厚生年金に統合後の「公務員の年金」しくみを分かりやすく解説
LIMO / 2021年12月5日 11時45分
厚生年金に統合後の「公務員の年金」しくみを分かりやすく解説
偶数月は年金の支給月ですね。公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」から成り立ちます。このうち厚生年金は「被用者年金」ともよばれ、民間企業や官公庁につとめる人が加入するものです。
被用者年金の一元化によって、公務員と会社員で異なっていた年金制度が厚生年金に統一されました。それまで、公務員の年金制度には優遇があり、不公平と言われてきましたが、一元化によって、年金制度の公平性が確保されました。
どのように変わったのか、公務員の年金制度を分かりやすく解説します。
共済年金と厚生年金の比較
国家公務員や地方公務員、私立学校教職員などが加入する年金制度が共済年金です。これまで共済年金は、厚生年金よりも保険料率が低かったり、職域加算という上乗せがあったりと、厚生年金より優位な制度となっていました。
こうした不公平を是正するために、2015年10月から、「被用者年金の一元化(以下、「一元化」とする)」によって、共済年金が厚生年金に統一されました。どのように変わったのか、図で確認してみましょう。
日本の年金制度は「3階建て」などといわれています。1階部分は全国民が対象となる基礎年金(国民年金)、2階部分は厚生年金や共済年金にあたる被用者年金、3階部分は企業年金などのさらなる上乗せ年金です。
一元化前は、公務員は職域加算という厚生年金にはない上乗せの年金が支給されていましたが、一元化後は、この部分が「年金払い退職給付」となり、2階部分は厚生年金に統一されました。
「年金払い退職給付」とは
職域加算の代わりに、新たに設けられた「年金払い退職給付」は、民間の企業年金に相当するものです。
有期年金(10年または20年)と終身年金の2つで構成され、原則65歳からの支給となります。(60歳から70歳の間で選択することも可能です)
有期年金部分は一時金として受け取ることもできます。受給者本人が亡くなった場合、終身年金は終了し、有期年金の残り(未支給年金)は、遺族に一時金として支給されます。
職域加算と年金払い退職給付の大きな違いは財政運営です。公的年金の一部である職域加算は賦課方式ですが、年金払い退職給付は積立方式となります。
賦課方式・・・現役世代の保険料収入をその時代の年金受給者への年金の財源にする方法
積立方式・・・将来、自分が受給する年金を自分が現役時代に積み立てておく方法
一元化前までの共済年金は、支払った保険料で、1階から3階部分の職域加算までの給付を受けられましたが、一元化後は、保険料は1、2階部分に充てられ、3階部分の年金払い退職給付は新たに保険料の負担が発生します。(労使あわせて1.5%上限。従来の保険料率に加算される)
共済年金と厚生年金の制度の違い
年金には老齢年金(退職年金)、障害年金、遺族年金の3つがあります。
それぞれ、支給要件に違いがあり、共済年金と厚生年金でも要件が異なっていました。一元化によって、基本、厚生年金に揃えられることとなり、制度が簡素化されました。
大きな違いとしては、これまで共済年金には加入時の年齢制限がありませんでしたが、一元化によって70歳までとなった点が挙げられます。
また、年金受給者が亡くなった場合、受け取る権利がある年金のうち支給されなかった年金は、共済年金では遺族、または遺族がいなければ相続人が受け取ることができましたが、厚生年金に揃えることで3親等内の親族に限定されました。
逆に厚生年金に揃えることで、規定がなくなるケースもあり、障害年金受給者が仕事をした場合の在職支給停止は廃止されています。
一元化「前後」にまたがる人の年金はどうなるの?
<一元化前に退職共済年金を受給している人>
一元化前(2015年10月前)に65歳以上で、すでに共済年金を受給している人は引き続き職域加算を含む退職共済年金を受給することができます。
<一元化前に共済年金の加入期間があり、一元化後に受給権を得る人>
2015年10月前に共済年金に加入していた期間が1年以上あり、2015年10月以後に年金の受給権を取得する人は、加入期間に基づいた経過的職域加算および年金払い退職給付が厚生年金に上乗せされて支給されます。
窓口が一つに(ワンストップサービス)
一元化前までは、共済年金に関する相談や届出は各共済組合に、厚生年金に関する相談や届出は日本年金機構に分かれていましたが、一元化により、年金事務所と共済組合が情報共有を行うことで、すべての窓口で対応が可能となりました。
届出はいずれか一方の実施機関に提出することになります。年金相談は、どちらの機関でも対応可能ですが、年金事務所で対応できる相談は厚生年金に関するものに限られ、一元化前に権利が発生した共済年金に関する相談は行えません。
公務員が老後に備えるために
共済年金は厚生年金に統一されたことで、保険料率は厚生年金に揃える形で上がり、職域加算は廃止となりました。新しく「年金払い退職給付」が新設されましたが、保険料の負担が新たに発生しています。以前の公務員に比べて、年金に関する状況は厳しくなったといえます。
現在公務員として働いている人、これから公務員を目指す人は、個人型確定拠出年金(イデコ:iDeCo)やつみたてNISAなども活用して将来に備えてもよいでしょう。
参考資料
国家公務員共済組合連合会「被用者年金一元化パンフ」(https://www.monkakyosai.or.jp/kouhou/pdf/hiyoushanenkin_ichigenka.pdf)
日本年金機構(和歌山東年金事務所)被用者年金一元化法(http://www.nenkin.go.jp/info/torikumi/chiikikaigi/wakayama.files/5-3.pdf)
KKR-国家公務員共済組合連合会「年金」(https://www.kkr.or.jp/nenkin/q_and_a/jukyu/shikumi/ichigenka/faq_0092.html)
厚生労働省年金局年金課「被用者年金の一元化について」(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000105806.pdf)
私学事業団 私学共済事業(共済業務)「被用者年金制度の一元化等について」(https://www.shigakukyosai.jp/ichigenka/)
公立学校共済組合「被用者年金制度の一元化」(https://www.kouritu.or.jp/content/files/topics/kumiai/h27ichigenka/h2609_11-14_tokushu_ichigenka.pdf)
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