65歳以降のリタイヤ夫婦の貯蓄額の平均と現実。あなたの「老後」は何歳からはじまりますか?
LIMO / 2021年12月15日 5時45分
65歳以降のリタイヤ夫婦の貯蓄額の平均と現実。あなたの「老後」は何歳からはじまりますか?
「リタイヤ後の生活」という響きに、みなさんは何歳以降をイメージされますか?60歳、もしくは65歳と答える方が多数派かもしれませんね。
シルバー世代が働き続けるしくみは整いつつありますが、65歳前後をリタイヤ時期と定め、年金生活に入る方は多いはず。
社会との接点をもつため、後進の指導にあたるためなど、働き続ける理由はそれぞれですね。もちろん「老後生活のゆとりのために」という方もいらっしゃるでしょう。
「人生100年時代」が近づくこんにち。年金(※)以外の老後資金を確保する目的で、60代以降も働き続ける方は増えていくことが考えられます。
とはいえ、シニアの就労には、モチベーション以上に体力面でのハードルが高まります。年を重ねることで健康面での不安は増えるでしょう。「生涯現役」といいたいところですが、私たちの多くにとって、それは必ずしも現実的なものではありません。
今回は65歳以上の「リタイヤ夫婦」の世帯の貯蓄事情についてながめていきます。
【※参考記事】厚生年金「ひと月25万円以上」受給する人の割合は?(https://limo.media/articles/-/24659)
そもそも「老後資金」はどのくらい必要なの?
まず、「老後資金」はどのくらいの金額を準備すればよいか、具体例を挙げながら考えていきます。
2019年に金融庁のレポートに端を発した「老後2000万円問題」がまだ記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう。
標準的な夫婦が、老後を30年暮らした場合、年金以外に「2000万円」の老後資金が必要となる、という試算で注目を集めました。
※【図】「老後2000万円問題」をわかりやすく分解!
このオレンジ枠の部分が、「夫婦の老後には、年金以外に2000万円が必要」とされた根拠となります。(※2017年の「家計調査」を元にした試算です)
「2000万円問題」の落とし穴。老後の「経費」は結構かかる!
実は、この「老後2000万円問題」には、いくつかの落とし穴があります。そのうちの「住居費」と「介護費用」について触れましょう。
住居費
一つめは「住居費」が低く設定されている、という点です。
この試算の元となった「家計調査」の結果では、持家世帯を前提として1万円台に設定されています。住宅ローンの返済金額は含まれていません。また老後も賃貸住宅に住む予定の方は家賃分を考慮して貯蓄を準備していく必要があるでしょう。
介護費用
もう一つは「介護費用が含まれていない」という点です。
ちなみに、LIFULL介護のデータをもとに計算すると、5年間(平均的な入居期間)に必要となる費用(1人分)のトータルは、有料老人ホームの場合で約2000万円、サービス付き高齢者向け住宅で1000万円強でした(以下詳細)。
【有料老人ホームの場合】
入居時費用:580万円
月額費用:23万6000円
5年間費用の合計:1996万円
【サービス付き高齢者向け住宅の場合】
入居時費用:19万8000円
月額費用:16万8000円
5年間費用の合計:1027万8000円
これを人数分準備しておく必要がある、ということになりそうですね。夫婦で入居した場合、2000万円~4000万円ほどかかる計算に。これを「2000万円」に上乗せして準備していく必要があるわけです。
ただし、実際に必要となる金額は、家族構成や健康状態など、さまざまな要因によって変わってくるでしょう。一概に「いくら貯めておけば大丈夫」とは言い切れません。
次は、今のシニア世代がどのくらいの老後資金をキープできているかを確認していきます。
65歳以上「リタイヤ夫婦」みんなの貯蓄、平均と現実
ここからは総務省統計局のデータを元に65歳以上の「リタイヤ夫婦」世帯の貯蓄額を見ていきます。
「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2020年(令和2年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、65歳以上・無職世帯の貯蓄額と、貯蓄額ごとの分布を見ていきます。
65歳以上・無職世帯(二人以上世帯)の現在貯蓄高
平均値:2324万円
中央値:1555万円
平均値は一部の「お金持ち」に引き上げられる傾向がありますので、ここではより実感に近い中央値をご参考になさるとよいでしょう。
貯蓄残高の保有額別の分布についても見ていきましょう。
世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布
(二人以上の世帯)
100万円未満:7.9%
100万~200万円:4.0%
200万~300万円:3.5%
300万~400万円:3.7%
400万~500万円:3.3%
500万~600万円:3.8%
600万~700万円:3.4%
700万~800万円:3.2%
800万~900万円:2.9%
900万~1000万円:2.5%
1000万~1200万円:5.7%
1200万~1400万円:4.5%
1400万~1600万円:4.5%
1600万~1800万円:3.1%
1800万~2000万円:3.3%
2000万~2500万円:8.3%
2500万~3000万円:6.4%
3000万~4000万円:8.7%
4000万円以上:17.3%
前述の介護費用も含めると、夫婦の老後資金のトータルは4000万円を超える(※)ことが考えられますね。
貯蓄額が4000万円を超える世帯は、65歳以上の世帯の17.3%です。この割合を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれでしょう。
いずれにせよ、「標準的な世帯」が一朝一夕で準備できる金額ではないことは確かです。定年退職金で残高がいっきに増えたケースや、親族からの贈与や相続があったケースも一定数含まれている点も考慮する必要がありますね。
一方で、59.3%の世帯が「貯蓄2000万円未満」、さらにいうと200万円未満の層の割合が11.9%を占めている点も看過できないでしょう。
いわゆる「老老介護」に直面した場合の選択肢なども考えると、リタイヤ後を見据えた資金形成は、早い段階からコツコツと進めていけると理想的ですね。
(※)夫婦2人が、サービス付き高齢者向け住宅に、それぞれ5年間入居した場合を想定して単純計算。
「老後のお金」準備のスタート、あなたは何歳から?
今回は、「老後に必要となるお金」を軸として、リタイヤ世帯の貯蓄事情などものぞきながらお話をしてきました。
「老後の資金」はいつまでにどのくらい準備すればよいのか、予想がつきにくい項目です。30代・40代の若い世帯であれば、住宅ローンや教育費のやりくりに追われ、自分たちの遠い老後まで手が回らないのも自然なことでしょう。
年末年始はぜひ、「長期を見据えた」家族のマネープランを考える時間を作ってみましょう。お持ちの資産を、預貯金・保険・投資にバランスよく振り分け、上手にお金を貯めて・育てていくしくみを作っていけるとよいですね。
「老後のお金」の準備、あなたは何歳からスタートしますか?
参考資料
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)
LIFULL介護「老人ホームの費用相場」(https://kaigo.homes.co.jp/market_price/)
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2020年(令和2年)平均結果-(二人以上の世帯)」「Ⅲ世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2020_gai4.pdf)
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