大学生1人にかかるリアルな金額。国立と私立、自宅と一人暮らしの差はどのくらいか
LIMO / 2021年11月5日 18時45分
大学生1人にかかるリアルな金額。国立と私立、自宅と一人暮らしの差はどのくらいか
子どもの教育費と一口に言っても、選ぶ進路によって資金額は大きく異なります。特に大学となると、国公立か私立かでかなり差があり、さらに自宅通学なのか、下宿など1人暮らしをするのかによっても金額は大きく違ってきます。
独立行政法人 日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果 大学昼間部(速報値)」には、実際に4年制大学に在籍している学生1人あたりの1年間の収入・支出の調査結果が示されています(令和2年11月実施)。以下、国立と私立、自宅と一人暮らしでどのくらい差があるかを見ていきましょう。
1年間でかかる学費、私立は国立の倍以上
授業料はどのくらい違うのか
まず、授業料の平均(居住形態別)は、以下のような結果になっています。
<自宅>
国立:49万0000円
私立:103万3200円
<下宿、アパート、その他>
国立:48万7700円
私立:107万3500円
このように、国立大学では49万円前後、私立大学は100万円を超えています。
現在、国立大学の授業料は国が定める53万5800円を標準額として、各国立大学がそれぞれ金額を設定しています。標準額と調査の平均額に若干違いはありますが、いずれにしても国立と私立では授業料だけでおよそ2倍の差があることが分かります。
国立と私立では「その他の学校納付金」に差がある
国立と私立で大きな差があるのは、施設維持費や実験研修費、後援会などの「その他の学校納付金」です。国立の施設整備は国の施設整備費補助金を基本的な財源としているので、学生の負担はほぼありません。
それに対して私立の「その他の学校納付金」は、1年間で15万円~16万円。4年分で60万円ほど費用がかかることになります。
自宅通学と1人暮らしの生活費の違いは?
次に生活費を見てみましょう。自宅通学の場合とアパートなどで1人暮らしをしながら通学する学生にかかる金額は、それぞれどのくらいなのでしょうか。
自宅通学の生活費は年間35万円~40万円
自宅通学する学生の1年間の生活費は、国立が35万4200円、私立は約39万2000円という結果でした。なお、生活費は「食費」「住居費・光熱費」「保健衛生費」「娯楽・嗜好費」「その他の日常費」の合計ですが、自宅通学の場合、「住居費・光熱費」はゼロとなります。
一人暮らしの大学生の生活費は年間100万円超
一方、居住形態が「下宿、アパート、その他」の場合、生活費の年額の平均は、国立が114万2800円、私立が109万1600円で、1ヶ月で10万円程度かかっています。
内訳で最も多いのはやはり「住居・光熱費」で、国立が53万400円(ひと月あたり4万4200円)、私立は48万3000円(ひと月あたり4万250円)。次に多いのは食費で、国立が28万8400円、私立は26万7400円。ひと月あたりでは2万円台です。
この食費には外食も含まれているので、1日に使える食費にあまり余裕はなさそうです。筆者も学生時代に一人暮らしをしていた時、飲食店のアルバイトを選び、できるだけ賄いで食費を浮かせるようにしていました。今もこうした学生は少なくないかもしれません。
大学4年間の費用を概算してみると…
授業料、その他の学校納付金、修学費、課外学習費、通学費を合計した学費(入学料は除く)と、生活費を合わせた4年間の支出を、自宅と一人暮らしそれぞれで計算すると以下のようになりました。
最も少ない「自宅+国立」で400万円弱、最も多い「一人暮らし+私立」で1000万円弱となっています(内訳は図表1、図表2参照)。
<自宅>
国立:(学費63万2900円+生活費35万4200円)× 4 = 394万8400円
私立:(学費131万2800円+生活費39万2000円)× 4 = 681万9200円
<下宿、アパート、その他>
国立:(学費57万9000円+生活費114万2800円)× 4 = 688万7200円
私立:(学費132万2700円+生活費109万1600円)× 4 = 965万7200円
なお、国立の入学料は、2002年(平成14年)以降、28万2000円が標準額とされています。また、文科省の調べによると、私立大学の令和元年度入学者の入学料は24万8813円となっています。
こうしてみると、いくら学費が安い国立であっても一人暮らしをするとなると家計の負担は大きく、私立にいたっては、用意周到な準備がなければ捻出できない金額でしょう。特に私立の場合は学部による金額の差も大きいので、子どもの進路も考え合わせた手当が必要になります。
お金の工面はどうしているか?
一方、居住形態別の年間収入金額は以下のような結果でした。内訳では家庭からの給付(仕送りや直接親が支払った学費など)が最も多く、奨学金とアルバイトが続いています(図表3参照)。
<自宅通学>
国立:115万4000円(うち家庭からの給付58万9000円)
私立:182万9200円(うち家庭からの給付102万400円)
<下宿、アパート、その他>
国立:185万3000円(うち家庭からの給付116万4800円)
私立:249万7000円(うち家庭からの給付163万7100円)
自宅通学の場合、授業料などの学費(国立:63万2900円、私立:131万2800円)を、ほぼ家庭からの給付と奨学金で賄っているようです。
一方、自宅外通学の場合、家庭からの給付と奨学金だけでは学費と生活費の合計額(国立:172万1800円、私立:241万4300円)には足りず、学生本人のアルバイト代もしっかり生活資金に含まれていることが分かります。
同調査によると、学生のうち8割ほどがアルバイトをしており、家庭からの給付に関する質問への回答は以下のようになっています。
<国立>
家庭からの給付のみでは修学に不自由:13.4%
家庭からの給付のみでは修学継続困難:9.7%
家庭からの給付なし:5.6%
<私立>
家庭からの給付のみでは修学に不自由:13.2%
家庭からの給付のみでは修学継続困難:13.0%
家庭からの給付なし:5.8%
おわりに
日本学生支援機構の調査結果には、実際に大学に通う学生の経済状況が反映されていますが、約半数の大学生が奨学金を受給しており、アルバイトをしている学生も多くいます。
自宅外通学をする学生のほとんどは生活に余裕がなく、このコロナ禍で飲食店のバイトで働く学生はさらに厳しい生活を強いられているでしょう。経済の急速な回復が望めない中では、そのような厳しい現実も踏まえて進路選択をすることが大切かもしれません。
参考資料
令和2年度学生生活調査(集計表)(https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2021/09/24/data20sokuhou.pdf)(独立行政法人 日本学生支援機構)
国立大学法人等の施設整備(https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/kokuritu/)(文部科学省)
私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00002.htm)(文部科学省)
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