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株価はどんなときに上昇し、どんな理由で下落するのか。景気と株価と企業業績の関係

LIMO / 2021年11月14日 17時15分

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株価はどんなときに上昇し、どんな理由で下落するのか。景気と株価と企業業績の関係

景気回復初期はサプライズにより株価が上昇し、景気回復末期には過度な期待の剥落による株価下落があり得る、と筆者(塚崎公義)は考えています。

株価は景気の先行指標

株価は景気の先行指標だと言われています。実際、内閣府の景気動向指数の計算でも株価は先行指数の計算に用いられています。株価が上がると景気が良くなるといった因果関係は、皆無ではないものの、決して強くないのですが、なぜなのでしょうか。

理由の第一は、投資家たちが景気の先行きを予想して株を売買するからです。投資家たちが景気回復を予想して株を買い、その予想が当たると実際に景気が株価に遅れて上がってくるわけですね。景気の予想は比較的高い確率で当たるので、結果としてみると株価が景気に先行したことになるというわけですね。

理由の第二は、景気と企業収益の関係からくるものです。たとえば景気回復初期には人々が景気に悲観的なのですが、そんな時に大幅増益決算が発表になるので株価が大きく上がるというわけですね。

著名な投資家であるテンプルトンの言葉に「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く」というものがありますが、これも株価が景気の先行指標であるということを示すものでしょう。

景気回復初期には人々の期待は最低、増益率は最高

景気のボトムでは、人々は大変悲観的です。景気が回復を始めても、そのことにすぐに気が付く投資家は決して多くないので、悲観はしばらく続くはずです。しかし、企業収益の方は、景気回復の初期に大幅な増益になりやすいのです。

前期の利益が小さいことから増益率が大きくなるというだけではなく、景気回復初期には売り上げが増えても労働者を新しく雇う必要がないので人件費が増えず、売上増が材料費を除いてそっくり利益増になるといったことも貢献するわけです。

もしかすると、景気がボトムをつける前に企業収益は改善を始めるかもしれません。不況期には設備投資をせず、減価償却によるキャッシュフローが借金返済に使われるため、支払い金利が減っていくといった理由です。

発表された決算が人々の予想と異なるほど株価は大きく動くわけで、景気のボトム近辺での増益決算は株価を大きく上昇させるでしょう。

その後も、景気回復の初期は経済指標が良いものと悪いものの混在となるため、人々が景気回復を確信できずにいます。景気に対する懐疑の中で株価が上昇を続けるわけです。

景気回復後半には人々の期待は高まり、増益率は低下

景気の回復が続くと、景気の足取りがしっかりするため、人々が景気の先行きに自信を持つようになります。しかし、それとともに企業の増益率は下がってきます。前期の利益水準が上がってくるからですが、それだけではありません。

社内の余剰労働力や余剰設備が減ってくると、新しく労働者を雇ったり設備投資をしたりする必要が出てくるので、コストが膨らんでくるわけです。材料費も値上がりしてくるかもしれません。

人々が景気の先行きを楽観し、それなら株価にも楽観的になって良いだろうと考える頃には、増益率は下がり、強気相場は成熟してきているわけですね。

金融引き締めは株価の押し下げ要因に

景気がピークを迎える頃には、景気は絶好調で人々は幸福なのですが、日銀はインフレを気にするようになり、金融を引き締めます。景気をわざと悪くしてインフレを抑えようというわけですね。

金融引き締めは、金利を引き上げることで企業の利払い額を増やし、企業収益を抑制します。一方で、投資家としては株を買って配当を受け取るよりも銀行に預金して金利を受け取った方が有利になるかもしれません。また、金融引き締めで世の中に出回る資金が減れば、株式投資に回ってくる資金も減るかもしれません。

しかし、そんなことより何より、美人投票の世界ですから、投資家たちが「金融引き締めは株価にマイナスだ」と考えていること自体が株価を押し下げるわけです。これは、もう宗教的信念と言っても良いでしょうから、間違いなく株価を押し下げる力として強力に作用するはずです(笑)。

株価が景気を動かす力は限定的

冒頭、株価が景気を動かす力は強くないと記しました。株価が上昇しても、それが消費に回る部分はわずかだからです。金持ちは株価が上がって儲かっても、それで消費を増やすということはないでしょう。

庶民は、そもそも株をあまり持っていませんし、値上がりして儲かったとしても贅沢をするよりも老後資金として溜め込んでしまう部分の方が大きいでしょう。特に、日本の庶民はあまり株を持っていませんし、将来を悲観して老後のために貯金したがる人が多いですから。

実際、アベノミクスで大幅に株価が上昇した時も、それほど消費は盛り上がりませんでした。プレミアムモルツが話題となったことくらいしか筆者の記憶に残っていませんから(笑)。

本稿は以上ですが、当然のことながら投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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