災害復旧を阻む「所有者不明土地」問題。政府利用と情報共有で解決を
LIMO / 2021年7月18日 19時35分
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災害復旧を阻む「所有者不明土地」問題。政府利用と情報共有で解決を
全国で増え続けている所有者不明土地について、災害復旧等に必要なら政府が自由に使えるようにすべきだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
不動産の登記を義務化したのは賢明
全国で所有者不明の不動産が増加しています。日本では不動産を相続した時に登記をする義務がないので、先祖の名義で登記されたままの土地が大量にあるのです。
都会の土地であれば、価値があるので相続人が所有権を主張しようと登記するのでしょうが、田舎の土地であれば登記費用を惜しんで登記しないというケースも多いのでしょう。特に、高度成長期に都会に出てきた「金の卵」たちの多くは田舎に戻って農業や林業に従事する気もないでしょうから、田畑や山林の所有権には興味がないのでしょう。
問題は、これから「金の卵」たちが大量に被相続人となり、ますます所有者不明の土地が増えそうだということです。金の卵たちは田舎の村人とも交流があるかもしれませんが、その相続人は田舎の村人とは交流もなく、それこそ誰が田畑等の所有者なのか不明になってしまいかねないわけですね。
田畑のままであれば良いのでしょうが、そこが高速道路の予定地となった場合には道路建設に支障が出ます。災害復旧のために所有者を特定して所有者の了解をとる必要が出てきた場合には、復旧の障害になりかねません。実際、3年前の西日本豪雨の復旧工事が所有者不明のために開始できていないといった例もあるようです 。
政府は、こうした事態に対処するため法律を改正して相続登記を義務化しましたから、今後発生する相続についてはきちんと登記がなされると期待していますが、すでに所有者が不明な土地も多いですし、問題が簡単に解決するわけではなさそうです。
未登記の土地は政府が利用できる制度を
こうした問題に対処するためには、相続登記のみならず、すべての土地の登記を義務化した上で、登記簿から所有者が特定できない土地については政府が必要に応じて利用して良いという制度を作るべきでしょう。
現在でも土地収容法などがありますが、手続きが面倒なようです。そうではなく、登記義務を怠っている側に問題があるわけですから、政府が必要に応じて利用してしまって良いということにするわけです。
所有者が「この土地は勝手に使わせないから、元に戻せ」などと文句を言ってきても認めないということですね。まあ、土地の所有権は政府に移した上で、土地代は払ってあげれば良いでしょう。どうせ高価な土地ではないでしょうから。
「権利の上に眠る者は保護されない」というのは民事時効の根拠とされる考え方ですが、所有している土地を義務に反して登記していない所有者の所有権は保護に値しない、と考えるべきだというわけです。
登記担当と戸籍担当の情報共有が重要
相続登記を確実に実行させるためには、相続が起きた事実を登記担当が知る必要があります。そのためにはすべての不動産が誰の所有になっているかを戸籍担当が知っている必要があり、死亡届けが提出されたら直ちに所有不動産について登記所に連絡をする必要があるわけです。
当然ですが、すべての情報はデジタル化して登記担当と戸籍担当が自由に見れるようにしましょう。所有者情報はマイナンバーを使って名寄せをすれば簡単に見つかるはずですから。
これに対しては、マイナンバーは税務署等の限られた部署しか使えないといった規則が障害となり得ますが、そのような規則は撤廃すれば良いのです。
国民が政府に無闇に情報を握られたくないというのは当然のことですが、政府の一部が持っている国民の情報を他の政府部門に知られないように制限したいというのは、「政府は非効率であって欲しい」ということです。これは合理的ではないと思います。
10万円の特別定額給付金の交付に際しても、マイナンバーを使った効率的な配布ができれば良かったと思いますし、持続化給付金の詐欺事件も、税務署が持っている前年度の所得の情報が共有されていれば起きなかったと思います。
政府をデジタル化して効率化することと、政府に監視されないようにするのは別のことです。不動産を相続したのに登記していない人がいることで行政手続きが滞るのであれば、政府が持つ登記情報と戸籍情報を突き合わせるのは当然のことであり、その作業の効率化のためにマイナンバーの利用が有効ならば、使うべきです。国民がこれを拒否する理由はないでしょう。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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