60歳の貯蓄100万円未満が増加。二極化はどこまで進んでいるか
LIMO / 2021年7月22日 19時35分
60歳の貯蓄100万円未満が増加。二極化はどこまで進んでいるか
還暦60歳はセカンドライフの入り口。会社員なら定年を迎え、家庭では子育てが一段落し、自分の時間を持てるようになれば旅行や趣味に興じたいと考える人も多いのではないでしょうか。筆者もそのうちの1人なのですが、セカンドライフの現実を覗いてみると、そう甘くはないようです。
PGF生命※が2021年4月、今年還暦を迎える1961年生まれの男女を対象に「2021年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」を実施。その結果から、60歳のリアルなお金事情を見てみましょう(有効回答:2,000人)。
※プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社
還暦人の理想と現実
理想のシニア像は?
まずは「なりたいシニア像」について聞いたところ、回答数の多いトップ3は以下のようになりました(複数回答)。
1位「悠々自適シニア(のんびりと自由に過ごす)」(920人)
2位「趣味人シニア(趣味を楽しむ)」(707人)
3位「マイペースシニア(何事もマイペース)」(651人)
男女別に見ても1位は「悠々自適シニア」で共通しています。好きなことをしてのんびり過ごすのが理想と考える還暦人は、少なくないようです。
60歳で完全リタイアを考えるのは少数
一方、60歳以降、何歳まで働きたいかと聞いたところ、平均は67.2歳。約8割は65歳以降も働きたいと回答しており、3人に1人は70歳以降も働きたいと考えているようです(図表1参照)。
反対に、働くのは60歳までと考えているのは約15%。理想とする「悠々自適」の暮らしは、少なくとも65歳以降のことをイメージしているのかもしれません。
貯蓄の平均と分布は?
また、現段階の貯蓄金額(配偶者がいる場合は夫婦2人分)を聞いたところ、平均は3,026万円。ただし、金額帯で最も回答が多かったのは100万円未満の25.0%となっています。以下、各金額帯の割合です。
100万円未満:25.0%
100万円~300万円未満:10.7%
300万円〜500万円未満:4.7%
500万円~1,000万円未満:12.2%
1,000万円~1,500万円未満:10.6%
1,500万円〜2,000万円未満:3.4%
2,000万円~2,500万円未満:7.8%
2,500万円〜3,000万円未満:1.1%
3,000万円~5,000万円未満:7.5%
5,000万円~1億円未満:8.4%
1億円以上:9.0%
100万円未満の世帯構成別内訳を見てみると、おひとり様世帯が32.9%、夫婦2人世帯22.0%、子育て期世帯22.5%、子どもと同居世帯22.7%と、おひとり様世帯の割合が他の世帯と比べて高くなっています。
注:世帯構成の分類は以下のとおり。
「おひとりさま世帯」:子どもがいないか子どもと別居しており、配偶者がいない層
「夫婦2人世帯」:子どもがいないか子どもと別居しており、配偶者がいる層
「子育て期世帯」:未成年、または就業していない 20 代の子どもがいる層
「子どもと同居世帯」:就業している 20 代、または 30 歳以上の子どもと同居をしている層
コロナ禍で「100万円未満」が増加
前年調査との比較では、貯蓄が「100万円未満」と回答した割合は2020年調査の20.8%から2021年には25.0%と、コロナ禍の1年で4.2ポイント上昇しています(図表2参照)。
貯蓄の多い層も増加し、二極化が進む
前述のように平均貯蓄額は3,026万円とありますが、貯蓄額「1,000万円未満」が47.9%と約半数を占めていることからも、貯蓄額はかなり二極化しているといえます。
そして、コロナ禍の株高も影響したのか、「5,000万円~1億円未満」は2020年の8.0%から2021年は8.4%へ、「1億円以上」は7.3%から9.0%と比率が増加。
新型コロナウイルスが、持つ者と持たざる者の二極化をさらに加速させたことがうかがえる結果になっています。
どんな不安を抱えているか?
では、60歳還暦以降の人生で、何が不安だと思っているのでしょうか(複数回答、図表4参照)。
1位「収入の減少(60歳以降の雇用形態の変更など)」(53.2%)
2位「身体能力の低下(体の病気や寝たきりなど)」(50.5%)
3位「年金制度の崩壊」(46.1%)
4位「判断能力の低下(認知症等脳の病気や車の運転など)」(43.3%)
5位「自分の介護」(37.1%)
健康で長生きできれば良いのですが、病気や認知症、介護など、長生きすることで生じる不安もあります。そして還暦を迎える時期は、体の不調や体力の衰えを感じることも少なくなく、より体への不安を感じてしまうのかもしれません。
昨年の調査と比べて割合の増加が目に付く項目は以下の通りです。
「収入の減少」:2020年41.4%から2021年53.2%へ、11.8%上昇
「年金制度の崩壊」:2020年37.2%から46.1%へ、8.9%上昇
60歳以降、再雇用制度などで仕事を続ける場合も、収入は大幅にダウンするケースが大多数です。そこにきて、コロナ禍による経済悪化で先々の収入の不安が高まるのは言うまでもありませんから、老後の頼みの綱である年金を心配する気持ちは納得できるものです。
おわりに
悠々自適なセカンドライフに憧れるものの、現実はそれほど甘くはなく、収入や年金といったお金の不安を抱えている還暦人は少なくないようです。
今年4月から改正高齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務になりました。ただ、60歳以降も働いて老後の生活費を稼ぐという選択肢が広がりつつあるとはいえ、希望する収入を得ることはそう簡単ではありません。
老後は年金と貯蓄で悠々自適に暮らせるというのは、今の時代には高嶺の花なのかもしれませんね。
参考資料
2021年の還暦人(かんれきびと)に関する調査(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000034778.html)(PGF生命)
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