新国立競技場は取り壊しも選択肢? 失敗を繰り返さないよう反省すべき点は何か
LIMO / 2021年8月29日 18時30分
新国立競技場は取り壊しも選択肢? 失敗を繰り返さないよう反省すべき点は何か
新国立競技場の使い道が決まらないなら、維持費節約のために取り壊すという選択肢もあり得る、と筆者(塚崎公義)は考えています。
新国立競技場の使い道が決まらないかも
初めに明言しておきますが、筆者は新国立競技場の使い道等々について、全く詳しくありません。もしかしたら素晴らしい使い道があるのかもしれません。しかし、一部報道によれば、引き取り手が決まらずに維持費だけがかかり続ける可能性もあるとのことです。
そこで本稿は、仮に使い道が見つからず、維持費だけがかかり続けるとしたならば、という仮定での話をするものです。
当然出てくるであろう議論は、「何千億円もかけて作ったのに、無観客で数週間使っただけで取り壊すのはもったいない。残しておけば将来何かの用途に使えるかもしれないから、残しておこう」というものでしょう。
それこそ正に、サンクコストという考え方が標的にしている「間違えた発想」なのです(笑)。サンクコストというのは、払ってしまった金は戻らないので、払ってしまった金のことは忘れて、未来志向で最適な選択肢を選ぼうということです。
以下はサンクコストの一般論を記します。余談ですが、この言葉はサンキューのサンクではなく、沈んでしまったという意味の英単語が語源だそうです。
買った本がつまらなかったら読まずに散歩しよう
買った本を読み始めたら、つまらなかったとします。買った代金がもったいないからということで、最後まで読む人も多いでしょうが、多くの場合、結果は買った代金と読んだ時間の両方を損することになるわけですね。
読む時の心理は「もしかしたら、途中から面白くなるかもしれない」という淡い期待を込めて、ということなのでしょう。しかし、そうした可能性が決して大きくないことは本人が一番わかっているはずなのですが(笑)。
買った株が値下がりした場合も同様ですね。今売ったら損が確定してしまうので、売らずに持っていて株価が戻るのを待つというわけですね。この場合は戻る可能性も小さくないのかもしれませんが、それでも「他に値上がりしそうな銘柄があるのなら、この株を売ってそちらを買うべき」ですね。
つまり、払ってしまった金はどうせ戻って来ないわけですから、払ってしまった金のことはサンクコストだいうことで忘れて、今から自分が幸せになるためにはどうすべきかという未来志向の選択をすべきだ、というわけです。
今から自分が幸せになるためには、この本を読むべきか散歩に行くべきか、今から自分が金持ちになるためには、この株を持ち続けるべきか別の株に乗り換えるべきか、どちらが良い選択肢なのかに神経を集中しようということですね。
自分に見栄をはる必要はない
人がサンクコストにこだわる理由は、「損をしてしまうのは嫌だから」だけではなく、「こんな決定をした自分が愚かだった」と思いたくないから、ということもあるようです。
「こんな本を買った自分が愚かだった」と思いたくないから、本を最後まで読んで、最後が面白かったと思える可能性に賭けるというわけですね。
しかし、他人に対して見栄をはるならともかく、自分に対して見栄をはる目的で損な選択をするというのはいただけませんね(笑)。
ただし、実力者の決定を覆すのはリスクあり
自分が買った本や株であれば、自分が損をするだけですし、自分が愚かだったと認めれば良いだけです。しかし、組織の決定となると、もう一つ考えるべきことがあります。
プロジェクトを推進したのが実力者であった場合、プロジェクトを止めようと言い出すのは勇気が要るということです。これについては筆者はノーコメントです。気をつけましょう、と言うだけですね(笑)。
本当に忘れるのではなく、反省は必要
買った本を読むのか、買った株を持ち続けるのかといった選択をする際には、サンクコストの考え方が重要ですから、本や株の購入代金のことを忘れて未来志向で意思決定をすべきです。
しかし、次に同じ失敗をしないためには反省が必要です。そのためには、本を買った代金が何円で、なぜ本を買うメリットが代金を上回ると判断したのか等々をしっかり確認する必要があります。株に関しても同様です。
新国立競技場に関しては、冒頭に記したように筆者は詳しい事情を知りませんが、仮に五輪終了後に使い道がないということであれば、取り壊すか否かの意思決定はサンクコストの考え方を重視するものの、次に同じ失敗をしないためにはしっかりと反省しておくべきでしょうね。
建設費用がベネフィットに見合うと判断した理由は何であったのか、五輪後の使い道についてどう考えていたのか等々について議論しておくことが次の失敗を防いでくれるでしょう。そうであれば、「単なる損失ではなく、授業料だった」と言えるでしょう。
まあ、東京で再び五輪が開催される機会があるのかどうかはわかりませんが(笑)。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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