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「情けは人のためならず」の経済学~マイクロファイナンスの全体像~

LIMO / 2021年9月23日 10時35分

「情けは人のためならず」の経済学~マイクロファイナンスの全体像~

「情けは人のためならず」の経済学~マイクロファイナンスの全体像~

前回も「情けは人のためならず」の真意に触れましたが、この古くからいわれる言葉は、「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」というのが本来の意味になります。

この発想は、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取組み全般に通ずるものがあります。

なかでもSDGs17のゴールのうち、「1. 貧困をなくそう」、つまり「貧困削減」を目標とするマイクロファイナンス機関の取組み、また仕組みとしてのマイクロファイナンスは、「情けは人のためならず」の真意を、とくに経済的な側面から体現するために、大きな役割を果たしているといえます。

そこで今回は、マイクロファイナンスについて、改めてその全体像を概観していきましょう。

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「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」に向けた世界の潮流とその歴史

1970年代以降、情報通信技術や移動手段の発達により、世界中でグローバリゼーション(Globalization)と呼ばれる国境を越えた経済活動や人々の往来が活発になりました。

その結果として、多くの国や地域に経済成長がもたらされた一方、経済格差の拡大が世界的な社会課題となっています。

とくに欧米諸国では、1980年代以降、ファイナンシャル・エクスクルージョン(Financial Exclusion、金融排除)が問題視されています。このファイナンシャル・エクスクルージョン(金融排除)とは、貧困層や移民の方々が、預金や保険、融資などの金融サービスにアクセスしたくてもアクセスできない環境に置かれてしまっていることを指します。

金融サービスにアクセスできない環境に置かれてしまうことは、質の高い教育や一定以上の収入の就業などの機会を奪われることに繋がります。

このような事態はそもそも人道的に大きな問題があることは当然のことながら、こうした事態に直面している方々以外にも、治安の悪化や公衆衛生上の問題発生、社会保障費の増大などの悪影響を与えてしまいます。

こうした事態を乗り越えるため、2000年頃から提唱されるようになったのが、ファイナンシャル・インクルージョン(Financial Inclusion、金融包摂)です。このファイナンシャル・インクルージョンとは、前述のファイナンシャル・エクスクルージョン(金融排除)の対義語であり、あらゆる方たちが預金や保険、融資などの金融サービスへアクセスできる環境を整える取組みを指します。

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世界銀行によると、2018年時点で世界の成人の約31%にあたる17億人もの方々が、ファイナンシャル・エクスクルージョン(金融排除)の状態に置かれているとされています。

ただ、これでも2011年以降、約12億人の方たちが金融機関の口座開設を行ったことを勘案すると、ファイナンシャル・エクスクルージョン(金融排除)は減少傾向にあるといえます。この減少の背景には、マイクロファイナンスやFinTech(フィンテック)サービスの普及などが挙げられます。

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ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)の一翼を担うマイクロファイナンス

マイクロファイナンスとは、従来の金融サービスにアクセスできる環境にない方々を対象に提供する金融サービスの総称を指します。

こういった金融サービスを提供する会社等をマイクロファイナンス機関と呼びます。提供している金融サービスの内容に応じて、マイクロクレジット、マイクロインシュアランス、マイクロセービングなどがあります。

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マイクロクレジットとは、従来の金融機関では信用力が低いために借入れができない主に貧困層向けの少額融資サービスのことです。マイクロクレジットでは、多くの場合、担保を取りません。

よって、一般的な融資と比べると、とくにリスク管理が課題になります。こうした課題に対して、借入人による少人数のグループをつくり連帯責任で返済する仕組みを活用する、家計や事業運営のアドバイスをあわせて実施することで借入人のファイナンシャル・リテラシーを高める等により、返済率を高める工夫を凝らしています。

もっとも、こういった工夫がどの程度効果が見込めるかについては現在も議論を重ねているところです。

Microfinance Barometerによると、2018年時点でマイクロクレジットの利用者は1億3,390万人、推定融資残高は1,241億ドルです。南アジア地域の利用者が最も多く、半数以上が農村地域の居住者、8割以上が女性となっています。

新興国の多くでは、主に女性が働き、家計を支えているケースが多いことから、女性向けのマイクロクレジットに注力するマイクロファイナンス機関があることが要因の1つと考えられます。

マイクロインシュアランスとは、主に新興国における貧困層向けの低額保険サービスのことです。

降雨量の変化により農作物の収穫高が大きく変動することで、農業従事者の方たちの収入が不安定になることを防ぐことを目的とする保険などがあります。ただし、新興国においては「凶作が起きたら支払う」などといった将来の約束に対する支払いが一般的ではないこともあり、普及にはまだ課題が多く残されています。

マイクロセービングとは、ごく少額の資金から無料で預金できるサービスのことです。

これは、日本国内では銀行口座が1円から無料で使用できるため、とくにイメージしづらいかもしれません。新興国の農村単位でこのマイクロセービングを実施し、集まった資金をもとにマイクロクレジットが行われるケースもあります。

総括として

マイクロファイナンスには、様々な残された課題があります。

しかしながら、世界一丸となってファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)に取組み、貧困削減を実現するために、欠かすことのできない重要な役割を担っており、今後も試行錯誤を繰り返しながら前進していくことが求められます。

このような不断の地道な取組みこそが、冒頭でもお伝えした「情けは人のためならず」の真意を体現することにつながっていくといえるでしょう。

 

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