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「本を読まない」影響が出るのは学力だけじゃない!? 大人への調査でわかったこと

LIMO / 2021年12月23日 15時30分

「本を読まない」影響が出るのは学力だけじゃない!? 大人への調査でわかったこと

「本を読まない」影響が出るのは学力だけじゃない!? 大人への調査でわかったこと

「本を読まないより読んだ方が良い」は、よく聞く話です。語彙力が増え、集中力が身につくなどのメリットが取り上げられることが多いものの、長年にわたり読書習慣の効果は経験則で語られてきました。

しかし近年、教育分野でも科学的根拠を用いた調査や研究が浸透してきています。国立青少年教育振興機構が2021年3月に発表した「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、全国の20~60代の男女5000人を対象に、子どもの頃の読書習慣とそれが与えた影響を考察する調査を行いました。

通常、こうした調査の対象は児童・生徒であることがほとんどなので、成人に限定しているのは特筆すべき点といえます。では、子どもの頃の読書習慣・読書量によって、大人になってから多少なりとも違いが出てくるのでしょうか。調査結果は興味深いものになりました。

そもそも、学力は読書量と関係があるのか?

読書習慣の有無でよく議論されるのが、学力との関係性です。今年度の「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)では、児童生徒向けアンケートに家庭内の蔵書数に関する質問が初登場しました。

同調査の報告書では、雑誌・新聞や教科書等を除いた蔵書数と、国語・算数(数学)の学力テストの平均正答率は明確な関係をみせています。図表1のように、蔵書数の多い家庭、つまり本が身近にある場合は正答率が高くなりました。

図表1:家庭内の蔵書数と学力テストの平均正答率の関係

出所:「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)より編集部作成

こうした学力テストの結果など、数値化できるスキルは「認知能力」と呼ばれています。一方、この10年、日本で注目を集めているスキルに「非認知能力」があります。非認知能力とは、自己肯定や忍耐力など、生きる上で重要な力とされています。

これまで非認知能力と読書を関連付ける大がかりな調査は国内でほとんど行われてきませんでした。しかし、冒頭に述べた国立青少年教育振興機構の調査分析では、強い関連性が示されています。

読書習慣は意識・非認知能力にも影響を与える

「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、小中高での読書習慣に基づき4つに分類されたグループで「意識・非認知能力」を分析しています。4つのグループは以下の通りです。

小中高少群:小中高を通して読書量が少ない

上昇群:小中高で緩やかに読書量が上昇している

低下群:小中高で読書量が低下している

小中高多群:小中高を通して読書量が多い

すると、意識・非認知能力とされる「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」のいずれにおいても、小中高多群が一番高く、小中高少群は3分野ともに最も低い結果となりました。

この調査結果だけで断言はできませんが、成人してからの意識・非認知能力の高低は子どもの頃の読書量と連動していることが示唆されています。つまり、「小中高を通じて読書を継続していると、社会人になってからもプラスに働く」というわけです。

今は、グローバル化の進展に加え、コロナ禍による経済停滞もあり、「この仕事に就いていれば大丈夫」とは言えない時代になりました。先行き不透明な中、自分自身で人生を切り拓いていくのに「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」は必須です。

こうした能力の形成には複合的な要因があると考えられますが、小学生から高校生の10年間での読書活動が成人以降の意識・非認知能力の高低に影響が及んでいる事実は、読書習慣のメリットの具体的な例になると言えるでしょう。意識・非認知能力と読書を関連付けた今回の結果は非常に意義あるもので、さらなる調査が期待されます。

紙ベースの読書と電子媒体の読書に差はあるのか

さて、近年は読書スタイルそのものが大きく変わってきました。電子書籍の普及により従来の紙媒体だけでなく、スマートフォンやタブレット端末での読書も浸透しつつあります。

この読書媒体ごとの分析結果でも、意識・非認知能力に差が出ました。読書媒体は以下の5つのグループに分類されていますが、紙媒体中心に読書活動を行っているグループが最も高く、次いでパソコン、スマートデバイス中心群が続いたのです。

紙媒体中心群

スマートデバイス中心群

パソコン中心群

パソコン、スマートデバイス中心群

読書時間低群

電子書籍の存在感は年々増していますが、紙媒体で本を読むことで意識・非認知能力がより高まるという結果が出たのは興味深いことです。

今後は、デジタル教科書など電子書籍が当たり前という世代が増えてきます。そのため、同様の調査を継続していく中で、今回と同じ傾向が出続けるのかどうかは不明です。ただし、アプリゲームなど誘惑の多いスマートフォンに比べれば、紙媒体の読書の方が活字に集中しやすいのは容易に想像できます。

学力以外の要素でもメリットが多い読書

今まで読書というと学力と結び付けられることがほとんどでしたので、国立青少年教育振興機構の調査研究は、読書効果に新しいメリットを付け加える画期的なものです。

一方で、昨今は学力と経済力の相関が指摘されることが多くなっていますが、認知能力と非認知能力双方に好影響を与える読書は、図書館などを上手に利用すれば出費を抑えることもできます。

これまで経験則で語られてきた読書効果ですが、今後はさらに多角的に調査し、そのメリットを幅広い世代に周知していくことも、読書活動のさらなる推進につながるのではないでしょうか。

参考資料

令和3年度 全国学力・学習状況調査 報告書 [質問紙調査](https://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/report/data/21qn.pdf)(文部科学省)

【概要】子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究(http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/155/File/gaiyou.pdf)(国立青少年教育機構)

子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究 報告書(https://www.niye.go.jp/files/items/6876/File/%E3%80%90%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%91%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E9%A0%83%E3%81%AE%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6.pdf)(国立青少年教育機構)

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