女性には厳しい面も?2022年10月よりパートの社会保険適用の拡大、子育て世帯のメリットとは
LIMO / 2021年11月21日 11時25分
女性には厳しい面も?2022年10月よりパートの社会保険適用の拡大、子育て世帯のメリットとは
2022年の社会保険に関わる変更として覚えておきたいのが、社会保険の適用が拡大されることです。これまでパートの方でも従業員501人以上の企業に勤め、一定要件を満たせば社会保険へ加入できましたが、2022年10月より従業員数が101人以上の企業へと変更されます。
社会保険については、あえて加入しない選択をされている方もいるでしょう。特に子どもが乳幼児でお世話が大変だったり、小学生で平日に習い事や塾の送り迎えがあったりすると、働き方をセーブされる方が多いものです。
女性が社会保険へ加入することで、特に子育て世帯にはどのようなメリットがあるのでしょうか。社会保険適用の拡大の条件を改めて確認しながら、そのメリットをみていきます。
社会保険適用の拡大。その条件は?
2022年10月より、従業員101人以上の企業で働く方で、一定要件を満たせば社会保険(厚生年金保険・健康保険)へ加入できるようになりました。パートの方が厚生年金に加入できる一定要件を見てみましょう。
週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれること
賃金の月額が8万8000円以上であること
学生でないこと
さらに2024年10月より、従業員数51人以上の企業へと拡大される予定です。
社会保険に加入すれば、厚生年金保険料・健康保険料を支払うことになります。その分手取りが減るため、収入によっては社会保険への加入をデメリットに感じる人もいます。特に育児や家事に忙しく、長時間働けない女性は悩むところでしょう。
社会保険への加入、子育て家庭のメリットは?
さまざまな意見があるパートの社会保険への加入ですが、子育て中の女性にとってはメリットもあります。3つほど確認しましょう。
将来の年金額(老齢年金)が増える
厚生年金に加入すれば、国民年金(基礎年金)に上乗せして厚生年金も受け取れるようになります。「今の生活が大変なのに、老後のお金まで考えられない」という方もいるでしょう。一方で、今は年金のみでは老後生活できないとも言われています。
参考までに、厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」から、今のシニア世代のひと月の国民年金と厚生年金の受給額を比べましょう。
国民年金・厚生年金のひと月の平均受給額
国民年金:全体平均5万5946円(男性平均:5万8866円・女性平均:5万3699円)
厚生年金:全体平均14万4268円(男性平均16万4770円・女性平均:10万3159円)
20歳以上60歳未満の方は原則加入する国民年金の場合、平均はひと月5万5964円。一方で会社員や公務員、条件を満たしたパートの方が加入する厚生年金は、男女でおよそ6万円もの差があります。
厚生年金は加入期間や収入額に応じて受給額が異なります。育児や介護で離職したり、扶養内で働かれたりすることが多い女性の場合、男性より年金額は低くなります。年金のみでは生活できないと実感できる数字でしょう。
今の収入額が、将来の年金額まで影響することは、特に女性は知っておくといいでしょう。
「もしもの時」の備えが手厚くなる
先ほどの老齢年金以外に、「障害年金」「遺族年金」も手厚くなります。国民年金(基礎年金)のみの方は「障害基礎年金」「遺族基礎年金」のみでしたが、厚生年金に加入すれば「障害厚生年金」「遺族厚生年金」へも加入できます。
子どもがいる女性の場合、「もしもの時」の備えが手厚くなると心強いでしょう。
傷病手当金や出産手当金など保障が手厚い
健康保険へ加入すれば、病気やケガをして仕事を休む場合でも条件に当てはまれば「傷病手当金」がもらえます。支給されるのは以下の4つの条件をすべて満たした場合です。
業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である
仕事に就くことができない
連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
休業した期間について給与の支払いがない
病気やケガの療養のために仕事を休んだ日から、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して給与の3分の2相当が支給されます。最長で支給開始日から1年6ヵ月受け取れます。
人間、誰しも病気のリスクを抱えています。育児中の女性が病気をすれば、治療費だけでなく子どもを預ける必要があるなど、意外とお金がかかるもの。病気の際でも収入が途絶えないのは心強いでしょう。
その他に、「出産手当金」も貰えるようになります。出産手当金は「出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)~出産日の翌日以降56日」まで、会社を休み給与の支払いがなかった期間に支払われます。こちらも金額は給与の3分の2相当です。
子どもがいる家庭の場合、教育費や住宅ローンにお金がかかり、なかなか老後資金にまで手がまわらない場合もあるでしょう。「もしもの時の備え」である貯蓄や保険が準備しきれていない家庭もあります。上記の3点で考えればメリットと言えるでしょう。
一方で、家庭内のデメリットも……
一方で、手放しで喜べないという方もいるでしょう。特に乳幼児や小学生のお子さんがいる家庭では、育児を主に担う女性が働く時間を増やすのは、心身ともに厳しいところがあります。
乳幼児はお世話が大変ですし、小学生でも宿題を見たり、平日の習い事や塾の送り迎えをしたりするため、あえてパートタイムで働く女性は多いです。「手取りが減るから働く時間を増やしたいけど、体力が持たない……」というのが本音の方もいるのではないでしょうか。
2021年10月19日に公表された、明治安田生命が0歳から6歳までの子どもがいる既婚男女1100人(うち女性550人)に行った「子育てに関するアンケート調査」によれば、子育て中の女性の収入は163万円というデータもあります。
同調査では、専業主婦で働く意欲のある方はおよそ8割。一方で働けない理由として、「実家が遠方にあるため、周りに助けてもらえないため」(26.2%)という環境の問題、「体力面に不安があるため」(22.4%)という自身の体力の問題、「保育園が見つからないため」(21.3%)や「保育園以外で預け先がないため」 (20.2%)という預け先の問題など、さまざまな問題がみられます。
女性が働く時間を増やす場合には、男性側の協力はもちろんのこと、こういった面での体制を整える必要があります。
ただ、これらの問題で悩みやすいのは子どもが乳幼児~小学生の間でしょう。中学生になれば教育費のために働く時間を増やしたい方、老後が近づいてきて貯蓄を増やしたい方などもいます。
各家庭に合った働き方を
家庭によって環境や事情は異なるもの。働く時間や社会保険への加入については、無理のない範囲で、「わが家ではどうするか」を相談すると良いでしょう。今は難しくても、「子どもが入園・入学したら」「小学校高学年になったら」など、段階的に計画を立ててみてはいかがでしょうか。
参考資料
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/)
全国健康保険協会「出産手当金について」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/)
明治安田生命「明治安田生命 子育てに関するアンケート調査を実施 」(https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2021/pdf/20211019_01.pdf)
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