【業種別】平均給与はいくら?男女・雇用形態別の賃金も確認
LIMO / 2021年11月17日 17時45分
【業種別】平均給与はいくら?男女・雇用形態別の賃金も確認
政府は2022年2月から、保育や介護、看護で働く人の収入を月3%程度、ひと月平均で5000円~1万2000円ほど引き上げる方針を固めたと報じられました。公的に処遇が決まる保育士や介護職員、看護師の賃金を引き上げることで、民間でも賃上げが進むことが期待されています。
国税庁が2021年9月29日に公表した「令和2年分(2020年)分 民間給与実態統計調査」によれば、平均給与は433万円(前年比0.8%減)。2010年(平成22年)の平均給与は412万円であり、それ以降400万円台前半で推移しています。
そのうち、保育士や介護、看護師などの「医療・福祉」分野では平均給与397万円(平均給料・手当342万円/平均賞与55万円)でした。では、その他の業種の平均給与はいくらでしょうか。業種ごとの男女・雇用形態別の賃金も確認していきます。
【業種別】平均給与(給料や賞与など)はいくら?
同調査より、業種別の平均給与について、多い順に見ていきましょう。
【業種別】平均給与(平均給料・手当/平均賞与)
全体平均:433万円(369万円/65万円)
電気・ガス・熱供給・水道業:715万円(569万円/141万円)
金融業、保険業:630万円(489万円/141万円)
情報通信業:611万円(497万円/114万円)
建設業:509万円(437万円/72万円)
学術研究、専門・技術サービス業教育、学習支援業:503万円(413万円/90万円)
製造業:501万円(410万円/92万円)
複合サービス事業:452万円(355万円/97万円)
運輸業、郵便業:444万円(390万円/54万円)
不動産業、物品賃貸業:423万円(375万円/48万円)
医療、福祉:397万円(342万円/55万円)
卸売業、小売業:372万円(323万円/49万円)
サービス業:353万円(314万円/38万円)
農林水産・鉱業:300万円(265万円/35万円)
宿泊業、飲食サービス業:251万円(239万円/13万円)
14業種中、今回焦点となった「医療、福祉」は10番目で約397万円。人の安全や命を守り、心身ともに重労働といわれる業種ですが 平均を下回ります。
最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の715万円。平均給与433万円を超えるのは8業種となりました。
給与段階別の割合でみると……
ではもう少し詳しく、給与段階別にみた構成割合で比べます。
まずは今回賃上げとなった「医療・福祉」の1年間の給与について、給与段階別の割合をみていきましょう。
【医療・福祉】平均給与・給与階級別の構成割合
平均:397万円
100万円以下:6.2%
100万円超 200万円以下:14.9 %
200万円超 300万円以下:18.1%
300万円超 400万円以下:23.9%
400万円超 500万円以下:17.5%
500万円超 600万円以下:9.1%
600万円超 700万円以下:3.7%
700万円超 800万円以下:2.1%
800万円超:4.5%
「医療・福祉」分野の平均給与で最も多いのが「300万円超 400万円以下」。一方で、200万円以下が21.1%とおよそ2割を占めています。
保育士や介護職員、看護師の中には非正規雇用で働く人も少なくありません。2021年11⽉8⽇に公表された財務省の「社会保障」によると、女性の介護分野職員の正規の職員・従業員は59万340人に対し、非正規は60万1920人。女性の介護分野職員は、非正規雇用のほうが多くなっています。
「医療・福祉」は女性や非正規の方が多いことが、賃金の低さにも影響しているでしょう。
他の業種に関して、「最も多い給与段階の割合」を比べてみましょう。
先ほどの業種別の平均給与トップ3ですが、平均給与800万円超が「電気・ガス・熱供給・水道業」では33.7%、「金融業、保険業」では25.0%、「情報通信業」では20.8%と、それぞれ最も多くの割合を占めています。
一方で、下位の業種で最も多い割合は「宿泊業、飲食サービス業」で「100万円以下」が28.4%、「農林水産・鉱業」で「100万円超200万円以下」が28.3%、サービス業で「200万円超 300万円以下」が21.5%。業種によってこれだけ差があることが分かります。
【業種別】男女別の正規・非正規の賃金は?
先ほど「医療・福祉」分野の女性と非正規の多さを指摘しましたが、国税庁の調査で正規・非正規の平均給与(男女別)は以下の通りです。
平均給与(正規/非正規)
平均給与:496万円/176万円
男性:550万円/228万円
女性:384万円/153万円
非正規の平均給与は、正規のおよそ3分の1。最も少ないのは女性の非正規で153万円です。
さらに詳しく見るために、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」から、業種ごとの男女・雇用形態別の賃金をみていきましょう。はじめの統計とは別なので分類が異なりますが、おおよそ平均給与が多い順と同じように並べます。
※「賃金」とは、6月分として支給された現金給与額のうち超過労働給与額(時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、宿日直手当、交替手当として支給される給与)を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額。
令和2年の平均賃金:男性(正規/非正規)・女性(正規/非正規)
金融業、保険業:48万9800円/31万6500円 ・28万9400円/21万1500円
情報通信業:40万7500円/35万8900円 ・32万8500円/23万5900円
建設業:34万8900円/30万600円・25万5000円/21万5400円
学術研究専門・技術サービス業:42万6200円/35万3000円 ・31万2300円/23万7200円
教育、学習支援業:43万9800円/32万6100円 ・32万900円 /23万2800円
製造業:33万1000円/22万8500円 ・24万1500円/17万1800円
運輸業、郵便業:29万2800円/21万6300円 ・24万1100円/18万4200円
医療、福祉:36万3200円/25万1200円・27万2200円/20万4100円
卸売業、小売業:36万円/22万1800円 ・26万4600円/17万9600円
生活関連サービス業、娯楽業:31万7700円 /20万3100円 ・24万2100円/18万1700円
サービス業(他に分類されないもの):30万4500円/22万6600円 ・24万6100円/20万9000円
宿泊業、飲食サービス業:29万400円/20万8700円・22万7000円/17万7500円
正規雇用では「男性で40万円・女性で30万円」を超えるのは、「情報通信業」「学術研究専門・技術サービス業」「教育、学習支援業」。非正規の男性でも、「金融業、保険業」「情報通信業」「建設業」「学術研究専門・技術サービス業」「教育、学習支援業」は30万円を超えます。
一方で、非正規の女性では10万円台の業種も一定数見られました。非正規の男性の方が、正規の女性より賃金が高い業種もみられます。この差は職種の違いなども関係してくるのでしょう。
給与が適正水準となるように
これまで見てきたように、業種別、また男女や雇用形態によっても平均給与や賃金が大きく異なることが分かりました。
日本人の平均給与がなかなか上がらないことは話題にのぼっており、理由についてもさまざまな議論がなされています。今回保育士や介護職員などの賃上げが決まりましたが、まだ適正水準とは言えないでしょう。医療・福祉を含め、その他の分野でも日本の給与が上がることを期待したいです。
参考資料
財務省「社会保障」(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211108/01.pdf)
国税庁「令和2年分(2020年)分民間給与実態統計調査」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf)
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html)
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