年金の扶養手当「加給年金」は、誰が・いくらもらえるの?
LIMO / 2021年7月31日 12時15分
![年金の扶養手当「加給年金」は、誰が・いくらもらえるの?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_24433_0-small.jpg)
年金の扶養手当「加給年金」は、誰が・いくらもらえるの?
今まで、一家を収入面で支えていた人が年金受給者になってしまうと、急に収入が減って生活に支障をきたす場合があります。
そこで、厚生年金には、その人によって生活を維持されている配偶者や子どもがいる場合に、年金額が増額される加給年金制度があります。
加給年金は年金の「扶養手当」にあたるものです。どのような条件で支給されるのか、金額はいくらなのか、加給年金に関するあれこれを分かりやすく解説します。
「加給年金」とは?
厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が、65歳になった時点で生計を維持している配偶者や子どもがいる場合、厚生年金に「加給年金」が加算されます。
加給年金は年金の扶養手当のようなものです。支給のための要件を詳しく見ていきましょう。
【要件1】 厚生年金保険の加入期間が20年以上
【要件2】 65歳時点で生計を維持している配偶者、子どもがいる
【要件2】の加給の対象者には収入や年齢に制限があります。
<収入>
前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5000円未満であること
年金受給者に生計を維持されていることが条件ですので、加給の対象者の収入が上記の金額を超えた場合は対象とはなりません。また、生計維持の原則として同居していることがあげられますが、別居していても、仕送りしている、健康保険の扶養親族であるなどに当てはまれば認められます。
<年齢>
配偶者:65歳未満
子ども:18歳到達年度の末日まで(現役の高校3年生でいる日まで)、または、1級・2級の障害の状態にある子の場合は20歳未満
配偶者や子どもが上記の年齢を超えると加給年金は支給停止となります。しかし、配偶者が65歳になって自分の老齢年金を受け取る時に、加給年金に代わって、配偶者の生年月日に応じた額の振替加算が支給されます。振替加算については後ほど説明します。
<その他>
配偶者の厚生年金保険の加入期間が20年以上ある場合、または、配偶者が障害年金を受けられる場合は、加給年金は支給停止となります。
【加給年金額】
加給年金の金額は、扶養対象者の数と厚生年金受給権者の生年月日によって異なります。【表1】<加給年金額>をご覧ください。
拡大する(/mwimgs/e/d/-/img_ede04a1ccbb69bb0ff37845893c1422f33591.jpg)
【表1】加給年金額 出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとに筆者作成
※老齢厚生年金を受けている人の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に3万3200円~16万5800円が特別加算されます。こちらについては、【表2】配偶者加給年金額の特別加算額をご覧ください。
拡大する(/mwimgs/e/0/-/img_e004e21d2af0a194ab35af3a7479ba3571281.jpg)
【表2】配偶者加給年金額の特別加算額 出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとに筆者作成
たとえば、厚生年金受給者である66歳の夫(昭和30年生まれ)が56歳の妻と15歳と17歳の子ども二人の生計を維持していた場合、本人の特別加算額16万5800円と配偶者の22万4700円、子ども二人の44万9400円(22万4700円×2)を合わせて、83万9900円が厚生年金額に加算されます。
加給年金と振替加算
加給年金は加給対象者である配偶者が65歳になって老齢基礎年金を受給できるようになると支給停止になります。しかし、一定の要件を満たしている場合、配偶者の老齢基礎年金に加給年金額の一部が加算されます。これを振替加算といいます。
これは昭和31年3月まで、会社員の妻は任意加入であったため、老齢基礎年金が満額受給できないことに対処したものです。大正15年4月2日生まれの人から、すべての人が強制加入となった昭和61年4月1日に20歳を迎えた昭和41年4月1日生まれの人までが振替加算の対象となります。
拡大する(/mwimgs/9/0/-/img_909b2ae90789b0c677cf708d5d44d563104654.jpg)
【図】加給年金と振替加算 (出典)日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとに筆者作成
<振替加算の額>
振替加算の額は、大正15年4月2日から昭和2年4月1日生まれの人までは、配偶者加給年金額と同額の22万4700円となり、それ以降の生まれの人は年齢が若くなるに従って金額が減っていき、昭和41年4月2日以後に生まれた人はゼロになります。
繰下げ受給をすると加給年金がなくなることも
年金額を増やす方法として「繰下げ受給」があります。年金の受給開始時期を66歳以降70歳までの間で繰下げると、1カ月の繰り下げで0.7%分増額され、最大で42%年金額が増額されます。
この増額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金に限られ、加給年金は対象とはなりません。また、加給年金は老齢厚生年金とセットで受給するものであるため、老齢厚生年金を繰下げてしまうとその期間は加給年金を受け取ることができません。
たとえば5歳差の夫婦の場合、夫が70歳まで繰下げてしまうと、受給開始の70歳の時点で妻は65歳になっているので加給年金を受けとれなくなってしまいます。
繰下げ受給によって増額した年金額は一生涯続くので、繰下げ受給を行いたいと考えている人は、老齢基礎年金のみ繰下げ受給をして、老齢厚生年金は65歳から受け取るという方法もあります。
このように繰下げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金で別々に行うことができることを知っておくと、繰下げ受給で年金額を増やしつつ、加給年金もしっかり受け取ることができます。
参考資料
日本年金機構「加給年金額と振替加算」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html)
日本年金機構「年金の繰下げ受給」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html)
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