【贈与税の大改革】年内から考えるべき対策とは?
LIMO / 2021年12月5日 18時15分
【贈与税の大改革】年内から考えるべき対策とは?
日本では親や祖父母から子どもなどへお金を贈与する場合に「贈与税」が課せられます。しかし、現在の「暦年課税制度」では基礎控除があるため、受贈者ごとに110万円の贈与分までは贈与税が非課税となります。
ただし、この暦年課税制度は、近いうちに見直しが行われるかもしれません。今回は、暦年課税制度と今後の改正予定について解説します。今からできる対策について一緒に考えていきましょう。
そもそも暦年課税とは?
日本における贈与税額は、贈与する財産の金額によって税率が変わる仕組みとなっています。まずは、現在の暦年課税制度の贈与税の計算方法について、チェックしてきましょう。
<贈与税の計算と税率(暦年課税)>
その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産の価額を合計する
その合計額から基礎控除額110万円を差し引く
その残りの金額に税率を乗じて税額を計算する(定められた金額を控除後、税率は10%~最大55%)
この計算方法からも分かるように、暦年課税では、贈与の金額に関わらず110万円の基礎控除をすることができます。つまり、110万円までなら、子どもや孫にお金をあげたとしても贈与税は実質かかりません。
暦年課税制度を活用した相続税対策
現在の暦年課税制度は、毎年、受贈者ごとに110万円の贈与分までの贈与税が非課税です。この暦年課税制度の110万円の基礎控除を活用すると、子どもや孫への相続財産を減らせるというメリットがあります。
たとえば、孫が生まれてから20年間、資産家の祖父が継続的に毎年110万円を贈与した場合、2200万円(110万円×20年間)を非課税で贈与することが可能です。
もしもこの資産家の祖父に孫が5人いたとすると、合計で1億1000万円(2200万円×5人)もの相続財産について、非課税とすることができます。
現在の贈与税の制度では、直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳以上の子や孫などへの贈与の税率は、4500万円を超えた贈与分については、決められた金額を控除後に55%の税率が課されてしまいます。しかし暦年課税制度の110万円の控除を効率的に活用することで、大きな税金対策につながることが分かります。
ただし、暦年課税制度では、毎年同じ時期に同じ金額を贈与していると、あらかじめ贈与する金額が決まっていたと見なされて一括で贈与税がかかる場合があります。そのため、相続税対策をする際は「贈与契約書」を作成し、毎年贈与する金額を変えたり、贈与するタイミングをずらしたりと、工夫しながらお金を渡しているご家庭が多いようです。
暦年課税が見直しされる
110万円の基礎控除が認められている現在の日本の暦年課税制度ですが、実は、制度自体の見直しが検討されています。近々、この110万円の基礎控除がなくなる可能性があるのです。
自由民主党と公明党が発表した「令和3年度税制改正大綱」には、次のような記述があります。
「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」
現在、国では贈与や相続のタイミングに関わらず、より平等に税金を払う制度に改正することを検討しています。そのため、110万円の基礎控除がなくなったり、贈与者が亡くなった際には生前贈与としてもらったお金と全ての相続財産を合わせてまとめて相続税が課せられるようになるなどの、制度変更が行われるかもしれません。
私たちが今からできる対策とは?
残念ながら、いつから、どのように暦年課税制度が改正されるのか、今のところ多くの情報は分かってません。
ただし、一般的に税制が改正されたとしても、過去分についてまで遡及される例は少ないと言われてます。そのため、暦年課税制度についても、今後税制改正が行われるとしても、税制改正前に行われた過去分の贈与については、遡ってまで税金が課される可能性は低いと考えられます。
現在、少しでも相続税対策をしたいと考えている方は、令和3年のうちに、孫や子どもなどに早めに110万円までの贈与を行ってしまうのがおすすめです。また、令和4年になってからも、早々に贈与を行っておく方が、安心だと考えられます。
子どもや孫など多人数に一気に110万円ずつ渡すことができれは、短い期間でも大きな節税対策につながります。税制が変わってしまう前に、110万円の基礎控除を活用しておきましょう。
いかがだったでしょうか。日本のスタンダードとして長らく運用されていた暦年課税制度ですが、基礎控除がなくなるかもしれない、相続税との一体化されるかもしれないなど、大きな税制改革が検討されています。
今回ご紹介した内容を参考にしながら、今後の制度変更のニュースにアンテナを張り、引き続き上手に税金対策を行っていきましょう。
参考資料
国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
国税庁「No.4155 相続税の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)
自由民主党公明党「令和3年度税制改正大綱」(https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200955_1.pdf)
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