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老後に取り崩す蓄えがない!? 金融資産を持たない世帯はどのくらいか

LIMO / 2021年8月5日 11時45分

老後に取り崩す蓄えがない!? 金融資産を持たない世帯はどのくらいか

老後に取り崩す蓄えがない!? 金融資産を持たない世帯はどのくらいか

「老後は年金だけでは足りない」「老後資金を準備しておかないといけない」と、大半の人が思っていることでしょう。ところが、30代から50代にかけては住宅ローンの返済や子供の教育費が優先になり、なかなか思うように貯蓄を増やせないのも現実です。

金融広報中央委員会では毎年、全国の2人以上世帯と単身世帯を対象に「家計の金融行動に関する世論調査」を実施。保有する金融資産額や、人生100年時代の備えとして老後資金をどう考えているのかなどを聞いています。

以下、2020年調査の結果(2021年1月発表)を見ていきましょう。

金融資産の保有額、平均値と中央値は?

2020年の調査結果では、2人以上世帯における金融資産保有額の平均値は1436万円、中央値は650万円(2052世帯が回答)。単身世帯では、平均値653万円、中央値50万円でした(2500世帯が回答)。

平均値は並外れて多い金融資産額の影響を受けることがあるため、データ全体を小さい順(あるいは大きい順)に並べてちょうど真ん中にくる値である中央値の方が、より実勢を反映しているのではないかと思われます(以下で述べる金融資産保有額の分布を参照)。

なお、本調査における「金融資産」は、家計が保有する金融資産全般(有価証券・保険を含む)のことです。また、預貯金については、定期性預金・普通預金等の区分に関係なく「運用」目的で蓄えている部分のみを算入し、日常的な出し入れや引き落しに備えているお金は含まれていません。

そのため、「金融資産非保有世帯」とは、①預貯金を保有しているが「運用」目的とは考えていない世帯、および、②預貯金を全く保有していない世帯の合計になります。

金融資産を保有していない世帯はどのくらい?

金融資産保有額の分布を見てみると、2人以上世帯では金融資産700万円未満が約半数(49.8%)で、金融資産非保有世帯は16.1%。単身世帯では金融資産100万円未満がなんと過半数(53.4%)で、うち36.2%が金融資産非保有となっています(図表1参照)。

なお、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分も含め「金融資産を全く保有していない」と回答した世帯は、2人以上世帯で1.5%、単身世帯で5.1%でした。

このように老後の備えどころではない世帯がある一方で、金融資産2000万円以上の世帯を見ると、2人以上世帯で2割超(22.1%)、単身世帯で1割近く(8.7%)あることが分かります。

図表1:金融資産保有額の分布(単位:%)

(/mwimgs/b/c/-/img_bc053a6654c1daa171906cc3005af042137542.jpg)

拡大する(/mwimgs/b/c/-/img_bc053a6654c1daa171906cc3005af042137542.jpg)

出所:家計の金融行動に関する世論調査(2020年)のポイント(金融広報中央委員会)

前年調査と比べると、2人以上世帯の金融資産保有額の平均値は1139万円→1436万円(2019年→2020年の順、以下同)。中央値が419万円→650万円。単身世帯の金融資産保有額は平均値645万円→653万円、中央値45万円→50万円となっています。

2020年には、1人当たり10万円の定額給付金の支給のほか世界的な株高がありました。他方ではコロナ禍の影響による収入減や雇用状況の悪化で、資産の取り崩しを余儀なくされた人もいるでしょう。

同調査の「金融資産残高の増減理由」という項目では、2人以上世帯で金融資産残高が「増加した」のは23.4%。その理由で最も多いのは「定例的な収入が増加したから」の39.9%。単身世帯で金融資産残高が「増加した」は26.3%で、最も多い増加理由は、同じく「定例的な収入が増加したから」の35.4%でした。

それに対して、2人以上世帯で金融資産残高が「減少した」のは26.5%。その理由で最も多いのは「定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」の40.6%。単身世帯で金融資産残高が「減少した」は26.5%で、最も多い増加理由は、やはり「定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」の42.8%でした。

このように、前年比の金融資産保有額は増加傾向ではあるものの、その裏では二極化が進んでいることがうかがえます。

老後の資金源として「就労収入」が増加

同調査では、人生100年時代への備えとして「老後の生活資金源(の想定)」についても聞いており、時系列での比較も示されています。

2007年と2020年の比較では、「公的年金」が老後の生活資金減で最も多いのは変わりませんが、「就業による収入」の割合が2人以上世帯では38.3%から49.8%へ10ポイント以上増加。また、「企業年金や個人年金」といった公的年金以外の金融商品の割合も増えてきています(図表2参照)。

単身世帯でも「就業による収入」が49.2%から52.6%へ増加してますが、2007年の調査にはなかった「国や市町村からの公的援助」という回答が1割超(10.2%)あるのが目を引きます。

一方、「金融資産の取り崩し」については、2人以上世帯が42.6%から29.5%へ、単身世帯は50.0%から24.7%へと大幅に減少している結果になりました。

かつては公的年金と金融資産の取り崩しで老後を過ごしていたものが、公的年金と働いて得た収入を生活資金に充てる方向に変わってきているようです。

図表2:老後における生活資金源(3つまでの複数回答)(単位:%)

(/mwimgs/e/c/-/img_ec442b0ca71959cf74f56814c99e9e0a112653.jpg)

拡大する(/mwimgs/e/c/-/img_ec442b0ca71959cf74f56814c99e9e0a112653.jpg)

出所:家計の金融行動に関する世論調査(2020年)のポイント(金融広報中央委員会)

年金ではゆとりある生活は送れないと感じる

年金に対する考え方も、2020年調査で「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答しているのは、2人以上世帯で5.4%、単身世帯で6.0%しかありません。

一方、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」は2人以上世帯で4割超(44.1%)、単身世帯では5割を超えています(52.6%)。また「ゆとりはないが日常生活程度はまかなえる」は2人以上世帯で約5割(49.3%)、単身世帯では約4割(41.4%)でした。

先が長い老後を考えると、取り崩す金融資産にも限界があります。体が動くうちは働いて収入を得て、できる限り金融資産の取り崩しを遅らせることは老後資金を貯めること同様にとても重要だといえるでしょう。

金融商品には収益性を求めるように

金融商品を選ぶ際に重視する基準にも変化が表れています。2人以上世帯と単身世帯それぞれで「安全性」と「収益性」を最も重視するという比率は以下のようになりました。

【2人以上世帯】

安全性を最も重視:2019年37.2%→2020年34.6%に減少

収益性を最も重視:2019年16.0%→2020年19.2%に増加

【単身世帯】

安全性を最も重視:2019年22.2%→2020年21.2%に減少

収益性を最も重視:2019年24.5%→2020年27.0%に増加

長らく続く低金利で、金融商品の選び方も安全重視から収益性重視へ変化しているようです。

おわりに

銀行に預けておけば気付かないうちにお金が増えて、老後は年金で暮らすことが当たり前だった時代と現在は全く異なります。右肩上がりに給料が増えず、金利はほぼゼロの時代には、老後資金どころか現役時代に必要な貯蓄をすることも難しくなっているのではないでしょうか。

人生100年時代のセカンドライフは、資産運用や長く働くための健康維持なども含めて考えることが大切だといえるでしょう。

参考資料

家計の金融行動に関する世論調査(2020年)のポイント(https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/pdf/point2020.pdf)(金融広報中央委員会)

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