パートの社会保険適用の拡大。育児世代、わたしたちの本音は?
LIMO / 2021年12月14日 18時45分
パートの社会保険適用の拡大。育児世代、わたしたちの本音は?
2022年10月にパートの社会保険(健康保険・厚生年金)の適用が拡大されます。これまでは従業員数501人以上の企業に勤め、一定要件を満たしたパートの方が社会保険に加入できましたが、2022年10月には従業員数101人以上へと拡大されます。
また、2024年10月には従業員数101人以上から51人以上の企業へと拡大予定です。これを受け、働く女性は今後ますます増えそうですね。
いまや主流となった共働き世帯ですが、実際に育児をしている現場としては働き方に迷う女性は多いでしょう。子どもが小さい間は家にいたい、小学生でも塾の送り迎えや宿題の丸付けがある、そもそも体力が持つか不安があるなど、何を優先すべきかは難しいところです。
社会保険適用拡大のメリット・デメリットをながめながら、育児世代の本音についても考えていきましょう。
社会保険の適用拡大の流れとメリットは?
2016年10月から実施されている、パートの社会保険の適用拡大。2022年10月からは、従業員101人以上の企業で働き、以下の一定要件を満たせば社会保険へ加入できます。
週の所定労働時間が20時間以上であること
雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれること
賃金の月額が8万8000円以上であること
学生でないこと
育児をしながらパートをしている女性の場合、社会保険料を払うと手取りが減るなどあり、働き方をセーブしている人も多いです。
社会保険に加入すればどんなメリットがあるのかといえば、まずは厚生年金へ加入できることでしょう。
厚生年金は会社員や公務員の方などが加入する年金で、収入や加入月数に応じて受給額が異なります。
ちなみに、厚生労働省年金局の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、今のシニア世代の厚生年金の受給月額は以下の通り。
厚生年金保険(第1号)・平均年金月額
平均:14万4268円
男性:16万4770円
女性:10万3159円
離職したり、扶養内で働いたりすることが多い女性は、男性に比べると平均で約6万円少ないのが現状です。将来の年金額を増やすためには、厚生年金に加入することも一つの手段でしょう。
傷病手当金や出産手当金などの保障も
また、健康保険に加入することで、傷病手当金や出産手当金といった保障もつきます。
傷病手当金は、病気やケガなどによる休業中、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度。条件を満たせば、病気やケガの療養のために仕事を休んだ4日目以降の仕事に就けなかった日から、最長で1年6ヵ月間受け取ることができます。
これまで傷病手当金の支給期間は「支給開始した日から最長1年6ヵ月」でした。しかし2022年1月より「通算」に変わり、「途中で不支給だった期間はのぞいて1年6カ月分」支給されます。
育児中の女性が働けなくなると、その期間の収入がなければ家計へ響きます。また子どものお世話を頼んだり、入院すればその諸費用など意外とお金はかかるもの。この期間も給与の3分の2相当が支給されると心強いですね。
出産手当金は「出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)~出産日の翌日以降56日」まで、会社を休み給与の支払いがなかった期間に給与の3分の2相当が支払われます。出産時も入院や上の子のお世話など何かと費用がかかることを考えると心強いでしょう。
このような保障面を考えると、手取りは減るもののメリットはあると言えそうです。
育児中、非正規で働く女性の割合は?
では、実際に非正規で働く女性はどれくらいいるのでしょうか。少し前の統計になりますが、一つの参考として厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より子どもがいる世帯の母親の仕事状況を確認します。
児童のいる世帯における母の仕事の状況の構成割合(2019年)
仕事あり:72.4%
うち正規の職員・従業員:26.2%
うち非正規の職員・従業員:37.8%
その他:8.5%
仕事なし:27.6%
※「その他」は会社・団体等の役員、自営業主、家族従業者、内職、その他、勤めか自営か不詳及び勤め先での呼称不詳を含む。
仕事をしている母の正規職員は26.2%、非正規職員は37.8%。その差は10ポイント以上です。2004年(平成16年)からの推移を見ると、それぞれおよそ10ポイントずつ増加しています。また、仕事をしていない専業主婦は27.6%ですね。
いまは1人で育児をするワンオペ育児や、実家が遠方で頼る人がいないというご家庭も多いでしょう。周囲の助けがなければ、育児をしながらの働き方については悩ましいところです。
筆者も保育園~小学生まで3人の子をワンオペ育児中ですが、心配なのは急な看病で休みを取るときのこと。いつ風邪を引くかわかりませんし、きょうだいがいれば順番にうつり1週間以上看病が必要なことも。また、感染症の種類によっては親の方が重症化するケースもあります。
病児保育もありますが、地域差が大きいもの。定員もあるため必ずしも預かってもらえるわけではないようです。
また、習い事や塾の送迎、園や学校の行事が平日だったり、役員やPTA活動、宿題の丸付け、旗振りなどの負担もあり、長時間働けないという声もあります。そもそも体力が持たない、という不安を抱えている方もいるでしょう。育児には親の心身の余裕も大切なので、それを保つためにもあえて働き方をセーブしている方もいます。
一方で、子どもが大きくなってくるとお金面での心配事は増えます。育児世代は「教育費・住宅資金・老後資金」の人生三大支出すべてを担うご家庭が多いでしょう。教育費の負担が増え、老後も年金のみでは生活できないと聞くと働く必要性も感じます。
ソニー生命の「女性の活躍に関する意識調査2020」では、専業主婦の72.7%が「老後の生活が心配だ」と答えています(ソニー生命調べ)。子どもがある程度大きくなってからいざ働こうと思うと、自分の年齢もあがるため「そもそも働けるのか」といった悩みもみられます。
自分にとってのいいタイミングを見計らう
パートの社会保険の適用拡大は進みますが、その一方で「安心して仕事と育児が両立できる環境作り」は必須です。保育園に入れること、遅くなっても子どもを預かってもらえること、病気などの際に休みが取れたり預け先があったりすることなどの環境整備は、同時並行で必要でしょう。
そのような環境がない場合には、子どもが小さい間は働き方をセーブする、専業主婦を選ぶのもまた選択肢のうちの一つです。入園や入学のタイミングでパートの働く時間を増やすなど、おおよその目安を考えておくと安心でしょう。また、家でできる仕事などの方法もありますね。
お金についての不安もありますが、預貯金だけでなくつみたてNISA制度を利用して運用を取り入れたり、iDeco(個人型確定拠出年金)など私的年金で準備する方法もあります。
女性のライフステージの変化は想像以上に激しいもの。だからこそ、自分にとってのいいタイミングを考え、ある程度目安を決めておくと良いでしょう。
参考資料
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)
厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」(https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/dai1hihokensha/)
厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/)
全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/)
厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html)
厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)
ソニー生命「女性の活躍に関する意識調査2020」(https://www.sonylife.co.jp/company/news/2020/nr_201027.html#sec6)
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