「経営者の視点で考えろ」と言う社長がいる会社はヤバイ!? その理由
LIMO / 2021年8月1日 19時15分
「経営者の視点で考えろ」と言う社長がいる会社はヤバイ!? その理由
若い知人の最近のボヤキ話。
自分も以前、在籍していた中小企業の後輩ですが、最近、社長が「経営者の視点で考えろ」とよく言うそうです。「ムカつきますねぇ」「それってアナタの仕事でしょ!? 」とキレていました。
あなたの周りでも「経営者の視点で考えろ」問題は起きていませんか。今回は、この問題を考えてみます。
やること増やすなら給料上げてよ
ネットで検索すると、「経営者の視点で考えろ」という経営者は、やはり結構いるようです。こんな声があがっていました。
「“経営者の視点で考えろ"も結構だが、それなら相応の判断材料もちゃんと公開、提供してよ、と思う」
「給料が違うのに高い目標、役割を持たせるのもなぁ。であれば、給料を上げてよ、と言いたい」
「社員はそれぞれ、それぞれの目的があって仕事しているので、経営者目線で考えろと自分のやり方を押し付けること自体、マネジメントとしては失格だよね」
「業績上がらないのは従業員のせいにして“君たちは給料に見合った仕事をしていません"と言い放ちつつ、ご自分の経営責任は放棄か(笑)」
結構、非難ごうごうですね。
「海外なら、部下なんて指示待ち族で当たり前」という意見もありました。続けて、「そういう部下を複数人コントロールして、1人では稼ぎだせない利益を生み出すのが上司の役目」。そして「そのためにはいかに正確なインプットを与えるか。日本の生産性が低い原因はここ」。
おっしゃる通りかもしれませんね。
経営者がリスペクトされない時代!?
実は“経営者の視点で考えろ"は、以前からも言われていた気もします。
筆者は野球ファンですが、いまでも解説では“A選手は監督の考えを理解していますね"というようなフレーズが誉め言葉として使われています。こういった考え方は、日本のビジネスの世界でも当たり前のモノとして存在していました。
ただ昔は、これほど非難ごうごうではなかった気がします。身も蓋も無い感想ですが、やはりいろいろなモノゴトが上手くいかない時代になって来たかもしれませんね。
そんな状況で、ビジョンもミッションも示さないで、“経営者の視点で考えろ"と言われてもなぁ、というのがホンネでしょうか。
ビジョンは最悪、言葉で示されなくても、たとえば社長のいままでの実績やヒストリーがビジョンになるということも、以前はありました。日本人は、そういうことを感じ取る力は強いと思いますし。
ただこれも現在では、“社長の時代といまは違うんだよなぁ"という一言で終わってしまいますから。
あるウェブ記事で「ダメ社長の13の特徴」というものがありました。ワースト1位は「公私混同をする」。これは当然ですよね。
“経営者の視点で考えろ"と関連があると思われるのは「ビジョンやミッションを語れない(ワースト2位)」「具体的な指示ができない(ワースト4位)」などで、やはり上位にきていました。
「経営者の視点で考えろ」の歴史
少し気になって、「経営者の視点で考えろ」の歴史を検索してみました。多分、昭和の伝説的な経営者の言葉などが出てくるような気がしたのですが、予想は的中でした。
パナソニック創業者の松下幸之助氏が、かつて「社員は社員稼業の社長」と言っているそうです。
氏の著書から引用します。「自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか」(『社員稼業』まえがきより/PHP研究所)。
そのように、上司や同僚も「お客様」「お得意先」と考えて働く方がアイデアも出てくるのではないか。それが自分のためにも会社のためにもなるのではないかということです。
ただ、この話と冒頭から書いている「経営者の視点で考えろ」は、微妙にニュアンスが違いますよね。
なにか最近の「経営者の視点で考えろ」は、「うちの経営者のために働け」=「滅私奉公」という印象を受けてしまいます。やはり「上から目線」を感じてしまいますよね。
あと別の角度から言えば、“古き良き時代だなぁ"という印象もあります。社員の立場に徹して働くことが、自分にも会社にもプラスになるというのは、確固とした大きな方向性がある場合ですよね。
現在のように全てが暗中模索の時代には“ムリでしょ"としか思えません。
経営者はアップデートしているか
社員に求められるものも、経営者に求められるものも変わってきています。
元日経コンピュータ編集長の木村岳史氏が以前コラムで「経営者は無能か職務放棄か、『技術で勝ってビジネスで負ける』日本企業のDXの末路」と題して、現在の経営者を一刀両断していました。
技術開発では先行しながら、製品化やサービス化で後れを取って外国企業に敗れる。あるいは製品化でも先行したものの、後発の外国企業にあっさりと逆転される。近年、頻発するこのような“技術で勝ってビジネスで負ける"現象は、経営者としての無能ぶり、あるいは職務放棄ぶりを表していると、同コラムでは断じています。
さらに同コラムから。
「いくら画期的な新製品や新サービスであっても、担当者に“初年度は赤字だが、翌年度に黒字化を目指す"なんて事業計画書を書かせているようでは話にならない。経営者が新技術や、それを使った製品/サービスの可能性を見抜き、ビジネスモデルを磨かせて、経営リスクを取ってそれなりに投資しなければ、そんな経営判断ができる経営者がいる外国企業に勝てるわけがないのだ」。
まあ、これは世界を相手に戦う大企業の話ですが、企業の規模は違っても、多くの企業でいえることかもしれませんね。ビジョンやポリシーがあって決断のできる経営者にアップデートしないと、現在では通用しないということです。
冒頭の知人の話に戻ります。「まあ、そんなわけで、そろそろ転職しようかな」と思っているそうです。もしかすると、そのように思っている人も、世の中には結構たくさんいるのかもしれませんね。
参考資料
経営者は無能か職務放棄か、「技術で勝ってビジネスで負ける」日本企業のDXの末路(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00148/050600172/)(2021年5月10日付、日経クロステック)
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