2022年パートの厚生年金適用の拡大。老後から女性の年金について考える
LIMO / 2021年11月26日 11時45分
2022年パートの厚生年金適用の拡大。老後から女性の年金について考える
2022年10月、パートの方の厚生年金の適用が拡大されます。これまでは従業員数501人以上の企業に勤め、一定要件を満たしたパートの方が厚生年金に加入できましたが、2022年10月より従業員数101人以上へと拡大されることになります。
パートで働く方の中には、社会保険料を払うことで手取りが減るため、収入をおさえた働き方をしている女性もいるでしょう。2022年の適用拡大についても、ご家庭の事情によって加入される方、加入しない方など分かれるでしょう。
社会保険の加入についてはメリット・デメリットがそれぞれありますが、老後から考えるとどうでしょうか。特に女性の老後に視点をあてて考えましょう。
2022年10月より、パートの厚生年金の適用が拡大
2016年10月から、パートの社会保険の適用拡大が実施されています。
2022年10月からは、従業員101人以上の企業で働く方で、下記の一定要件を満たせば社会保険(厚生年金保険・健康保険)へ加入できるようになりました。一定要件の内容を確認しましょう。
週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれること
賃金の月額が8万8000円以上であること
学生でないこと
さらに2024年10月からは、従業員数51人以上の企業へと拡大される予定です。
この社会保険の適用拡大を受けて、さまざまな意見があがっています。育児や介護をしているご家庭では、「長時間働きたくても働けない」方も多いでしょう。
乳幼児のお世話は大変ですし、風邪を引くことの多い子どもの看病や習い事の送迎、行事への参加などで、長時間仕事ができない女性は多いものです。
長時間仕事ができないとなると、社会保険への加入は悩みどころでしょう。
老後の年金額に男女差。離婚後に気付くリスクも
社会保険加入のメリットの一つは、「将来の年金額が増える」こと。老後は年金のみで生活できないと言われる現代において、将来の年金額を増やすことは大切です。
厚生労働省年金局の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」を参考に、今のシニア世代が受給しているひと月の年金の平均額について確認しましょう。
国民年金の平均月額:5万5946円
男性:5万8866円・女性:5万3699円
厚生年金保険(第1号)平均月額:14万4268円
男性:16万4770円・女性:10万3159円
国民年金のみの場合、女性の平均月額は5万3699円。一方で、厚生年金は10万3159円です。
厚生年金を男女別でみると、およそ6万円もの差があります。厚生年金は、加入月数や収入に応じて受給額が異なるもの。女性は育児や介護のために離職したり、扶養内で働かれたりする方が多いのが一因でしょう。
育児や介護を担うと、実際に長時間働くのは難しいものです。今は実家が遠方で頼れる人がいないご家庭や、1人で育児を担うワンオペ育児のご家庭も多いでしょう。働けないのは仕方ないものの、現役時代の収入が将来の年金額に繋がることまで考えたことがなかった、という方は多いのではないでしょうか。
夫婦であれば、将来の年金も2人分になります。しかし離婚した場合には、女性は自分の年金で老後生活することになります。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集 2021年版」によると、50歳時の離別割合は10.18%。離婚した女性は離職をするなどキャリアダウンされる方も多いので、離婚してから自分の年金の少なさに驚くこともあります。
ちなみに離婚時には基本的に年金分割ができるので、離婚をした日の翌日から2年以内には手続きを行いましょう。
人生何が起こるかはわかりません。女性はライフイベントの変化が収入に影響されやすいので、それが老後の年金にまで影響することは知っておきたいものです。
収入の差も、年金額の違いに?
年金額の差には、男女の収入の違いも考えられます。
「令和2年分(2020年)分 民間給与実態統計調査」によれば、日本人の平均給与は433万円。これを男女別でみると、男性は532万円、女性は293万円。男女の平均給与は239万円もの差があります。
これらの要因で女性の年金額が低い傾向にあることは、できれば働き方を考えられる30~40代のうちから知っておきたいものです。
ちなみに先ほどの年金の受給額は、今のシニア世代のものです。働く世代が受給するころには、少子高齢化などの影響もあり下がる可能性があります。
つみたてNISAやiDecoで準備するにも、元手が必要
厚生年金に加入すれば、公的年金の金額は増えることが考えられます。しかし年金だけでは到底生活できないとなると、他のもので準備する必要があります。
老後資金を準備するには、貯蓄と同時に資産運用が有効でしょう。たとえば運用益が非課税になるつみたてNISAやiDecoがあります。
つみたてNISAは一定条件を満たした投資信託の中から、自分で選んで毎月積み立てていくもの。通常は配当金や分配金、譲渡による利益に20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAなら毎年40万円まで、最長20年間非課税です(非課税投資枠は最大総額800万円)。運用なので元本保証はありません。
iDeco(個人型確定拠出年金)は20歳以上60歳までの方が対象で、元本確保型商品や投資信託の中から自分で選んで運用する私的年金です。運用益が非課税で再投資されるというメリットがあります。
また、毎月の掛金が所得控除になり、節税効果があります。受け取り時には年金なら公的年金控除、一時金なら退職所得控除の対象となります。一方で投資信託は元本割れのリスクがありますし、60歳までは原則引き出し不可です。
貯蓄やつみたてNISA、iDecoといった方法で老後資金を準備する必要性は高まっています。しかしこういったもので準備するにも、もとでとなる収入が必要です。教育費や住宅ローン、塾費用などで精一杯だと、老後まで準備できないご家庭もあるでしょう。
人生のいずれかの段階において、女性も収入を増やす必要性は高まっていると考えられます。
まとめにかえて
まずは今、日々の生活が大切です。ただ長い人生と考えると、今後は女性も収入を増やす必要性はあるでしょう。離婚や夫の病気やリストラなど、トラブルが起こる可能性もあります。
すぐには厚生年金に加入しなくても、制度の変更を機に、これからの働き方や老後のお金について考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)
厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/)
国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集 2021年版」(http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2021.asp?chap=0)
国税庁「令和2年分(2020年)分民間給与実態統計調査」調査結果報告(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf)
金融庁「つみたてNISAの概要」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/overview/index.html)
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト【iDeCoってなに?「iDeCoの特徴」】(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/)
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