副業時代到来で果たしてガッツリ稼げるのか? 普通のサラリーマンには”悲しい現実”も
LIMO / 2021年8月30日 8時15分
副業時代到来で果たしてガッツリ稼げるのか? 普通のサラリーマンには”悲しい現実”も
最近、“副業解禁"というワードをよく聞きますよね。企業も副業禁止の職務規定を見直し始めているという噂もありますし。
要は「もう大幅な給料アップはムリだから、あとは自分でなんとかしろ、ってことだろ」というご意見も多いかとは思いますが、今回は副業に関する最新の調査結果を紹介しながら、副業について考えてみます。
「副業元年」は2018年
副業解禁・推進は日本政府の労働政策のなかで、働き方改革の一環として位置づけられています。
働き方改革は過重労働を抑制し、柔軟な働き方を実現し、生産性の向上に貢献することを目指しています。さらに俯瞰して言えば、働き方改革も成長戦略のなかの重要なひとつの戦略です。
政府では、2018年1月に「モデル就業規則」を改訂し、働き方改革の一環として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の規定を削除しました。
さらに、副業・兼業に関する規定を新設したことで、この2018年が「副業元年」と呼ばれるようになりました。しかし、政府が副業を積極的に推奨しているにもかかわらず、実際には多くの企業が認めていないという現状もあります。
その背景としては、かえって長時間労働を助長するのではないか、貴重な人材が流出してしまうのではないか、といった懸念があると言われています。
副業をしている人は約1割
今年(2021年)8月16日に、パーソル総合研究所から副業に関する調査レポートが発表されました(パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」)。その調査結果をみていきます。
まず、企業における正社員の副業容認率は55.0%。企業の人事関係者へのヒアリングの結果、「条件付き」も含めると55.0%の企業が副業を容認と回答。これは前回調査(2018年)より3.8ポイント上昇しています。
気になる「現在副業をしている正社員比率」は9.3%。前回調査より1.6ポイントの減少です。「現在は副業をしていないが副業をしたいと思っている人」は40.2%と、前回調査から大きな変化はありません。
副業従事者が約1割で、希望者が約4割ですから、まだまだ日本では“副業の道"は厳しいと言えるのかもしれませんね。
次に、企業が従業員の副業を容認する理由をみてみましょう。
最も多かったのは「従業員の収入補填のため」が34.3%。2位は「禁止するべきものではないので」が26.9%。これは前回調査と比べると5.6ポイントと大きく上昇しています。企業の意識も少しずつではありながら変わってきていることがうかがえます。
一方、他社で雇用されている人材の副業受け入れに前向きな企業は47.8%。このなかで「受け入れ実績あり」が23.9%と半数でした。ただ、逆に言えば「受け入れ意向なし」もまだ52.3%。現状はやはり過渡期ということだと思います。
副業希望者と企業ニーズのギャップ
企業の副業者の受け入れ理由は、全体では「多様な人材確保が可能だから」が26.4%で最多。
企業規模別に見ると、大企業では「新規事業の立ち上げ/推進のため」や「新たな知識・経営資源の獲得が可能だから」、「オープンイノベーションの促進」といった新規事業やイノベーション創発の目的が多い傾向でした。
このように、2018年のモデル就業規則の改定から3年経ち、企業の間では副業の容認が少しずつ広がりを見せていますが、実際に副業を行っている正社員の割合は約1割とほぼ横ばいの状態です。
調査結果として、この背景には最近のコロナ禍の影響もあるとしつつ、根本的には副業希望者と企業側のニーズにギャップがあると分析しています。
そのギャップとは、副業を望むのは“一般的な会社員"に多いが、企業側のニーズが高いのは高スキル人材であり、結果として高スキル人材に副業実施者が多いという実態があるとしています。
データで年収別に副業の実施状況と意向をみると、年収1500万円以上の高所得層で副業の実施率が高く、逆に副業の希望者は低所得層になるほど多い傾向がみえてきます。
この調査分析からも、やはり、いまの日本では“副業の道"は厳しいと言えるのかもしれませんね。“稼げる人は、さらに稼げる"という、ちょっと悲しい傾向がみとてれます。
海外の副業事情
少し悲しい話になってしまいましたが、長期的な展望のために海外事情をみてみます。副業大国とも呼ばれるアメリカの事情をみてみましょう。
2019年のアメリカの調査では「アメリカ国民のうち、ほぼ半数が副業を行なっている」と報告されています(Survey: Nearly 1 in 3 side hustlers needs the income to stay afloat)。このレポートはさらに、アメリカで副業をする人は、平均週12時間働き、月平均1122ドル(約12万円)の収入を得ているとしています。
アメリカでの副業事情を考えるうえでは、やはり“ギグワーク"の概念がポイントとなります。ギグワークの意味は、「多様なライフスタイルや人生のステージにあわせ、自由に、必要なときに必要なだけ働く、 夢や可能性を諦めない新しい働き方」。
具体的には、インターネットを使って単発の仕事を受発注するビジネスモデルのことです。日本で言えば、お馴染みのウーバーイーツやクラウドソーシングのランサーズなどが代表例としてあげられます。アメリカでは、このギグワークが発達しています。
ただ、日本がギグワーク後進国かといえば、そうでもなく、現在の日本国内でのギグワーカーの数は700万人に達するともいわれています。もちろんアメリカとは規模が違いますが、結構、アメリカを必死に追走しています。
個人的には「副業」と「複業」の違いということを、最近、なんとなく考えます。副業の英訳は一般的に「サイドビジネス」として知られていますが、アメリカでは熱意を持って取り組み、場合によっては本業以上に没頭できる副業を「サイドハッスル」と呼ぶそうです。
サイドハッスルに従事している人の感覚は、多分「副業」ではなく、もはや「複業」なのでは、という気がします。そのような感覚を持った人が日本でも増えれば、本格的な副業時代が到来するのではと思えるのです。
とはいえ、まだ相当、先の話かもしれませんが。
参考資料
第二回 副業の実態・意識に関する定量調査(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/activity/data/sidejob2.html)(2021年8月16日、パーソル総合研究所)
Survey: Nearly 1 in 3 side hustlers needs the income to stay afloat(https://www.bankrate.com/personal-finance/side-hustles-survey-june-2019/)(2019年6月5日、Bankrate)
ギグワーカーをめぐる法整備が急務だ(https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26609)(2021年4月2日 週刊東洋経済Plus)
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