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猫も飼い主が気になる?猫の位置把握の仕組みとは

LIMO / 2021年12月13日 17時30分

猫も飼い主が気になる?猫の位置把握の仕組みとは

猫も飼い主が気になる?猫の位置把握の仕組みとは

2021年11月10日に、医学・科学分野の査読つき論文誌”PLOS ONE”に掲載された、猫に関する実験を含む論文” Socio-spatial cognition in cats: Mentally mapping owner’s location from voice”が話題になっています。

この研究は高木佐保氏(麻布大学獣医学研究科 学振SPD)を筆頭著者としており、猫が「音声が聞こえた位置」をどう認識しているかを検証したもので、猫の生態研究解明の一つとして話題となりました。

今回は、実際に該当論文を読んだ上で実験の概要を解説しています。同種の研究への参加方法もご紹介しますので、猫を飼われている方で興味がある方はぜひご検討ください。

実験の概要について

今回の実験については、動物のsocio-spatial cognition(社会空間認知)をテーマとしています。これは、具体的にはある動物の中において、他の群れのメンバーや捕食者、獲物などといった、様々な立場の生物の居場所をどのように認識しているか、について実験を通して解き明かすということです。

今までの研究は「視覚」……つまり、目の動き方や映像を用いて、これらの認識が研究されてきていましたが、今回の実験では「猫の聴覚」を使って研究したのが新しいポイントになります。

実験では、実験に参加した猫が慣れ親しんだ空間(その猫が住んでいる家または猫カフェ)を用いて行われました。つまり、猫がどこかの実験室に連れ出されたわけではなく、「猫が暮らしているいつもの場所」で実験しています。

そのいつもの部屋の内外に、スピーカーやカメラを設置して、猫の行動を記録する形式です。

1つめのスピーカーは猫が慣れ親しんでいる部屋の外、2つめのスピーカーはその部屋の中のうち、他の部屋や外に通じるドアや窓の近くに置いています。

スピーカー1・2の間隔は最低でも4mとし、どのような人間であっても2.5秒ではスピーカーの間を移動できないような距離に設定しています。

猫は飼い主の声をちゃんと覚えている?

実験は3種類行われ、それぞれ下記のような条件が設定されています。

実験1

飼い主の声(または猫カフェで主に世話をしている人の声)を2つの場所のスピーカーから連続して再生することで、見かけ上「瞬間移動」したかのように認識させる(違う音条件の時は見知らぬ人の声)

実験2

親しい猫の声をスピーカーから流して、同種の声でも同じような社会空間認知処理が行われるかどうかを検証(違う音条件の時は別の猫の声)

実験3

対照条件として、社会的ではない物理的な音(電子音)を用いた。実験1、2で見られた反応が社会的な刺激に特有のものかどうかを検証するため(違う音条件の時は別の電子音)

そして、それぞれの実験に参加した猫は下記の通りです。猫カフェの猫や、家で飼育されている猫が対象になっています。

ただし、「カメラの範囲外に猫がいた」「実験機材の不調で音が十分に出なかった」ことなどから除外されているデータもありますので、検証に使えるデータ範囲はさらに狭まっていることに注意が必要です。

実験1:50匹(うち、18匹に何らかの実験エラーあり)

実験2:45匹(うち、8匹に何らかの実験エラーあり)

実験3:47匹(うち、11匹に何らかの実験エラーあり)

この3つの実験の結果、「猫は人間の声で位置関係を把握している可能性が高い」一方「猫の『にゃー(meow)』音がテレポーテーションした時はそこまで反応しない」ことがわかっています。ただ、今回の実験では、特に実験2(猫の鳴き声)・実験3(電子音)において改良の余地があることから、今回得られた「猫は人間の声で位置関係を把握している可能性が高い」仮説を検証するために、同様の実験が何度か行われることが予想されます。

心理学などの実験の場合、1度で有意な差が出るデータを得られないことが普通です。何度か実験を繰り返し、各実験で得られた結果を踏まえて実験内容を改良していくことで、「仮説を知見」に変えていくことができます。

したがって、今の段階では「人間の声で位置関係を把握している可能性が『高い』」としか言えないというのが、今回の実験に対する正しい受け止め方です。とはいえ、一人の猫飼いとしては「猫が飼い主の声をちゃんと覚えているかもしれない」という情報はうれしいものでした。

CAMP NYAN TOKYO(キャンプ ニャン トウキョウ)の活動

このような猫(ネコ)の行動を解き明かそうとする研究者の集まりが「CAMP NYAN TOKYO(キャンプ ニャン トウキョウ)」です。人間にとって身近な動物であるネコの行動や知性、生体について研究をしています。

今回紹介した” Socio-spatial cognition in cats: Mentally mapping owner’s location from voice”の筆頭著者の高木佐保氏もCAMP NYAN TOKYOのメンバーです。

2019年5月に公式サイトが設立されて以来、研究メンバーによる論文掲載情報・SNS上での研究進捗報告・現在協力が必要な研究の概要が精力的に掲載されています。

猫の行動を解き明かすには、さまざまな猫の行動データが必要になるため、「ネコ研究員」が募集されています。

ネコ研究員への参加方法

ネコ研究員への参加方法は、CAMP NYAN TOKYO公式サイトの「ネコ研究員を募集しています!」内フォームから登録することで参加可能になります。「ご協力募集中」ページでは、現状募集中の研究プロジェクトの概要が確認できます。
「協力できそう」だと思うものがあれば、そのプロジェクトの連絡先やフォームから応募すると、各研究者から実験内容の詳細が届きます。

これらの研究は、各研究機関・大学に指定されている倫理委員会の承認を受けて行われるのが基本ですので、猫が不利益な扱いを受けないように配慮して設計されています。少しでも気になる点や懸念点があれば途中で実験を終了させてしまうことも可能ですので、猫の生態を知りたい方は、ぜひ前向きに検討してみて欲しいです。

参考資料

PLOS ONE ” Socio-spatial cognition in cats: Mentally mapping owner’s location from voice”(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0257611)

CAMP NYAN TOKYO(キャンプ ニャン トウキョウ)公式サイト(https://sites.google.com/view/campnyantokyo/about)

CAMP NYAN TOKYO「ネコ研究員を募集しています!」(https://sites.google.com/view/campnyantokyo/%E3%83%8D%E3%82%B3%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%93%A1-%E5%8B%9F%E9%9B%86)

CAMP NYAN TOKYO「ご協力募集中」(https://sites.google.com/view/campnyantokyo/Recruitment)

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