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J.フロントリテイリングのESG戦略とは?その内容と解説

LIMO / 2021年11月6日 18時0分

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J.フロントリテイリングのESG戦略とは?その内容と解説

~投資家必見!有名企業のESG戦略分析シリーズ~

昨今、企業のESGに向けた姿勢への注目度が高まっています。ESGとはE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の英語の頭文字をとったものです。今回は様々な上場企業がESG戦略を検討、実施する中で、百貨店運営のJ.フロントリテイリングを取り上げ、同社のESGに対する取り組みをご紹介します。

E(環境):小売店の立場生かし、顧客啓蒙に積極的

同社は環境面において、エネルギー使用量や温室効果ガス、廃棄物の取り組みなど幅広く活動していますが、着目すべきは消費者も巻き込んだ動きでしょう。同社は運営する大丸・松坂屋各店で、消費者の生活の中に「エコ」「エシカル」を取り入れるための提案を行っています。6月・10月の環境月間には、各店の売場で環境配慮型商品の提供や、環境負荷の低減につながるライフスタイル提案を企画・推進しています。

クールビズを軸に、ビジネスシーンでは快適感とおしゃれさを両立した衣類を提供するなど、社会課題の解決と消費者ニーズの充足を可能とする商品を提供しています。また、アパレル面だけでなくインテリア面でも環境負荷の低減につながる顧客啓蒙を推進しています。節電&猛暑対策として、接触冷感素材を使用したダウンケットや、自然素材の「い草」を使用したマットやラグなどの「い草シリーズ」など、消費者の生活全般に渡る広範囲な配慮が見て取れます。

こうした取り組みには、多様な商品を扱い、かつエンドユーザーである消費者と直接接点を持つ同社ならではの独自性がうかがえます。なお、これらの環境に対する取り組みはSDGsの掲げる17つのゴールのうち、環境関連(ゴールナンバー:7、11、13、14、15)、健康関連(同3)とも密接に関連しており、ESG、SDGsの両面で優れた取り組みを進めているといえるでしょう。

※SDGsのゴールについては末尾に参考情報として掲載していますので、ご参照ください。

S(社会):働きがい改革でイノベーション図る

同社の社会貢献は地域活性化や消費者の安全・安心、芸術・文化の支援など、環境面同様に領域は多岐にわたりますが、特筆すべきは「ダイバーシティー&インクルージョン」の面で推進する「働きがい改革」でしょう。働き方改革ならぬ同社の働きがい改革は、イノベーションを生み出すダイバーシティーの推進と、生産性向上を実現するワーク・ライフ・バランスの実現を包括的に取り組むことで、個人の働きがいと組織の生産性向上を同時に実現することを目的としています。

ダイバーシティーの推進として、女性活躍推進や、育児中の女性社員の仕事と育児の両立支援、専門知識を持った人材の中途採用などを推進しています。今後は、男女などの性差に関係なく能力を発揮できる風土を醸成し、また専門性を高める研修などによる個人のスキルアップをサポートすることで、イノベーションを図る考えです。

一方、ワーク・ライフ・バランスの実現としては、仕事と育児・介護の両立のための休暇制度の拡充、フレックスタイム制勤務や有休取得促進などの勤務制度の整備、ITを活用した業務効率化を行っています。今後は、出産・育児・介護によってキャリアを中断させることなく仕事を継続できる仕組みを整え、個人での働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの実現や、組織として生産性を向上させる取り組みを進める考えです。

こうした取り組みが評価され、2021年3月には経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「なでしこ銘柄」において、2019年度に引き続き「準なでしこ」に選定されました。なお、「なでしこ銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で女性活躍推進に優れた企業を業種毎に選定するものです。

SDGsに絡めると、ジェンダーや労働、イノベーション、不平等是正といったゴール(ゴールナンバー:5、8、9、10)に対応した取り組みになっています。

G(企業統治):第三者による客観評価でガバナンス形骸化防止

同社のガバナンスにおける取り組みで特徴的なものは、取締役会評価の実施です。同社は「持続的成長と中長期的な企業価値の向上のためには取締役会の実効性が確保されることが極めて重要」との認識のもと、2015年より毎年、第三者機関による取締役会評価を実施しています。評価方法は、事前アンケートをもとに第三者機関が取締役(社内・社外両方)全員に対する個別インタビューを行い、その結果を 集計・分析した報告書に基づいて取締役会で協議するというものです。

2020年9月~10月にかけて実施した取締役会評価について、第三者機関からは「現行の取締役会構成の下で、審議内容の客観性を高め、多角的な視点から活発な論議が行われている」との報告を受けるとともに、以下の課題を認識したとのことです。

取締役会の役割の再定義

中長期戦略に関する論議の強化

取締役会の構成見直し

取締役会のPlan、Checkの強化

指名委員会の機能強化

なかには「取締役会の役割の再定義」など、枝葉ではなく根本部分に焦点を当てて現状を見直すという姿勢も見て取れ、ガバナンス体制の形骸化に対する懸念は薄く、株主として信頼感があります。

J.フロントリテイリングのESG戦略のまとめ

大丸や松坂屋など店舗の存在を知っていた人は多いかと思いますが、その背景にある会社
側の考え・方針を知ると、J.フロントリテイリングのESGに対する積極性が深く理解できますね。とりわけ、環境保護に重点を置いた商品の展開は、ただ単に市場ニーズを捉えるだけでなく、環境保護の姿勢を消費者にも根付かせるという考えがあった点は驚きです。

また、ガバナンスにおいて規律を維持する取り組みがあることも評価できます。伝統的な大組織では社内政治など内輪の論理が優先されがちですが、同社の場合は第三者による客観評価のもと、課題の認識&解決が図られているというのは、株主としてもポジティブな材料ですね。

【参考】SDGsの17の目標

1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤を作ろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標を達成しよう

参考資料

J.フロント リテイリング株式会社「環境にやさしいライフスタイルの提案」(https://www.j-front-retailing.com/sustainability/low-carbon/low-carbon03.php)

J.フロント リテイリング株式会社「『働きがい改革』の実現」(https://www.j-front-retailing.com/sustainability/diversity/diversity06.php)

J.フロント リテイリング株式会社「社外からの評価」(https://www.j-front-retailing.com/sustainability/outside-evaluations.php)

J.フロント リテイリング株式会社「取締役会評価」(https://www.j-front-retailing.com/company/governance/governance06.php)

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