中学英語の難しさがアップ!? 学力格差はどこから生まれるか
LIMO / 2021年8月26日 19時45分
中学英語の難しさがアップ!? 学力格差はどこから生まれるか
昨年、2020年度から小学5年生と6年生で英語が教科化され、英語教育を取り巻く環境が大きく変化しました。その小学校英語ばかり大きく取り上げられていますが、今年度からは中学校でも新しい学習指導要領がスタートしています。
特に注目すべきはやはり英語です。新中学1年生は「小学6年生の時に英語を教科として学んできた」ということで、以前のように基本的な英単語から勉強するというわけではありません。
身近な英単語は既に習っているという前提
現中学1年生の英語では、曜日や身近な食べ物、スポーツなどの英単語は小学校で学んだことになっています。では、中1の英語で最初にどのような英文を習うのかというと、いきなりbe動詞と一般動詞の肯定文を同時に学びます。
教科書によって多少の違いはありますが、中学英語の導入部分でもあるユニット1は自己紹介やあいさつという従来と変わらない内容です。しかし、最初の単元で「I am ~」「I play ~」のようにbe動詞と一般動詞を使った表現が同時に登場します。
以前のようにひとつひとつ丁寧に学ぶ進み方ではなくなっている印象で、リスニングやスピーキング重視ということもあり、会話表現が多いのも特徴的な点です。また、小学校で習った英単語は中学1年生の教科書にも載っていますが、あくまでも「復習」という扱いになります。
ちなみに、2020年度までの学習指導要領では中学3年間で学ぶ英単語数は1200語でしたが、今年度からは1600語~1800語に増えます。
一方、小学5年と6年の2年間で学ぶ英単語数は600から700語です。これは2020年度まで中学3年間で学んでいた英単語の半数かそれ以上に相当することを意味しています。
このように、英単語の数ひとつ取っても親世代が知っている中学英語とはかなり変化していることが分かります。
高校で習っていた文法が中学で登場
中学英語の難化は英単語数だけに限りません。今回の新学習指導要領では文法でも大きな変化があります。
かつては中学2年生で習っていた過去進行形が1年生へと早まり、従来は高校で学んでいた仮定法や原型不定詞、現在完了進行形も中学英語として新たに加わりました。こうして覚えるべき文法が増えると各項目をじっくり教えることが難しくなり、それが新たな学力格差にもつながりかねません。
これまでも同様ではありますが、2、3回の説明で理解する子もいれば、何度も説明を聞いて問題を解いて理解するようになる子もいます。学習内容が厚みを増すことはメリット面ばかりではなく、「すぐに分かる生徒」と「どの文法も中途半端な理解にとどまる生徒」を生み出す可能性も秘めています。
学校外でも、公文や学研などお馴染みの学習教室に加えて、オンライン教室やタブレット端末での通信教材が登場し、小さいときから英語を学ぶ敷居はかなり低くなっています。そのため、家庭の方針で日頃から英語に親しみ、ある程度の土台ができている子と、そうではない子の差がつきやすいという懸念もあります。
小学校と中学校の英語の違いを理解する
小学5年生、6年生では単語の読み書きの実施は行わないとされていますが、他の教科と同様にカラーテスト版の英語のテストは行われています。
筆者の子どもたちが学校で受けたテストを見ると、リスニングが多く、授業で習った表現が出題されていますが、たとえば「red」など授業で学んだ英単語の書き取りもありました。
ただし、小学校の英語では小テストが行われることもなく、児童がどれだけ英単語を身につけているかのチェックは行われません。アクティブラーニングの要素が強い授業で英語を学び、そして使っていきます。
一方、「勉強」という側面がより強くなる中学英語では、英文法のルールをしっかり理解することが大切です。正しく理解していなければ、整序問題(正しい順に並び替える問題)を解いたり、英作文をこなすことができません。
このように、英語に親しむというスタンスの小学校、本格的な英文法を学ぶ中学校と、英語学習の内容がガラリと様変わりすることを親子共々理解しておくことが大切でしょう。
日頃から英語に親しむ環境を
日本の公教育での英語は、小中高での一貫改革が2020年度から始まりました。せっかくの改革なのですから、その中で英語嫌いになる児童生徒が出ないような取り組みも同時に構築していくことが望まれます。
今は幼児期や小学校低学年から英語に親しんでいる子も珍しくなく、かつてのように「ほぼ全員が中学1年生から英語を勉強し始める」という時代ではないので、なおさら、つまづいた生徒へのサポート体制や家庭でのフォローも必要になるでしょう。
英単語や習う文法が増えたと聞くと、親としては慌ててしまうかもしれません。中学校の英語が難化したことで、小学生時代から塾や通信教材を使った先取り学習が熱を帯びることも予想されます。
経済的に余裕がある家庭の方が有利になるかもしれませんが、小学校から中学校へ上がった際に英語教育のギャップにつまづくことがないよう、日頃からインターネット上にある無料教材などを上手に活用し、アルファベットや英語の文章に触れられる環境を整えたいものです。
参考資料
中学校学習指導要領(平成29年告示)解説「外国語編」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_010.pdf)(文部科学省)
新学習指導要領について(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/044/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/07/09/1405957_003.pdf)(文部科学省)
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