65歳以上の年金受給者「専業主婦」は本当に多かったのか。その経歴と年金額を探る
LIMO / 2021年12月14日 18時15分
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65歳以上の年金受給者「専業主婦」は本当に多かったのか。その経歴と年金額を探る
2022年10月よりパートの方の厚生年金適用が拡大されます。この動きは2016年10月から始まり、2024年10月にはさらに適用が拡大される予定です。これを受けて、はたらく女性は今後も増えると考えられます。
総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」によれば、1980年(昭和55年)の専業主婦世帯は1114万世帯、共働き世帯は614万世帯。80年代は専業主婦世帯が主流でしたが、90年代に逆転し、2020年は共働き世帯が1240万世帯、専業主婦世帯が571万世帯です。
いまの働く世代の方が子どものころ、親世代は「専業主婦が多かった」というイメージを抱える方もいるでしょう。実際に、専業主婦はそれほどに多かったのでしょうか。65歳以上の年金受給者の経歴や平均年金額に迫ります。
65歳以上「夫は正社員・妻は専業主婦」の夫婦は約19%
少し前の資料になりますが、厚生労働省の「平成29年老齢年金受給者実態調査(特別集計) 」より、65歳以上で配偶者がいる世帯の夫婦の経歴を確認しましょう。
【65歳以上・配偶者あり世帯】夫婦の現役時代の経歴
夫婦ともに正社員中心:18%
夫は正社員中心・妻はパート・アルバイト中心:16%
夫は正社員中心・妻は収入を伴う仕事をしていない期間中心:19%
夫婦ともに自営業中心:12%
その他の組み合わせ:35%
※「正社員中心」とは20~60歳までの40年間のうち、20年を超えて正社員だった者(他についても同様)。
65歳以上の方は「夫は正社員中心・妻は収入を伴う仕事をしていない期間中心(≒専業主婦)」のご家庭が多い印象ですが、実際は約2割でした。「夫婦ともに正社員中心」とほぼ同じです。「その他の組み合わせ」の実態がわかりませんが、思ったよりも少ない印象です。
参考までに、それぞれの夫婦の組み合わせの平均年金額も確認しましょう。
【65歳以上・配偶者あり世帯】平均年金月額
夫婦ともに正社員中心:28.7万円(夫17.4万円・妻11.3万円)
夫は正社員中心・妻はパート・アルバイト中心:24.9万円(夫17.6万円・妻7.3万円)
夫は正社員中心・妻は収入を伴う仕事をしていない期間中心:26.3万円(夫20.1万円・妻6.2万円)
夫婦ともに自営業中心:15.8万円(夫8.9万円・妻6.9万円)
平均:23.8万円(夫16.1万円・妻7.7万円)
年金額で比べると、最も多いのはやはり「夫婦ともに正社員中心」でした。
次に「夫は正社員中心・妻は専業主婦中心」が、「夫は正社員中心・妻はパート中心」よりも年金額が多くなっています。夫婦別の年金額で見ると、「夫は正社員中心・妻は専業主婦中心」の夫の年金額は20.1万円。それぞれの経歴の中で最も高いですね。
妻が専業主婦中心のご家庭は、夫の収入が高いのも一つの要因と考えられるでしょう。
【男女別】65歳以上の年金受給者の経歴は?
より詳しくみるために、65歳以上の年金受給者の経歴を年齢階級別にみてみましょう。
拡大する(/mwimgs/8/d/-/img_8d912becf5570b329b66aa529b12570d433030.png)
出典:厚生労働省年金局数理課「公的年金受給者に関する分析-配偶者の状況と現役時代の経歴(就労状況)からみた年金受給状況-」
男性はどの年代も正社員中心が多いですね。一方で、女性で最も多い経歴は「90歳以上」「85~89歳」で自営業中心、それ以下の年代では「正社員中心」でした(不詳を除く)。
「収入を伴う仕事をしていない期間(≒専業主婦)」が最も多い年齢は「85~89歳」です。
ただし、上記は配偶者がいない方も含まれます。
参考までに、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集 2021年版」によると、「50歳時で配偶者がいる女性」は1920~1970年まで70%台、1980~2005年まで80%台、2010~2015年で70%台でした。この面を考えても、思ったより専業主婦の方は少ない印象です。
この年代の女性の経歴については、地域差や子どもの年齢もあるでしょう。都市部では夫が会社員で妻が専業主婦の方も多いですが、地方では夫婦ともに自営業の方もいます。また、子どもがある程度の年齢になったらパート等で働く方も多いようです。
厚生年金のひと月の男女差、平均で約6万円
これまで65歳以上の年金受給者の方の経歴をみてきました。あわせて確認したいのが、年金受給額の詳細です。
20歳以上60歳未満の方が原則加入する「国民年金」の場合、仕事が年金額に影響することはあまりありません。しかし会社員や公務員などの方が加入する「厚生年金」は、加入月数や収入に応じて受給額が変わります。
厚生労働省年金局の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」より、今のシニア世代の厚生年金受給額を確認しましょう。
拡大する(/mwimgs/c/8/-/img_c8f57bc107acd721a1f485c39581d4f7257967.jpg)
男女別の厚生年金・年金月額階級別受給権者数。平均を比べると男女で約6万円の差がある。
厚生年金保険(第1号)・平均年金月額
平均:14万4268円
男性:16万4770円
女性:10万3159円
平均額を比べると男女で約6万円の差があります。ボリュームゾーンを見ても、男性は17万円台、女性は9万円台ですね。
やはり働き方により、将来の年金額に差があるのが分かります。結婚や育児、介護などで離職したり、扶養内で働いたりすることが多い女性の場合、将来の年金額も少なくなる傾向にあるのでしょう。
来年の厚生年金拡大を受け、今の働く世代はシニア世代よりも年金額の男女差が小さくなると考えられます。ただし少子高齢化の影響もあり、全体の年金額が減る可能性もあります。
年金のみでは老後生活ができないといわれる現代。こういった面を考えると、女性が働く必要性は増えていると考えられるでしょう。
周囲に流されず、自分らしい選択を
今の働く世代の方は、90年代の共働き世帯と専業主婦世帯の逆転により、働き方を迷う方が多い傾向にあります。特に女性は専業主婦になるのか、働くのか。働くなら正社員か、パートか、フリーランスかなど選択肢が多様です。
加えてこのコロナ禍の影響で雇用や感染対策等の影響もあり、ますます働き方については悩ましいところでしょう。
価値観は時代により、また人によってもさまざま。実際に統計を見ると、専業主婦が多いと思われた年代でも圧倒的に多いとは言えない結果となりました。
ワンオペ育児や実家が遠方といった環境の問題や、子どもやキャリアへの想い、性格や得意分野などは人それぞれ。結局、責任をとって生きていくのは当人です。周りに流されることなくその人が納得のいく選択ができるよう、周囲も応援したいものですね。
参考資料
日(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)
独立行政法人労働政策研究・研修機構「図12 専業主婦世帯と共働き世帯」 (https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html)
厚生労働省年金局数理課「公的年金受給者に関する分析-配偶者の状況と現役時代の経歴(就労状況)からみた年金受給状況-」(https://www.mhlw.go.jp/content/koutekinenkin_jukyusha_202106.pdf)
国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集 2021年版」(http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2021.asp?chap=0)
厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/)
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