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私立大学はこんなにいらない!? 定員割れ増加で淘汰が当たり前の時代に

LIMO / 2021年11月24日 18時35分

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私立大学はこんなにいらない!? 定員割れ増加で淘汰が当たり前の時代に

昨年来のコロナ禍で、大学では入学式の中止やオンライン授業対応、さらに罹患受験生の受験機会の確保など、様々な対応に追われる1年になりました。

その一方で、センター試験に代わる新しい入学試験「大学入学共通テスト」が2021年度の大学入学者選抜からスタート。そして早くも新たな受験シーズンが到来しようとしています。

近年の大学入試では大都市圏への若者流入を抑えるため、文部科学省が私立大学の定員厳格化を実施。そのため「確実に合格する」という心理が働き安全志向が進みました。そうしたなか、継続的な若年層人口の減少で、近い将来、多くの私立大学で定員割れが深刻化すると危惧されています。

大学進学率の上昇でもカバーできない人口減少

文部科学省が今年6月30日に開いた「大学入試のあり方に関する検討会議」における資料、「大学入学者選抜関連基礎資料集」によると、18歳人口は2020年度に117万人。これが2021年度は114万人、2022年度は112万人と減少していくことが予測されています。

一方、大学の入学定員に目を向けると、2000年度は国立大学9万7297人、公立大学2万1792人、私立大学41万6356人。ちなみに、2000年度の18歳人口は151万人でした。

これに対し、2020年度は国立大学9万5528人、公立大学3万1946人、そして私立大学49万1396人。20年間で公立大学が約1万人、私立大学では7万人以上も定員が増加しています。

18歳人口が大きく減っているなかで募集定員が増えていることは、大学を選ばなければ容易に進学できる、いわゆる全入時代に突入していることを意味しています。

実際、私立大学を中心に新設大学や募集定員が増えたこともあり、2020年度の大学進学率は54.4%と過去最高になりました。昭和の頃よりも大学入学のハードルが低くなっているわけですが、喜ばしいことだけではありません。

今後急速に18歳人口が減少していくのは確実なため、このままでは定員割れの大学や学部学科が続出するのは時間の問題。すでに厳しい現実に直面する私立大学は確実に増えています。

平成30年間で増え続けた大学

大学の増加は高度経済成長期からバブル期にかけてもみられました。文部科学統計要覧で大学数の変化をみると、1955年度から1990年度までの35年間で大学の数は全体で2倍以上、私立大学では約3倍に増えています。

この間、国内のライフスタイルや進学に対する考えがガラリと変わったことや、1980年代後半からは18歳人口が右肩上がりで、特に1990年代前半は団塊ジュニア世代に当たる18歳人口が200万人前後で推移していたこともあり、大学や学部学科の新設は自然な流れだったといえるでしょう。

しかし、その後は若年層の人口減少が続いているなかでも大学の新設は続きました。2020年度の大学数は全体で1990年度の1.5倍強、私立大学は約1.7倍。進学率が上昇しているとはいえ、平成の30年間でかなり大学数が増えていることが分かります。

1955年度:228校(国立72校・公立34校・私立122校)

1990年度:507校(国立96校・公立39校・私立372校)

2020年度:795校(国立86校・公立94校・私立615校)

定員割れが進む私立大学、地方では特に厳しい状況

次に、定員割れの現状をみてみましょう。日本私立学校振興・共済事業団が今年9月に発表した「令和3(2021)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、入学定員充足率が100%未満、いわゆる定員割れしている私立大学が集計対象の半数近い46.4%にあたる277校に上りました。

前年度の同調査では184校(31.0%)だったことを踏まえると、1年で急激に定員割れが進んだことが見て取れます。入学定員数ごとの充足率の増減では、3000人以上の大学では前年度をわずかに上回っていますが、3000人未満では軒並み前年度より充足率が悪化している状況です。

また、全国を21の地域に区分した結果では、前年度からの充足率の低下が大きかった地域は以下のようになっています。

    近畿(京都府・大阪府・兵庫県を除く):105.70%→93.54%(△12.16)

    中国(広島県を除く):97.25%→87.91%(△9.34)

    北陸:106.93%→97.65%(△9.28)

このように、人口減と直面している地方の私立大学は厳しい状況に置かれていますが、大都市圏も安泰ではありません。東京都が101.16%→100.80%(△0.36)、大阪府で105.60%→103.74%(△1.86)と、たとえ定員割れが起きていなくても、京都府を除く全ての地域で前年よりも充足率が減少しているのです。

人口動態からみても、何もしなければ定員割れが加速するのは時間の問題。そのため各大学の入学者集めが熱を帯びると予想されます。とはいえ、安易に合格手形を出すと入学者の学力や大学のレベルを下げることにつながりかねません。下手をすると大学の評価を落としかねないので、長期的な改革プランを立てることが急務となっています。

人口減でも大学進学率が上昇していることもあり、人気のある大学に志願者が集中する二極化も進んでいます。受験生が学びたいと思うようなカリキュラムや学部学科の再編成をしていかなければ生き残れない厳しい時代になっていると言えるでしょう。

参考資料

大学入学者選抜関連基礎資料集 第4分冊(https://www.mext.go.jp/content/20210629-mxt_daigakuc02-000016365_7_1.pdf)(文部科学省)

文部科学統計要覧 令和3年版(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1417059_00006.htm)(文部科学省)

令和3(2021)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向(https://www.shigaku.go.jp/files/nyuugakusiganndoukoudaitan0928.pdf)(日本私立学校振興・共済事業団)

※私立大学の校数について、文部科学省では募集停止している大学を含めてカウント、日本私立学校振興・共済事業団では募集している学校のみカウントしている。

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