「もちまる」も無縁じゃない?人気猫種が抱える病とは
LIMO / 2021年10月9日 11時35分
「もちまる」も無縁じゃない?人気猫種が抱える病とは
愛らしい猫の動き・生態を好きなときに眺められる猫動画。2021年8月12日に「もちまる」が「YouTubeで最も視聴された猫」としてギネスに認定されたのは、猫好きの方にとっては記憶に新しいでしょう。
そして、日本には過去に同様のギネス記録を持っていた猫「まる」(2016年9月22日認定)もいるのですが、いずれの猫も「スコティッシュフォールド」という種類の猫です。
折れ耳と丸っこい体型で人気を得ているスコティッシュフォールドですが、遺伝病リスクがある点は意外と知られていません。今回はこの点を解説します。
スコティッシュフォールドの遺伝病とは?
論文“A dominant TRPV4 variant underlies osteochondrodysplasia in Scottish fold cats”によると、スコティッシュフォールドの折れ耳とともに、軟骨や骨に異常が起きる「骨軟骨異形成」は優性遺伝します。これはつまり、「折れ耳」の時点で骨軟骨異形成であるということです。
更に、病院を受診したか、キャッテリー(猫の飼育・繁殖を行うところ)で飼育されているスコティッシュフォールドを調査した論文“Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cats”においても、正常猫と交配した場合であっても、調査した折れ耳スコティッシュフォールドのすべてに骨軟骨異形成が確認されたと報告されています。
なお、「ギネス猫」である「もちまる」や「まる」はスコティッシュフォールドではありますが、動画を見ればわかる通り、いずれも耳が立っており、折れ耳ではありません。骨軟骨異形成である可能性は低いとみて良さそうです。
骨軟骨異形成は治療できるか?
そして、骨軟骨異形成は遺伝病のため、痛みを和らげるなどの対症療法はあっても、根本的な治療方法はありません。
そのため、スコティッシュフォールドを飼っている場合は歩き方に変な点はないか、痛そうにしていないかを注意深く観察しましょう。そして、変な点があれば速やかに動物病院に連れていき、生涯にわたって適切な対症療法を行う必要があるのです。
また、後ろ足を人間のように投げ出して座る「スコ座り」はこの骨軟骨異形成の痛みを和らげるための猫の「苦肉の策」とも言われています。「スコ座り」が見られたら動物病院への受診が必要でしょう。
スコティッシュフォールドの販売を禁じる国もある
このように、猫が高い遺伝病リスクと痛みを抱えることになるため、スコティッシュフォールドの販売を禁じている国もあります。
2021年10月1日より、ベルギーのフランドル地方では、スコティッシュフォールドやハイランドフォールドなど、耳が折れている猫種の繁殖と取引が禁止されました。
また、イギリス最大の血統登録団体であるThe Governing Council of the Cat Fancyは、1971年にすでにスコティッシュフォールドの血統登録を禁じているのです。
日本ではスコティッシュフォールドの販売および血統登録は禁じられていませんので、スコティッシュフォールドを飼うこと自体は問題ありません。
しかし、可愛がっている猫が遺伝病リスクを抱え、「痛み」を一生抱えることになる可能性があることと、他国で繁殖・販売を禁止する動きがあることを踏まえて、スコティッシュフォールドを新たに迎えるべきかどうかを考えるきっかけにしていただきたいと思います。
その際、ヨーロッパの獣医師団体であるFECAVAが「痛みを伴う重大な病気を引き起こすことがわかっている遺伝子変異を持つ猫(スコティッシュフォールド)を繁殖し続けることは倫理的に問題がある」と指摘し、猫の国際的な慈善団体であるInternational Cat Careも「スコティッシュフォールドの繁殖数や需要を減らすことを目指す」ことを明言している事実を重く受け止めたいものです。
参考資料
株式会社FREE「YouTubeチャンネル『もちまる日記』の『もちまる』がギネス世界記録™認定!YouTubeで最も視聴された猫として世界一に!」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000069673.html)
Guinness World Records “Most views for a cat on YouTube”(https://guinnessworldrecords.com/world-records/469238-most-views-for-a-cat-on-youtube)
Guinness World Records “Video: Meet Maru ‘Mugumogu’ - the cardboard box-loving, record-breaking cat”(https://guinnessworldrecords.com/news/2017/3/video-meet-maru-mugumogu--the-cardboard-box-loving-record-breaking-cat)
B. Gandolfi , et al. “A dominant TRPV4 variant underlies osteochondrodysplasia in Scottish fold cats”(https://www.academia.edu/28957187/A_dominant_TRPV4_variant_underlies_osteochondrodysplasia_in_Scottish_fold_cats)
R Malik , et al. “Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cats”(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10078353/)
みんなのどうぶつ病気大百科「軟骨異形成症候群 <猫>」(https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1111)
FECAVA(Federation of European Companion Animal Veterinary Associations) “Flemish part of Belgium bans breeding and trading of cats with folded ears”(https://www.fecava.org/news-and-events/news/belgium-bans-breeding-and-trading-of-cats-with-folded-ears/)
The Cat Fanciers’ Association “Scottish Folds”(https://cfa.org/scottish-fold/scottish-fold-article/)
International Cat Care “Belgian region ruled to ban the breeding of Scottish Fold cats”(https://icatcare.org/scottish-fold-breeding-ban/)
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