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売れない時代に必須の「モノを売るためのストーリー」の作り方

LIMO / 2021年7月31日 20時15分

売れない時代に必須の「モノを売るためのストーリー」の作り方

売れない時代に必須の「モノを売るためのストーリー」の作り方

ビジネスパーソンに欠かせない「PR」の基礎知識

 モノが売れない今の時代、「PRの基礎知識」は、多くのビジネスパーソンにとって必須です。たとえば、わかりやすいイノベーションがあるような商品・サービスであれば、その商品の魅力を前面に押し出せば、生活者(消費者)にとってそれが「買う理由」になり得ます。しかし、実際のところ、わかりやすいイノベーションがある商品などは非常に稀。多くの市場は飽和状態だからです。

 そんな状況にあっても、ほかの競合商品との差別化の武器となり得るのが「PRストーリー」です。商品に関する情報をストーリーとして伝えることで、生活者の共感を生み出し、ほかとは違うと思ってもらうことができれば、それが「買う理由」になり得るのです。

 この記事では、PRの基本的な考え方とテクニックをまとめた拙著『サニーサイドアップの手とり足とりPR』をもとに、「そもそもPRってどういうものなの?」という話を踏まえつつ、「PRストーリー」の具体的な作り方をお伝えしたいと思います。

本題に入る前に、「PR」って何?

 PR(パブリックリレーションズ)は、英語をそのまま訳すと「公共との関係」ですが、一般的には「企業や団体が、社会や生活者と良好な関係を築いていく活動」と言えるでしょう。だからこそ、単に「商品やサービスの情報」をそのまま伝えるだけでは成り立ちません。それでは、一方的な情報提供となってしまうからです。

 そのため、PR活動では、商品やサービスの情報を、「受け手にとって価値あるもの」となるように工夫することが必要。そして、情報の価値を高めるために欠かせない要素が「社会性」です。こう言うと、ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、要は「その情報が、世の中や社会にとってどれだけ重要なのかを示すこと」です。

 そのためには、もともとの商品やサービスに、これはどんなふうに社会に役立つのかといった「社会との関連性」を付加した上で、情報をまとめる必要があります。商品やサービスと「社会との関連性」をはっきり示すことで、社会の一員であるステークホルダー(利害関係者)にとって価値ある情報となるのです。

あなたの商品に「社会性」をつけるには?

 一口に「社会性」と言っても、さまざまな種類がありますので、具体例をいくつか挙げてみましょう。

(1)トレンド
「今、世の中でXX(社会背景)が流行っている中、最先端のYY(商品)が発売されました」

(2)生活者ニーズ
「XX(社会背景)で困っている人が多い中、その悩みを手軽に解決してくれるYY(商品)が発売されました」

(3)世の中の気運
「今、XX(社会背景)な気運が高まっている中、それを後押しするYY(商品)が発売されました」

(4)社会的課題
「今、世界中で課題視されているXX(社会背景)を画期的な方法で解決するYY(サービス)が導入されました」

 みなさんも、こうした見出しのニュースや記事を見たことがありますよね?

 このXX(社会背景)とYY(商品・サービス)を関連づけるという発想こそが、「情報の中に社会性を見出すこと」です。日頃からメディアやSNSをチェックしたり、街に出て話題の施設やお店に足を運んだりすることで、世の中の声やニーズを常に把握しつつ、自社の商品やサービスとつなげることを意識してみましょう。

PRストーリーは「答え」よりも「問いかけ」を探すことを意識する

 では、商品やサービスに「社会との関連性」を持たせてストーリー化するためには、どうすればいいでしょうか? 具体的には次のような3つの段階を踏むことが効果的です。

ステップ1 商品やサービスを「答え」に設定する
ステップ2 商品やサービスが「答え」になるような社会的「問いかけ」を考える
ステップ3 「問いかけ」と「答え」をつないで文章化してみる

「問いかけ」と「答え」を一言で表現すると、次のようなイメージです。

・問いかけ……社会課題/生活者の悩み
・答え……社会課題や生活者の悩みを解決する商品やサービス

事例で見るPRストーリー

 わかりやすいように、ちょっと例を挙げてみましょう。

A〈問いかけ〉
 オフィスの冷房が寒いものの、周囲の人が暑がっているのでなかなか言い出せないし、温度を勝手に上げられないという「夏の冷え性」に悩む女性が70%を占めています。

B〈答え〉
 夏のオフィス冷え性に悩む人向けに、自分だけ温かい「夏専用メッシュ腹巻き」が発売になりました。

 ここで重要なのは、A(問いかけ)という情報があるから、B(答え)がより際立って見えるということ。「夏専用の腹巻きが発売された」という情報だけだと、その必然性が見えてこないため、ストーリーとしては弱くなってしまうのです。

 このように、Bが答えになるような「問いかけ」をいくつも探し出せるのが、PRストーリー創造力といえます。この意識づけを行うことで、商品の「社会性」を際立たせることができます。

PRストーリーの素材は「ヒト」「モノ」「コト」

 PRストーリーを作る上で、その材料となるものには、次の3つがあります。

(1)ヒト……経営者の考え/開発者の想いなどを言語化したもの

(2)モノ……商品やサービスの特徴や強み/売上の推移などを言語化したもの

(3)コト……開発背景などのエピソードや市場動向などを言語化したもの

 商品やサービスそのものである「モノ」だけではなく、そこに関連する「ヒト」や「コト」をストーリーとして世の中に発信することで、他商品/サービスとの差別化が可能となるほか、親近感が生まれ、ファン作りにもつながっていきます。

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情報発信における「3S」

 競合との差別化や、生活者に対して価値のある情報を発信する上で、ぜひ意識しておきたいものに、「3つのS」があります。

(1)Stance……発信者である企業などが、社会課題に対してどう向き合っていくのか/共存していくのか、その「姿勢」を伝えること

(2)Story……社会課題や時代の流れ、トレンドを意識しながら、「これまでどのような道を歩んできたのか」「その商品の開発や発売にどのような背景があるのか」などを見せること

(3)Speed……世の中の出来事や社会課題が発生・顕在化したタイミングを逃さず、企業や商品・サービスを見つめ直し、そこに関連させるストーリーを見出して、情報発信を早いタイミングで行うこと。

 この3つを意識するだけで、競合と差別化した「強い情報」を生活者に届けることができるのです。

 

■ 吉田 誠(よしだ・まこと)
 株式会社サニーサイドアップ PRプランナー、アカウントプランニング局 プランニング部部長。2008年入社。BtoBからBtoCまで幅広い企業の広報・PR企画を立案。社会的課題や生活者インサイトを捉えたストーリー性のあるPR戦略の策定を得意とし、実績も多数。企業向けの広報セミナーなども数多く行っている。

 

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吉田氏による共著書:
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