NHKの受信料は逆進的でコスト高、廃止して税金で運営すべし
LIMO / 2021年9月12日 18時45分
NHKの受信料は逆進的でコスト高、廃止して税金で運営すべし
NHKの受信料制度は問題が多いので、公共放送と娯楽放送に分割し、前者は税金で運営し、後者は民営化すべきだと筆者(塚崎公義)は考えています。
NHKの改革を訴えてきた前総務大臣の高市早苗衆議院議員が総理大臣になる可能性が出てきました。そこで今回は、NHKの改革についての筆者の見解を記すことにしました。もっとも、NHK改革というキーワードに反応しているだけですから、高市氏を支持する意図も批判する意図もありません。あしからず(笑)。
受信料は逆進的でコスト高
NHKは受信料で運営されています。テレビ受像機を持っている人から受信料を徴収しているわけです。問題は、テレビ1台当たり何円という逆進的な課金制度になっていることと、徴収に手間がかかっていることです。
所得税は、金持ちから多くとる「累進課税」となっています。所得が上がると税率が上がるので、所得が2倍になると支払う所得税が3倍にも4倍にも増えるわけです。金持ちと貧しい人の格差を是正するための制度と言って良いでしょう。
消費税は累進課税ではありませんが、金持ちは消費額も多いので支払う消費税額も多くなっています。それでも、累進課税でないから逆進的だと批判する人も少なくありません。ちなみに、食料品の軽減税率の話は忘れておきましょう。
それに対し、受信料は金持ちも貧しい人も同じ金額です。金持ちがテレビを5台持っていても、払う金額は1台しか持っていない人と同じなのです。これは、明らかに逆進的だと言えるでしょう。
それだけではありません。受信料を支払う義務があるのか否か、各家を訪ねてテレビを持っているか否かを聞き、持っているならば受信料を払うように請求し、払わない人には督促する、という手間がかかっているわけです。
それ以外にも、受信料制度には問題がありますね。テレビを持っているけれどもNHKを見ない人をどう扱うのか、テレビを持っていないけれどもパソコンでNHKの情報を得ている人をどう扱うのか等々を考えればキリがありません。
そんなことならば、税金でNHKを運営すれば良いのです。税務署が徴収してくれる所得税や消費税で運営するならば、逆進的で手間のかかる受信料の制度が不要になりますから。
公共放送は税金で運営すれば良い
NHKを見ない人は受信料を払う必要がない、という制度も考えられます。BS放送とか民間の有料放送と同じ扱いにするというわけですね。
しかし、それは無理だと筆者は考えています。民間は絶対に放送しないけれども必要な番組というものが存在するからです。
たとえば視聴覚障害者向けの番組は、必要ですが、採算に乗らないので民間では絶対に放送しないでしょう。選挙の際の政見放送も、民間の採算には乗りそうもありませんね。
それ以外にも、民間では放送しないけれども必要な番組が存在する以上、それを放送する放送局は必要なのです。したがって、そうした番組は税金で放送すれば良いのです。
国営放送は政府の言いなり?
NHKを税金で運営しようという提案に対しては、そんなことをしたらNHKが政府の言いなりになり、政府に都合の良い番組しか放送されなくなるといった反論が考えられます。しかし、筆者はそうは思いません。理由は2つあります。
第一の理由は、政府が介入しようと思えば今でもできるからです。政府が介入するかもしれないと考えている人に言いたいです。「税金で運営するNHKに政府が介入すると心配しているならば、その心配は無用です。だって、今でも介入しているはずでしょう? それなら事態が悪化するわけではないですよ」と(笑)。
筆者は政府がNHKに介入しているか否か知りませんが、現時点で介入していないなら税金で運営しても介入しないでしょうし、現時点で介入しているなら税金で運営しても同様に介入するだけだ、というわけですね。
第二の理由は、国立大学は税金で運営されているにもかかわらず、そこの教授たちが必ずしも政府寄りの発言をしているわけではないからです。仮にNHKの放送内容を国立大学の教授たちが決めたら、政府に都合の良い番組ばかりになると思いますか? 筆者は思いませんが(笑)。
娯楽番組等は分社化して民営化
しかし、NHKは娯楽番組も多数放送しています。そうしたものは税金で放送する必要はありませんから、娯楽放送部分を分社化して民営化すれば良いでしょう。
もちろん、区別が難しい番組もあります。美しい風景や芸術品を紹介する番組は、娯楽番組でもありますが、日本のすばらしさを紹介する番組でもあり、国立の美術館や博物館と同じ扱いで国営放送でも良いような気もします。そのあたりは筆者の知見が乏しいので、専門家たちに慎重に検討してほしいと述べるだけにしておきましょう。
分割民営化に対しては、反対論もあるでしょう。それは、娯楽番組を見る人が激減するだろうということです。受信料が強制徴収なら見るけれども、任意ならたとえ100円であっても払わないし見ない、という人も多いでしょう。
受信料が100円ならば見るけれども200円なら見ないという人は、受信料が200円なら見ないでしょう。そうなると、見る人が減るのでコストを賄うために受信料が300円に値上げされるでしょう。・・・という具合に見る人が激減してしまうかもしれないのです。
そうなると、NHKの規模を縮小して従業員を大リストラすることにもなりかねません。それが市場原理だと言い切ってしまえるならば話は簡単なのですが・・・。というわけで、当初は民営化会社に税金で多額の補助金を払ってある程度の規模を維持し、時間をかけて少しずつ規模を縮小していくといった工夫は必要でしょうね。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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