米中韓と差がついた日本のオンライン学習。ICT化が進む中の課題
LIMO / 2021年11月17日 18時15分
米中韓と差がついた日本のオンライン学習。ICT化が進む中の課題
今年(2021年)9月、デジタル庁が発足。遅れていた行政のデジタル化加速に向けた動きが始まっています。この20年でビジネスシーンはICTの発達で大きな変貌を遂げた一方、学校では「板書スタイル」を基本とする旧来型の授業が続いてきました。
ところが2020年春、新型コロナによる臨時休校を機にオンライン授業を求める声が保護者や児童生徒から上がり、文部科学省ではGIGAスクール構想を打ち出して学校教育現場でのICT端末導入を急速に進めています。
こうして2020年から2021年にかけてオンライン授業への認知度や期待が高まりましたが、コロナ禍以前の日本の高校生は、アメリカや中国、韓国と比べてオンライン学習に対する意識や経験値に差があったようです。
デジタル化の波に乗れずにいた日本の教育
独立行政法人国立青少年教育振興会が、2019年9月に日本を含む4カ国の高校生に対して実施した調査「高校生のオンライン学習に関する意識調査報告書 -日本・米国・中国・韓国の比較-」の結果が、臨時休校に揺れていた2020年5月に公表されました。
コロナ禍以前の調査という点は考慮すべきですが、2年前の時点で米中韓と日本の高校生には大きな差があります。
まず、「オンライン学習を経験している」と答えた高校生の割合は、韓国72.4%、米国70.8%、中国58.3%。一方、同じ設問に「経験あり」とした日本の高校生は48.8%と過半数をわずかですが下回り、4か国中最も低くなっています。
日本では私立学校や先進的な教育を実施している国公立学校を除くと、パソコンやタブレット端末を使用して授業や学習が行われる機会は全国的に少ない状況だったのです。
日本のICT教育はまだ黎明期
突然の臨時休校で学校も保護者も子どもたちも大いに困惑したことは記憶に新しいですが、コロナ禍によって学校教育の現場が混乱したのは日本だけではありません。
「2020年春時点でのオンライン学習の経験の差」という点で見れば、オンライン授業に即応できた国と、日本のように思うように進められなかった国に分かれてしまったのは無理もないことだったのでしょう。
では、なぜオンライン学習の経験値が低かったのでしょうか。
「オンライン学習をした経験がない」と答えた高校生にオンライン学習をしない理由をたずねたところ、特徴的だったのは、「親(保護者)が反対する」(2.7%)、「先生が反対する」(0.6%)という項目が、他の3カ国と比べて低いことです。
捉え方によっては「オンライン学習に対する偏見や悪い印象を持っている大人は多くない」とも考えられます。コロナ禍以前からICT教育に関する期待はあったのかもしれません。
一方、オンライン学習を経験したことのない日本の高校生があげた理由のうち最も多く、かつ4か国でも最多だったのが「どんなサービスがあるか分からない」(35.7%)でした。ちなみに、アメリカは30.0%、中国29.3%、韓国17.9%となっています。
オンライン学習に対する認知度を振り返ってみても、コロナ禍以前はメディアで大々的に取り上げられることも少なく、自分から調べない限りそうした情報は身の回りにありませんでした。
しかし、この1年で状況は一変。公的なものから民間のものまでオンライン学習の活用法やコンテンツの充実が進んでいます。また、ICT教育の整備には文部科学省をはじめ、教育分野での5G活用を掲げている総務省も関わるなど、国も本腰を入れて取り組み始めたと言えるでしょう。
学習の双方向性を高めていけるか
コロナ禍を発端に日本のオンライン学習が進展したわけですが、青少年教育振興会の調査結果からは課題も見えてきます。
オンライン学習経験のある高校生に対する設問で、「わからないことがあったら、オンライン上の先生やメンバーなどに質問する」への回答では、日本の高校生は「全くない」が61.3%。米国31.4%、韓国15.3%、中国6.0%と比べると、日本の高校生が受け身であることを如実に示されています。
また、「わからないことがあったら、周りの友達に聞いてみる」に関しても「全くない」が24.0%。中国4.6%、米国4.1%、韓国3.2%と比べてかなり多くなっているなど、日本では周りに頼らず(頼れず)自分で解決しようする高校生の割合が高いことが見て取れます。
コロナ禍でオンライン学習が定着してきた今こそ、学んでいる側から発言しやすくなるような取り組みはもちろんのこと、分からないことを1人で抱え込まず先生や周囲の助けも借りて解消することの大切さを伝えていくことも必要といえるでしょう。
参考資料
高校生のオンライン学習に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-(http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/145/)(独立行政法人 国立青少年教育振興会)
教育分野における5G活用ガイドブック(https://www.soumu.go.jp/main_content/000746678.pdf)(総務省)
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