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子どもの読解力低下「情報の評価や伝えること」が苦手。改善できる?

LIMO / 2021年7月22日 18時35分

子どもの読解力低下「情報の評価や伝えること」が苦手。改善できる?

子どもの読解力低下「情報の評価や伝えること」が苦手。改善できる?

大規模な国際的学力調査である「PISA」。3年ごとにOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に、15歳(義務教育修了段階)を対象に行われています。

学習到達度を調べるPISAの名が広く知られるようになったのは2003年、2006年の結果で日本の順位が大きく落ち、メディアで大々的に取り上げられてからです。このことが「ゆとり教育」からの方向転換のきっかけになったとも言われています。

このように何かと注目されるPISAですが、2018年の結果では日本の子どもの読解力低下が顕著となりました※。

※本来2021年に行われる予定のPISA2021は、新型コロナウイルスの影響で1年延期が決まっている。

日本の子どもたちはどこが弱いのか

PISAでは学力の3分野「読解力「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」が測られます。また、毎回詳しく調査する中心分野が設けられており、2018年の中心分野は読解力でした。

日本のこれまでの結果はというと、数学的リテラシーと科学的リテラシーは2006年の調査を底に上昇。その後の調査でもトップレベルを安定して維持しています。

一方の読解力は2003年と2006年でともに30カ国中12位と振るいませんでしたが、2009年には34カ国中5位と改善し、2012年は1位になりました。

しかし、理系分野のようにトップレベルを維持することは叶わず、2015年に35カ国中6位と順位を落とし、2018年は37カ国中11位という結果になっています。

ちなみに、2015年からはコンピュータ使用型問題が導入されており、読解問題は横書きのブログ形式の文章や企業のウェブサイト、オンライン雑誌記事などデジタル化社会を反映したものとなりました。

ある意味、子どもたちにとって普段のテストより身近な文章かもしれませんが、文部科学省・国立教育政策研究所の「OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」では、以下のような課題や問題点が挙げられています。

テキストから情報を探し出す問題や、テキストの質と信ぴょう性を評価する問題などの正答率が比較的低い。

自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに課題がある。

「分からない言葉が多かった」

日本語には、漢字、ひらがな、カタカナの3種類の文字を組み合わせるという複雑さがあります。そして、その3つの文字で記されている言葉の意味を理解していないと、テスト問題の文章が分からず正しい答えを導くことができません。

2018年には『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という本がベストセラーになりましたが、教科書が読めない、理解が怪しいというケースは実際にあります。身近なところでは、筆者の子どもの同級生に教科書に出てくるほとんどの漢字にフリガナを書き込んでいる子がいると聞き、驚いたことがありました。

PISAの調査結果の要約でも、「PISAの調査問題における難しさの認識」という問いに対して、日本の子どもは以下の3項目に「まったくその通りだ」および「その通りだ」と答えた割合がOECDの平均より高いと指摘されています。

「分からない言葉が多かった」

「自分には難しすぎる文章が多かった」

「複数ページを読んでいるうちに、どこを読んでいるのかわからなくなった」

幅広い知識を吸収する機会が減っている?

日本語をめぐる環境の変化として、若年層を中心にテレビや新聞離れが加速していることがあります。良い意味でも悪い意味でも、こうした昔からあるメディアは様々な分野の知識や語彙を伝える役割を担っていました。

それに対し、今ではスマートフォンの登場や技術の進化により、個々の趣味嗜好に合わせたニュースや動画が次々に表示されるようになっています。言うなれば、より便利な社会になった一方で、「幅広い知識を吸収し、様々な言葉を獲得する機会」が減少しているという側面もあるのです。

親としては情報が偏りやすい時代であることを認識し、メディアが伝える時事的な話題について話し合ってみるなど、家庭での会話を通して子どもの語彙力を広げていくことを考えなければならないでしょう。

「書く」「説明する」能力を伸ばす試み

今は、義務教育でも書くことや説明する機会を増やす方向にあります。つまり小学生の頃からプレゼンテーション能力の素地を作ろうとしており、社会に出てから役に立つ実践的な能力を身につけることが重視されています。

何かを書いたり人に説明したりする時には、「相手により伝わりやすい文章」を考える必要があります。そのため、こうした教育の中で日本の子どもの読解力が改善する可能性はあります。

もちろん、これまでのように読書を通じた語彙力獲得は子どもの国語力を下支えし、読解力が伸びやすくなります。それと同時に幅広い分野の知識や語彙に触れる機会が減っている現実を受け止め、対策を講じていくことも必要です。

そうしたことを意図的に行っている家庭とそうではない家庭では、子どもの読解力格差が広がりかねないことも意識しておくべきでしょう。

参考資料

OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf)(文部科学省・国立教育政策研究所)

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)〜2018年調査国際結果の要約〜(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf)(文部科学省・国立教育政策研究所)

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)〜2018年調査問題例〜(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/04_example.pdf)(文部科学省・国立教育政策研究所)

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