレインズインターナショナルが一転赤字となりましたが、来期以降再びグループの稼ぎ頭として復活できるのか、焼肉のスタイルの変化とともに注目されます。
自己資本378億円の2倍超。810億円の“のれん”が計上、減損リスクも存在
買収を繰り返して成長を果たしたコロワイド社は、2021年3月期の貸借対照表に“のれん”が810億円計上されています。資本合計は378億円であり、資本合計の2倍以上の“のれん”です。
同社は2020年3月期、2021年3月期と2期続けて最終赤字であり、更なる赤字の連続は“のれん”の減損というリスクに直結します。資本合計の2倍以上の“のれん”を計上する同社は、1/2の減損でも債務超過転落となるため減損は非常に厳しい結果をもたらす可能性があります。
その観点からも今期の全体に加え各事業の黒字化は必達目標となります。特にセグメント資産でも全体の約4割を占め、1100億円の資産を持つレインズインターナショナルの復活は必要不可欠です。
オリンピック期間中の東京での緊急事態宣言の発出などはあるものの、コロナワクチン接種の進展とともに、今後徐々に外食産業も回復が見込まれます。しかしビフォーコロナとアフターコロナで外食スタイルの変化が予想される中、皆でテーブルを囲む焼肉のスタイルの変化はコロワイドの行方にも大きな影響を与えます。
レインズインターナショナルは今期海外中心の出店や少人数・個人客を対象とする店舗の改装も行い、2022年3月期の事業利益は37億円と2020年3月期の水準に戻す計画です。今後の焼肉のスタイルの変化とともに、コロワイドの業績の行方が注目されます。
参考資料
株式会社コロワイド「2021年3月期の業績に関する説明資料及び中期経営計画」(https://ssl4.eir-parts.net/doc/7616/ir_material_for_fiscal_ym/100577/00.pdf)
2021年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(https://ssl4.eir-parts.net/doc/7616/tdnet/1967685/00.pdf)
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