夏休みの宿題の鬼門、読書感想文はなぜ子も親も悩ませるのか
LIMO / 2021年8月23日 18時35分
夏休みの宿題の鬼門、読書感想文はなぜ子も親も悩ませるのか
夏休みの宿題の定番でありながら、多くの児童生徒、そして親をも悩ませる読書感想文。自分が子どもの頃に、あらすじばかり書いて字数を稼いだという思い出を持つ方もいることでしょう。
約1カ月に及ぶ夏休みの間、本を読むことが億劫で放置しておくと、気がついたら登校まで残すところあとわずか。あわてて書こうとしても思うように進まず、何を書けばいいのか分からないと頭を抱えてしまうことになってしまいます。
そんな子どもにアドバイスをしてあげたいけれど、親自身も苦手意識があって改善策が思い浮かばないこともあるのではないでしょうか。書店には読書感想文対策として穴埋め形式の本も並ぶほどです。今回は、夏休みの宿題の鬼門とも言える読書感想文をめぐる問題点や対処法を考えていきます。
読書感想文は親にとってもトラウマ!?
夏休みの風物詩のような「青少年読書感想文全国コンクール」は、終戦から10年経った1955年に始まったもので、今年で第67回になります。親も、場合によっては祖父母も、夏休みに読書感想文を書いた経験があるのは、こうした長い歴史が背景にあります。
経験者が多くいながら、いまだに読書感想文が鬼門扱いされているのには理由があります。全ての学校とは言いませんが、国語の授業で作文に時間をかけることはほとんどありません。また、小学校の先生はオールマイティではありますが、作文指導がしっかりできる先生は限られているのが現実です。
実際、筆者の子どもたちを見ていても、毎週末作文を書いて先生がコメントを書くといった宿題が出されたのは、たまたま作文に力を入れている先生が担任になった時だけでした。
小学校では2020年度からスタートした新学習指導要領により、書く機会や起承転結を学ぶ機会は増えていますが、読書感想文の書き方について特別に学ぶことはありません。つまり、夏休みの宿題として出されたとしても、本人任せであり家庭任せです。
しかし、子どもにとっては頼みの綱の親も、かつて感想文に悩まされていたのであれば適切なアドバイス送れないこともあるでしょう。学校における作文指導の現状や親・祖父母世代のトラウマが複雑に絡み、読書感想文は楽ではない課題というイメージが根強くあるようです。
書きやすい本を選ぶことも必要
そもそも、読書習慣が身につくかどうかは家庭によるところが大きいものです。また、普通、子どもにとっては読んでいて楽しいことが優先なので、深く考え自分を見つめるような読書の仕方は一般的ではありません。
小学校に入ると国語の教科書で物語文や説明文を読み、学んでいきますが、ストーリーと自分を重ねてみたり、自分は内容をどう感じたか考え、表現することについて丁寧な指導があることは稀です。読書感想文で書くことがなく、あらすじで字数稼ぎをするのも、こうしたことが一つの要因だと考えられえます。
また、読書感想文を書くのには適切な本を選ぶことも重要です。読書感想文では課題読書と自由読書の2種類があり、課題読書は小学校の部(低学年、中学年、高学年)と中学校の部、そして高等学校の部ごとに決められた課題図書を読んで感想文を書きます。自由読書はその名の通り、児童生徒が自ら本を選びます。
この自由読書で単に面白さだけで本を選んでしまうと、いざ書こうと思っても自分と重ねて感じることがほとんどなく、全く進まないということもあります。
筆者の子どもの1人も、小学校低学年の頃に本選びに失敗してにっちもさっちもいかない状態に。最後はなんとか自分のエピソードと無理やり結び付けて書いていましたが、子ども本人も「もうあんな経験は二度としたくない」と本選びを軽く考えたことを悔やんでいました。
読書感想文から学べることは多い
なにかと苦労がつきまとう読書感想文ですが、夏休みという時間のある環境でじっくり本と向き合う絶好の機会でもあります。読書によって子どもながらの感動や共感、新たな発見や気づきが得られるだけでなく、作文の作法や語彙力向上にもつながりますし、書き終えたときの達成感は大きいでしょう。
今では、夏になると学年に合った本の紹介もされている読書感想文対策本が書店に並ぶようになりました。書き方のコツだけではなく、有名な本を使った例文も載っています。やみくもに頭を悩ませて作文に苦手意識を持ってしまうのも困りもの。こうしたお助けアイテムを賢く利用することも、読書感想文という課題を乗り越える一つの手と言えるでしょう。
ただし、長い目でみれば徐々に子ども自身の考えを文字にできるようになっていくのが望ましいことです。読書感想文からは、「本を読む」「考えを文章化する」「正しい言葉使いを考える」といった様々なことが学べます。こうしたメリットを念頭に置きつつ、親子ともども身構えずに向き合っていきたいですね。
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