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「自己責任で運用する」確定拠出年金、成果は出ているのか? DC制度施行から20年

LIMO / 2021年11月17日 18時45分

「自己責任で運用する」確定拠出年金、成果は出ているのか? DC制度施行から20年

「自己責任で運用する」確定拠出年金、成果は出ているのか? DC制度施行から20年

確定拠出年金(以後、DC)制度が始まったのは、2001年10月1日。今年で誕生から20年が経ちました。DCとは、掛け金を自らの判断で運用し、運用の結果で受け取る年金の額が変わってくるという仕組みの年金制度です。

20年の間に企業型DCを導入する会社が増え、個人型のiDeCoも身近な金融機関で利用することができるようになりました。加入者は企業型と個人型を合わせて約940万人で、労働人口の1割程度です(2021年3月時点、厚生労働省調べ)。

この施行開始20年という節目に、フィデリティ投信株式会社は大規模なDC意識調査を実施。1万2000人を対象に行った調査から、加入者が運用状況をどう考えているのか、また加入者・非加入者が感じているメリットやデメリットについて見てみましょう。

注:企業型確定拠出年金は、会社が従業員のために掛金を拠出し、従業員自らの判断において運用されるもの。個人型確定拠出年金は、加入者が自分で掛金を拠出し、加入者自らの判断において運用されるもの。

運用はうまくいっているのか?

運用は「自己責任」というのが特徴のDCですが、投資初心者にとっては、そこがDCの利用を躊躇(ちゅうちょ)してしまうポイントになりがちです。そして、運用を始めたのはいいけれど、損する可能性もあるだけに不安が先行している人は多いかもしれません。

そこで、加入者に対して、資産運用がうまくいっているかを「大変うまくいっている」から「全くうまくいっていない」までの5段階で聞いたところ、次のような結果になりました(図表1参照)。

全体では、「大変うまくいっている」「まあまあうまくいっている」を合計した約4割が運用は好調と回答。これに対して、運用が「あまりうまくいっていない」「全くうまくいっていない」は合わせて10%程度という結果になっています。

また、女性より男性の方が、年収は高い方が、運用が好調だと回答する人の割合が高いことが分かります。

図表1:DCの運用はうまくいっているか、 いっていないか

(/mwimgs/c/f/-/img_cf9332028dba9b30a17a655f3bf707b9101975.jpg)

拡大する(/mwimgs/c/f/-/img_cf9332028dba9b30a17a655f3bf707b9101975.jpg)

出所:確定拠出年金1万2000人意識調査(フィデリティ投信)より筆者作成

運用の成果を左右したのは何か?

次に、どのような運用が運用の良し悪しを左右したのかについてです。フィデリティ投信の調査では、運用スタイルごとに企業型と個人型に分けて集計されています。

運用スタイルは、定期預金などの元本確保型商品だけに預けている人(元本確保派)、元本確保型商品と投資信託で運用している人(ミックス派)、投資信託のみで運用している人(投信派)の3グループです。

好調と答えた人の割合(大変好調と好調の合計)は以下の通りで、企業型と個人型のいずれも、元本確保派よりもミックス派や投信派の方が、運用の成果が良かったことが分かります。

企業型・好調と答えた人の割合

元本確保派:24%、

ミックス派:38%

投信派:47%

個人型・好調と答えた人の割合

元本確保派:32%

ミックス派:40%

投信派:50%

一方で、運用の成果が不調もしくは大変不調と答えた人の割合は、企業型、個人型ともに3つのグループ間で大きな差は見られず、おしなべて10%程度でした。ただ、個人型の投信はは6%と他より低い数字になっています。

運用がうまくいった人とうまくいかなかった人の違いは?

運用が「うまくいった」「うまくいかなかった」と考える背景をそれぞれ聞いたところ(複数回答)、「うまくいった」と回答した人では、商品選択の成功、市場環境の良さ、長期運用の実践などが上位に挙がっています(図表2参照)。

それに対し、「うまくいかなかった」の背景としては、リスクに対して消極的だったことの割合が最も多くなっています。リスクをとらなかったことで上昇相場に乗れなかったと考える人が少なくないようです。

ただ、うまくいかなかった人の回答には、リスクの取り過ぎや短期的な売買を挙げている人もいます。つまり、必ずしもリスクに消極的だからうまくいかなかったわけではないようですが、うまくいった人が挙げる長期運用やリスクの抑制とは対照的な回答であることも分かります。

図表2:運用が 「うまくいった」 「うまくいかなかった」 と考える背景

(/mwimgs/a/1/-/img_a1a93cdcedbe38856a86e04378f8f256102273.jpg)

拡大する(/mwimgs/a/1/-/img_a1a93cdcedbe38856a86e04378f8f256102273.jpg)

出所:確定拠出年金1万2000人意識調査(フィデリティ投信)より筆者作成

DCのデメリットや加入しない理由は?

総合的な質問として、DCの良い点、良くない点を聞いたところ、DCの良い点で上位に挙がった回答のうち最も多いのは「節税効果がある」。次いで、「自分で運用先を選択できる」「60歳まで引き出せず、老後資金として確保できる」となっています(選択肢から複数回答可)。

一方、DCの良くない点では、「60歳まで引き出しができない」が最も多く、特に女性、年収500万円未満、若年層で多いという結果になりました。また、「細かいルールがたくさんあってわかりにくい」「自分で運用しなければならない」が上位にきています。

このように、「60歳まで引き出せない」や「自分で運用する」というDCの特徴は、プラスに捉える人も、マイナスに捉える人もいることがわかります。

さらに、DC制度の詳細を知っているのに加入していない人に聞いた理由でも、最も回答が多かったのは「60歳まで引き出せないから」でした。この理由を挙げた人を年齢層別に見ると若年層が6割強で、やはり60歳はまだまだ先という若い人には加入のハードルとなっているようです。

おわりに

本稿で紹介したのはフィデリティ投信による調査の一部ですが、「運用の成果を左右した理由」をみると、日頃から投資をするうえで大切だとされる長期投資と分散投資がDCの運用でも重要だと言えそうです。

DC制度は、将来受け取る国民年金や厚生年金に自分で運用した年金が上乗せされる制度です。60歳まで引き出しできないという点はデメリットかもしれませんが、それは老後の資金に手をつけることなく着実に準備ができるという良さでもあります。すぐに引き出せるお金も確保しつつ、無理のない金額から始めてみてはどうでしょうか。

参考資料

確定拠出年金の施行状況 令和3年3月31日現在(https://www.mhlw.go.jp/content/000463291.pdf)(厚生労働省)

確定拠出年金1万2000人意識調査(https://www.fidelity.co.jp/articles/research/2021-10-13-dc-vol3-jp-1634017758044)(フィデリティ投信)

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