児童手当の創設は1972年。共働き世帯数や児童手当の現状を振り返る
LIMO / 2021年11月21日 11時45分
児童手当の創設は1972年。共働き世帯数や児童手当の現状を振り返る
18歳以下の子どもに10万円相当の給付を行う支援策で、所得制限が960万円となり、世帯合算ではなく夫婦どちらかの年収になると報じられました。この所得制限は児童手当を参考にしたもの。2021年11月18日には公明党の北側中央幹事会長が記者会見にて、児童手当の世帯合算に対して否定的な見解を述べたと報じられています。
児童手当が創設されたのは1972年(昭和47年)。当時は父親のみが働く世帯が多かったですが、今は共働き世帯が専業主婦世帯のおよそ2倍です。
児童手当の所得制限は世帯年収が良いのでしょうか、それとも所得制限自体が必要なのでしょうか。共働き世帯数や児童手当について現状を振り返ります。
共働き世帯数が上回ったのは1990年代
内閣府の「平成29年10月25日財政制度等審議会資料(抜粋)『子ども・子育て支援』」によると、児童手当制度の創設は1972年(昭和47年)。当時は父親が家計を支えている世帯が多かったこと等を踏まえ、世帯全体ではなく、世帯の中で所得が最も多い者(主たる生計者)の所得で判定されることになりました。
同資料では、現代は共働き世帯が専業主婦世帯のほぼ2倍であり、世帯合算で判断する仕組みに変更すべきではないかとされています。実はこの時点で、世帯合算にすべきではという案は出ているのですね。
総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」によると、1980年は専業主婦世帯が1114万世帯・共働き世帯が614万世帯でした。しかし1990年代には入れ替わり、2020年は専業主婦世帯が571万世帯・共働き世帯が1240万世帯。ここ20年ほどは共働き世帯が主流なのです。
厚生労働省の「国民生活基礎調査(2019年)」をみると、児童のいる世帯の母で仕事をしているのはおよそ7割。雇用形態もあわせて割合を確認しましょう。
児童のいる世帯における母の仕事の状況(2019年)
仕事あり:72.4%
正規の職員・従業員:26.2%
非正規の職員・従業員:37.8%
その他:8.5%
仕事なし:27.6%
正規職員・従業員は26.2%、非正規職員・従業員は37.8%。仕事をしていない3割弱の中には、子どもがまだ小さかったり、夫の多忙や実家が遠方でワンオペ育児だったり、子どもの人数が多かったり、持病を抱えていたりなど、それぞれ事情がある家庭もあるでしょう。
児童手当、2022年秋には年収1200万円以上で廃止
今回話題となった児童手当について、内容を再確認しましょう。
児童手当の月額
3歳未満:一律1万5000円
3歳以上小学校終了前:1万円(第3子以降は1万5000円)
中学生:一律1万円
児童手当には所得制限があり、夫婦どちらかが以下の金額以上の場合、特例給付で「児童1人当たり月額一律5000円」となります。
【児童手当の所得制限】扶養親族等:所得制限限度額・収入額の目安
0人(前年末に児童が生まれていない場合等):622万円・833.3万円
1人(児童1人の場合等):660万円・875.6万円
2人(児童1人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等):698万円・917.8万円
3人(児童2人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等):736万円・960万円
4人(児童3人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等):774万円・1002万円
5人(児童4人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等):812万円・1040万円
モデル世帯となるのが「夫と専業主婦、子ども2人の家庭」で、年収960万円以上が所得制限の対象になります。そもそもこのモデル世帯についても、共働きが多い現代では議論されるべきかもしれません。
さらに2022年10月分からは、夫婦どちらかが年収1200万円以上の場合には児童手当が廃止されます。
児童手当に所得制限は必要か?
今回の10万円相当給付をもとに、児童手当の所得制限についてはさまざまな意見が出ました。世帯年収にすべきという声もあれば、そもそも児童手当に所得制限は必要なのかという疑問もあるでしょう。
財務省の「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」によれば、「所得控除から手当へ」などの観点から、子ども手当(平成24年から児童手当へ変更)の創設とあいまって、0~15歳の年少扶養親族への扶養控除を廃止したとのことです。
扶養控除は、控除対象扶養親族の中でも年齢などにより区分が分けられています。たとえば「一般の控除対象扶養親族」は16歳以上、「特定扶養親族」は19歳以上23歳未満、老人扶養親族は70歳以上(※いずれもその年12月31日現在の年齢)。0~15歳は扶養控除の対象ではありません。こういった面からみても、改めて児童手当の大切さが分かります。
今回の10万円相当給付の所得制限がなければ、児童手当が世帯合算ではない点についてここまで議論されなかったでしょう。時代に合わせて世帯合算が良いのか、そもそも所得制限は必要なのか、今後もその議論の動向を見つめたいと思います。
参考資料
内閣府「平成29年10月25日財政制度等審議会資料(抜粋)『子ども・子育て支援』」(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_32/pdf/s4.pdf)
独立行政法人労働政策研究・研修機構「図12 専業主婦世帯と共働き世帯」 (https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html)
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)
内閣府「児童手当制度のご案内」(https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html)
財務省「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/047a.htm)
国税庁「No.1180 扶養控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm)
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