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「最低保障年金」は一長一短、国民年金と税金の関係はどうあるべきか

LIMO / 2021年9月26日 18時45分

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「最低保障年金」は一長一短、国民年金と税金の関係はどうあるべきか

公的年金の一部を最低保障年金に変更しよう、という論者がいますが、一長一短だろうと筆者(塚崎公義)は考えています。

河野太郎議員が「最低保障年金」という考え方を打ち出しているようなので、それについて筆者の考え方を述べたいと思います。単にタイムリーな話題としてコメントするだけで、河野議員の考え方の詳細は把握しておらず、河野議員を応援するものでも批判するものでもないので、あしからず。

国民年金の半分は税金で賄われている

公的年金の制度は2階建てです。1階部分は全員が加入する国民年金(老齢基礎年金)、2階部分はサラリーマン(サラリーウーマンや公務員等を含む、以下同様)が加入する厚生年金です。本稿は2階部分には言及せず、1階部分についてのみ論じることとします。

1階部分は最大月額6.5万円が高齢者に支払われるのですが、その原資の半分は現役世代が払った年金保険料、残りの半分が税金から出ています。

余談ですが、この税金のおかげで平均寿命まで生きれば自分が払った年金保険料よりも多くの年金が受け取れる、お得な制度となっているわけですね。筆者は年金保険料をしっかり払うようにお勧めしていますが、その大きな理由がこれなのです。

年金保険料を払わないと年金が受け取れないのが今の制度

サラリーマンの年金保険料は給料天引きであり、その専業主婦(サラリーウーマンの専業主夫を含む、以下同様)は別扱いなのですが、それ以外の自営業者や失業者等々は自分で現役時代に国民年金の保険料を支払う義務があります。

問題は、年金保険料を支払っておかないと老後に年金が受け取れないということです。全員が国民年金に加入しているにもかかわらず、老後に年金が受け取れない人がいるわけですね。

年金を払わなかった人でも年金が半分もらえる制度に変更も可能

それでは老後の生活に支障が出かねないということで、年金の税金負担部分は全員に支給しようという考え方は当然可能だと思います。

ベーシックインカムという考え方があり、国民全員に一定金額を支給しようというものですが、その修正版という考え方も可能でしょう。「若者は働け。働けない若者は生活保護を申請せよ。高齢者はベーシックインカムで生活を保障しよう」ということでしょうか。

追加の財源は必要だが、もともと払う予定だったとの考え方も

ただ、年金を受け取れていない人にも、本来受け取れるはずの金額の半分は支給してあげようということになると、その分だけ税金が多く必要になるわけです。その分の財源をどうするのかという議論が出てくるわけですね。

しかし、追加で税金の投入額が増えるという批判は、半分は当たっていても半分は外れていると言えるのかも知れません。

現在の制度でも、建前としては全員が国民年金保険料を支払い、全員が老後に年金を受け取り、その半分は税金を原資とするわけですから、全国民分の年金の半分は税金が投入されることを政府は覚悟しているわけです。

さらに、金がなくて年金保険料が払えない人は、その旨の届けを出すと年金を半分受け取れる制度があるので、仮に全員がその制度を使えば、金がない人を含めて全員が年金を半分は受け取れるはずなのです。

実際には、現役時代に年金保険料を支払わず、かつ届け出の制度を知らなかったという人等がいるのですが、「その人には老後の年金を支払わずに済む」などと考えずに、予定通り払うことにすれば良いというだけの話ですね。

支給額が増える一方で、生活保護の受給者が減るメリットも

全員に年金を支給すると、生活保護の申請が減るかもしれません。国民年金の半分ということは、夫婦2人で毎月6.5万円ですから、それだけで生活するのは難しいでしょうが、他の収入等が少しでもあれば申請せずに済む人はいるはずだ、と期待しているのですが。

筆者が懸念しているのは、バブル崩壊後の長期低迷期に正社員になれずに非正規労働者として生計をたてている人が大勢いることです。

彼らの中には、国民年金保険料が払えておらず、届け出もできていない人が大勢いるはずです。そうした人は老後のための蓄えも少ないでしょうし、退職金も出ないので、老後は生活保護に頼るケースも増えてくると懸念されるわけです。

そうした事情も考えると、生活保護の受給者を少しでも減らすために最低保障年金が役立つのであれば、検討すべき選択肢なのかもしれませんね。

年金制度を廃止して税金で、という選択肢も

夫婦2人で月6.5万円では生活保護は減らないから、月13万円受け取れるようにしようという考え方もあるでしょう。現役世代が年金保険料を払うのをやめて、代わりに消費税を増税して年金の原資を賄えば良いのだというわけですね。

これについては消費税の増税幅が大きすぎるといった批判があり得ますが、今の現役世代が払っている国民年金保険料が不要になるのと同額を消費税で集めるわけですから、国民全体の負担は変わらないわけです。

問題は、総額は同じだとして、誰が払うのかということなのです。今の年金制度(1階部分)は「現役世代だけが、しかも全員同額の負担をして、高齢者は全員同額の受取」という基本的な考え方ですが、これを根本的に変えることになり、非常に大きな改革となるわけですね。国民的な議論が必要でしょう。

ちなみに、サラリーマン等については複雑ですが、細かい議論は別の機会に譲るとして、ここでは「1階部分についての基本的な考え方」は同じだということにしておきましょう。

あとは、筆者のように長期にわたって年金保険料を支払ってきたのに、今後も増税された消費税を払い続けるという世代が出てしまうのは問題ですね。これまで払った年金保険料を返してもらう必要があり、そのための財源が必要となりますね。

この部分については、「現役世代が高齢者を支えてきた制度」を「皆で高齢者を支える制度」に変更するわけですから、制度の大きな変更に伴う一時的な支出ということで、これも財源についての国民的な議論が必要でしょうね。

借金か増税で賄う必要があるわけですが、無駄な公共投資に使ってしまった財政赤字の穴埋めをするというわけではなく、単なる制度変更に伴なって必要な財源なので、前向きな議論が可能でしょう。

高額所得者には年金を支給しないという議論もあり得ますが、高齢者で高額所得者は稀でしょうから、意味のある議論ではないですね。

年収は少ないけれども資産は多いという高齢者に年金を支払うべきかという議論はありえますが、そのためにはマイナンバー等を活用して全員の資産状況をしっかり把握する必要があり、これも国民的な議論が必要でしょうね。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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