モノを売るときに「この商品、いいですよ」の効果が薄い根本原因
LIMO / 2021年8月21日 19時15分
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モノを売るときに「この商品、いいですよ」の効果が薄い根本原因
ビジネスパーソンに欠かせない「PR」の基礎知識
筆者は企業向けの広報セミナーなども数多く行っていたり、企業の広報担当の方たちとSNSなどを通じて交流したりする機会も多いのですが、「ひとり広報なんです」とか「他の業務と兼任してやっています」といったように、少人数で広報を担当されているベンチャー企業や中小企業の方はかなり多いという印象です。「ノウハウがほとんどない中で、広報業務を担当しなければならない」という声も多く耳にしました。
また、特に今の時代は、広報・PRの知識は、こうした専門職だけが持っていればいいものではありません。広くビジネスに携わる方にとっても、自分のつくった商品・サービスの良さを広く知ってもらうことは必須のスキルといえます。
ただ、私が所属しているようなPR会社でもそうですが、広報・PRの分野の知識は、どうしても属人的な教え方になりがちです。そこで、われわれの社内マニュアルを書籍化することで、世の中の広報担当の方々や一般のビジネスパーソンのお役に立ちたいと思い、広報・PRの基礎を学べる一冊として『サニーサイドアップの手とり足とりPR』を上梓しました。広報活動の基本の基本というニュアンスも「手とり足とり」という言葉に込めています。この記事では、本書をつくる過程で気づいた、企業の広報・PRに携わる人たちの現状や、企画の考え方などについて、書籍の内容や現場での自分の体験も交えてお話しします。
「この商品、とてもいいですよ」ではなく「あなたに合ってますよ」
書籍の基になった社内マニュアルづくりは、私が中心となって進めましたが、社内の各分野のプロにもかなり力を借りて作成しました。PRはノウハウや経験を言語化しづらい部分も多いのですが、言語化できる部分や最低限の決まり事は全員で共有したほうが、業務や育成の効率化にもつながるだろうと思ったのが、マニュアルをつくろうと思ったきっかけでした。
PRという考え方がよりスピード感を持って広がっていったのは、10年前くらいではないでしょうか。当時は「手法としてのPR」という認識が強く、「広告と違って、比較的費用を抑えつつ認知拡大を狙う手法」という捉えられ方をしていました。
それが今は、世の中や顧客との関係性をつくり、商品やサービスのファンになってもらう。それによって、購入につなげていくところまで狙っていくのがPRの役割として置かれることが当たり前になってきました。「ファンになってもらう」までいかなくても「何か気になる」「興味を持ってもらう」でも、関係性づくりの入り口としては成立していると思います。
PRの効果測定は、売上だったり、SNSの反応だったりしますが、いろいろな側面で効果を上げるために、あらゆる手法を使って生活者の方と接触していくようにしています。でも、ここで大事にしているのが、単に「この商品、とてもいいですよ」ではなくて、「この商品、今のあなたにとてもいいですよ」という風にコミュニケーションしていくことです。
「あなたに合ってますよ」っていう伝え方をしなければ、自分事にしてもらえない。質の高い情報をつくるのがPRに携わる人間にとって重要なことなので、「このXXはあなたに最適だよ」という物語をつくるのが役割です。大事なのは、なんでもかんでも情報を出せばいいわけじゃなくて、生活者にとって本当に価値のある情報を発信しなければならないということ。事実の伝え方や物語のつくり方で商品に付加価値を与えて、発信することが大事です。
企業のPRは「会社の人格」を見せるのが重要
商品・サービスのPRと企業のPRの違いについては、言い切るのは難しいですが、商品PRは、割と即時的に話題をつくる場合など短期的なものが多くて、企業PRは長期的視点での長い付き合いが必要です。本の中でも書いていますが、企業PRの場合、その企業のスタンス、つまり、「その企業がそもそも世の中の課題に対してどういう姿勢であるのか」を伝えるのが重要です。企業をつくっているもの、たとえばミッション、バリュー、働く人たちなど、企業を形成しているものに共感してもらうのが企業PRのミッションです。
ですので、中長期的視野に立ってある程度ブレない姿勢を表現していくことが多いのが企業PRで、その時々の消費者にどれだけ適切か、ということを伝えることが多いのが商品PRということになります。いずれにせよ、そこに「ストーリー」が加わることで付加価値が生まれることは両方に共通していることといえます。
われわれの仕事としても、企業PRは忍耐強く企業の人たちと伴走していく必要があります。本来、企業の中には、PRのネタはたくさんあるはずです。たとえば、面白い個性豊かなメンバーとかですね。会社の中のいろんな側面を社会に見せていくのが大事です。
「法人」は企業を表しますが、「人」という字があるように、会社は「人格」を見せていくのが大事なんです。企業のイメージってありますよね。人に持つイメージと一緒で、「その企業は、人でいうとどんなキャラクターやイメージなのか」を考えるといいと思います。
PRは、可能性に溢れていると思っています。「関係性づくり」のためだったら、手法は何を使ってもいいんです。とにかく手法はボーダレスだということを知ってほしい。基本的に、「やってはいけないこと」ってないんです。楽しそうだったら、いわゆる一般的な手法じゃなくても構わない。いい意味で「どんな手でもいいから良い関係性をつくっていく」ことを目的にしています。
仕事の上では、「認知拡大」とか「メディアに掲載してほしい」という依頼がやはり多いですが、「良い関係性づくり」を考えてクライアントの方に向き合う姿勢が大事なので、生活者一人ひとりに合った物語をつくることを個人的には心がけています。
筆者の吉田誠氏による共著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
企画はこうやって生み出す!
「ひとり広報」の方からお聞きするよくある悩みは、「何から手をつけるべきかわからない」や「うちにはネタがない」などです。ただ、ちゃんと取材させてもらうと、社員の方がユニークだったり、制度が面白かったりします。
ネタは本当にたくさん転がっています。たとえば商品開発の裏側を見せてもらうと、「これ、つくるのに10年もかかったんですか? それ自体でニュースになりますよ」といったことが数多くあります。視点を変えて探せば、さまざまなものがあるんです。
企画のアイデアは、ホワイトボードを使ってみんなでブレインストーミングすると、いちばん出てきます。「これを発展させよう」とか「これをくっつけよう」とか。とにかくホワイトボードを汚くすればいいんです。
企画はとにかく楽しいものです。企画というものは「ゼロから1」ではなくて、「組み合わせ」。手掛けたものが話題になったときはやりがいを感じます。本当にやって良かったと思うのは、クライアントの方から「感動しました」と言ってもらった時です。企業の広報の場合は、社内の開発部門や製造部門などの人からそう言ってもらうことがこれにあたるでしょう。
「感動しました」と言ってもらえたのは、クライアントの想いを感じ取って、それを昇華させてより良い情報発信ができたからだと考えています。その意味でも「共感」は非常に大事だと思います。世の中がすごいスピードで変わっている中で、常に最前線に立ち、最適な方法を見極め、最短距離であらゆる課題を解決したい。そんな熱い気持ちで、同じような想いを持つ人たちの役に立ちたい。広報・PRに携わる人間としてそう思っています。
■ 吉田 誠(よしだ・まこと)
株式会社サニーサイドアップ PRプランナー、
アカウントプランニング局 プランニング部部長。2008年入社。BtoBからBtoCまで幅広い企業の広報・PR企画を立案。社会的課題や生活者インサイトを捉えたストーリー性のあるPR戦略の策定を得意とし、実績も多数。企業向けの広報セミナーなども数多く行っている。
(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295405337/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295405337&linkCode=as2&tag=cmpubliscojp-22&linkId=aabc82f80c89a33be4aaea2a3d63d438)
吉田氏による共著書:
『サニーサイドアップの手とり足とりPR(https://amzn.to/3zEHyCb)』
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