つみたてNISAは「売り時」が難しい。ライフプランから出口戦略を考える!
LIMO / 2021年9月11日 11時35分
つみたてNISAは「売り時」が難しい。ライフプランから出口戦略を考える!
つみたてNISAの口座を保有する人が増えています。
その始め方や投資信託の選び方などの記事はよく見かけますが、いつ売るか、どのようにして売るかなどの、出口戦略についての記事はあまり見かけないように思います。
そこで、つみたてNISAの売り時に着目して、ベストな方法を探っていきましょう。そのためには何年後にいくら資金が必要になるか、将来の資金計画を立てておく必要があります。
つみたてNISAを始めたならば、ぜひライフプランに沿った出口戦略まで考えておきたいものです。
つみたてNISAの「仕組み」をおさらい
つみたてNISAは、長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。年間最大40万円、最長20年間、投資から得た利益が非課税となります。
投資の対象は長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されており、投資初心者でも利用しやすい点が特徴。口座開設可能期間は2037年までとなっていましたが、令和2年度の税制改正により5年延長され、2042年までとなりました。
<つみたてNISAの概要>
非課税投資枠 年間40万円が上限
非課税期間 最長20年間
口座開設可能期間 2037年まで → 2042年まで(5年間延長)
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
つみたてNISAはいつでも投資商品を売却して資金を引き出すことができます。また売却する時も、一部だけ売却して、残りはそのまま運用を続けることが可能です。そのため、売る時の自由度は高いといえますが、一度売却した部分の非課税投資枠は再利用できません。たとえば、投資信託を20万円購入し、年内にそれを売却したら、その年の残りの非課税枠は20万円が上限となるのです。
つみたてNISAは「長く続けること」が前提
つみたてNISAは長期間積み立てることでメリットを得られる投資スタイル。そのため短期間で売買するとメリットを損なうことになります。
もともと長期投資に向いた投資信託が選ばれていることから、長期間の投資は複利効果がアップし、そこで得た利益に対して非課税となることで利益は最大化します。
また、投資期間が長いと、価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できるといわれています。そのため、特別な事情がなければ、非課税期間が終わるまでは売らずに投資を続けるのがベストでしょう。
つみたてNISAは運用利益が非課税になることが最大のメリットといえるでしょう。年間40万円、最長20年間で得られる非課税投資枠は800万円。通常の課税口座で運用した場合、運用利益に20.315%の税金(復興特別所得税含む)がかかります。
たとえば通常の課税口座で800万円の元本が1000万円になったら、200万円の利益に対して40万6300円の税金が引かれて、利益は159万3700円に目減りするわけですね。これをつみたてNISAで運用していれば、200万円の利益をそのまま受け取ることができるのです。
そこで気になるのが、この非課税期間の終了後はどうなるの?という点でしょう。詳しく解説していきます。
非課税期間が終わったあとはどうなるの?
非課税期間が終了しても売却せずに保有すると、その時点の評価額で課税口座に移されます。この時の時価が新たな取得価額となります。
たとえば40万円が20年後に80万円になっていた場合、そのまま売らずにいると課税口座に移されて、80万円が取得価額となります。この後に10万円増えて90万円になると約2万円課税されますが、40万円が80万円になった利益には課税されていないので、非課税期間終了前に売った場合と変わりはありません。
「含み損が出ていた場合」は要注意!
問題は含み損が出ていた場合です。たとえば40万円が20年後に30万円になっていた場合、そのまま売らずにいると課税口座に移されて、30万円が取得価額となります。その後に10万円増えて40万円になった場合、「本来であればプラスマイナスゼロで税金はかからない……」といいたいところですが、取得価額が30万円になってしまったことで、10万円の利益となり約2万円課税されてしまいます。
含み損がある場合は、非課税期間中に売却して、その資金を使って新たな非課税枠で投資をするなど、持ち越さないほうがよいでしょう。
つみたてNISA「あなたの目的は?」
つみたてNISAによる資産形成の目的が何かによって、出口戦略は変わってきます。代表的な二つ、教育資金と老後資金についてみてみましょう。
◆教育資金として使う◆
子どもの大学進学費用を、つみたてNISAで準備しようとする場合、何年後にいくら必要になるかはある程度わかると思います。気がかりなのはその時の相場です。上がっていれば何の問題もありませんが、下がっていた場合はどうしたらいいでしょうか。
投資の手法として時間分散があります。これは「ドルコスト平均法」に代表されるように、購入のタイミングを分散することで平均単価を下げることができる手法です。売却も同じです。複数回に分けて売却することで、安値売りを避けることができます。
そのため、資金が必要になる2,3年前から相場に注目し、なるべく高値で売却できる時期を探って数回に分けて売却するとよいでしょう。
◆老後資金として使う◆
老後資金をつみたてNISAで準備する人は多いと思いますが、非課税投資枠は最大で800万円なので、老後資金には足りないという場合があるでしょう。よって、他の方法も使って、二本柱、三本柱で老後資金を準備するのが理想的です。
基本は必要な額だけ取り崩して、残りはそのまま運用を続けるとまだまだ増やすことができます。年金だけでは足りない分を、毎年取り崩していく方法です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)でも老後資金を作っている場合は、先にiDeCoで受け取りを始め、つみたてNISAには手を付けず運用を続けるとよいかもしれません。iDeCoは一時金受け取りの場合は70歳まで(※1)に、年金の場合は最長20年間で受け取るルールとなっていますが、つみたてNISAには期間の制限がないからです。また、iDeCoは投資期間中ずっと口座管理手数料がかかるのに対して、つみたてNISAはかからないのも理由の一つです。
ただし、運用状況によっては、その限りではありません。つみたてNISAで大きく利益が出ていた場合は売却して利益を確保する、逆に下がっていたら売却せずに回復を待つなど、状況をみて判断することも大切です。
つみたてNISAはいつでも、いくらでも売却することができるので、タイミングの判断に自信がなければ、少しずつ売却するのがよいでしょう。
※1 令和2年の年金制度改正によって、上限年齢が75歳へと引き上げられることになりました(令和4年4月実施)
参考資料
金融庁「つみたてNISA」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/index.html)
金融庁「令和2年度税制改正について」(https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/zeikaitaiko01.pdf)
金融庁「投資の基本」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html)
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html)
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