高騰するガソリン、価格変動のメカニズム。日本の需給は関係ない!?
LIMO / 2021年11月21日 18時45分
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高騰するガソリン、価格変動のメカニズム。日本の需給は関係ない!?
原油価格と為替レートは世界の需給と投機を反映してニューヨークで動き、それを受けて国内のガソリン価格が動いているのです(塚崎公義、経済評論家)。
ガソリン価格変動の主因は原油価格と為替レート
ガソリン価格が高騰しています。しかし、ドライブに行く人が急増したからガソリンの需要が盛り上がって値上がりした、ということでもなさそうです。実は、ガソリンの価格は国内の需給を反映して動くのではなく、海外の需給を反映してニューヨークで動いているのです。
ガソリンスタンドを運営している石油会社は、産油国から原油を輸入して精製して売っていますが、原油の輸入コストは原油価格と為替レートで決まります。
原油の価格はドルで決まりますから、価格が決まると石油会社は産油国にドルで輸入代金を支払います。そのためには、銀行でドルを買うわけですが、ドルの値段もやはりニューヨークで決まっているのです。
原油価格にドルの値段を掛けた金額が原油の輸入コストとなりますが、原油価格もドルの値段も比較的大幅に変動するので、原油の輸入コストは大きく変動します。今回は、原油価格が大幅に上がり、ドルの値段もやや値上がりしているため、日本の消費者にとってはダブルパンチとなっているのです。
実際のガソリン価格は、これに輸送コストや精製コスト、ガソリンスタンドの諸費用や「適正利潤」、ガソリン税、消費税などを上乗せして(元売りに補助金が出れば、その分は差し引いて)決まっていますが、こうした費用はそれほど大幅には変動しないので、結局ガソリン価格はニューヨークで動くということになるわけですね。
原油価格も為替レートもニューヨークで動く
原油を取引する市場がニューヨークにあります。そこには世界中の原油を売りたい人と買いたい人が集まり、「世界価格」が決まるわけです。そして、そこで決まった値段が世界中の石油取引で使われているのです。
実際には原油ではなく「原油の先物」というものが取引されています。これは、原油をすぐに渡すことはできないので、数カ月後に原油と現金を交換するという約束をして、その時の値段を決めているということなのですが、原油を取引しているのと同じことだと考えて良いでしょう。
原油ではなく先物が取引されていることによって、投機家たちも取引に参加しています。値上がりすると思えば先物を買い、現物を受け取る前に先物を売ってしまえば良いので、原油を保管する倉庫等が不要だからです。
したがって、たとえば産油国が「価格を釣り上げるために生産量を減らそう」といった合意をすれば原油価格は上がりますし、世界的な異常気象で電力消費量が増えそうだということになれば「発電のための原油需要が増えそうだから、原油は値上がりしそうだ」という思惑が広がり、原油価格が上昇するかもしれません。
こうして世界中の原油関係者や投機家等々の買い注文と売り注文がぶつかり合って、原油の価格が決まっているので、日本国内のドライブ需要が増えたか否かは、あまり関係がないというわけですね。
ドルについては、円とドルの交換比率に興味のある貿易関係者は日本人と米国人くらいでしょうから、原油と比べれば日本の事情が影響するわけですが、実際には世界中の投機家も取引に参加しているので、やはり世界価格なのです。
特に、米国の金融政策が為替レートに大きく影響するので、世界中の投機家たちが米国の金融政策に関する情報を収集しながらニューヨークで投機に励んでいます。
ところで、原油の取引が産油国ではなくニューヨークで行われている理由は、「皆がニューヨークで取引をしているから」ということのようです。原油を売りたい人は、ニューヨークへ行けば買い手がみつかると考えてニューヨークへ来るわけですが、それによって原油を買いたい人もニューヨークへ来るようになる、というわけですね。
このように、たまたまニューヨークで取引をしている人が多いと、皆がニューヨークへ来るので、ますますニューヨークに取引が集中するといったことは様々な場面で目にします。
たとえば東京が大都市なのも、仕事を探している人が東京へ来て、労働者を探している企業も東京へ来る、といったことがずっと行われているからなのですね。
日本国内の需給は反映しないのか
物(財およびサービス、以下同様)の値段は、需要と供給が一致するところに決まるというのが経済学の大原則です。そうであれば、日本国内のガソリンの価格は日本国内の需要と供給の関係で決まるはずなのですが、その点はどうなのでしょうか。
実は、確かに日本国内の需要と供給の関係で決まっているのですが、供給量が自由に動くので、需要の変動が価格に影響しにくいのです。
ガソリンスタンドは、上記のように決まるコストに「適正利潤」を上乗せした価格で販売しています。この値段で客が買いに来れば売るし、買いに来なければ売らないというわけですね。
つまり、価格を先に決めて、その価格に見合った需要と同じ量に供給を合わせているので、常に需要と供給は一致しているのです。
野菜などは腐りやすいため、「買い手が少ないから販売量を減らす」ということが難しいので、買い手が少ないと値下げをする売り手が多いわけですが、ガソリンは腐らないので「コスト+適正利潤」を下回る値段で売る必要がないわけですね。
強いて言えば、需要が強ければ売り手が強気になって、「適正利潤」を多めに上乗せするかもしれないといった程度のことは起きているようですし、場合によっては売り手同士が客を奪い合う競争によって値下げ競争が発生することもあるようですが、値下げ競争の話は別の機会に。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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