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デジタル敗戦した日本の未来。RPAの誤解、DXの誤解は経営層の問題か

LIMO / 2021年12月27日 20時20分

デジタル敗戦した日本の未来。RPAの誤解、DXの誤解は経営層の問題か

デジタル敗戦した日本の未来。RPAの誤解、DXの誤解は経営層の問題か

デジタル敗戦国ニッポン。これは筆者が勝手に言っていることではなく、初代デジタル相の平井卓也氏が在職中の2020年10月のインタビューで語っている言葉です。かつての「e-Japan戦略」「世界最先端IT国家創造宣言」など、全てが実現できなかったと語っていました。

今回は民間部門も含めて、デジタル敗戦国ニッポンの実態について考えてみます。

RPAの誤解

どうも、日本のIT化/デジタル化は誤解だらけの気がします。その一例として、民間部門におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入を見てみます。

ご存じのように、RPAはソフトウェアロボットまたは仮想知的労働者と呼ばれる概念に基づく、事業プロセス自動化技術の一種です。もともとはイギリスが発祥とされ、金融機関のバックオフィスの自動化からスタートしました。

RPAという概念を生み出した英Blue Prism(ブルー・プリズム)社の日本法人が2017年に設立。同社の資料をみると、日本のRPAは誤解があるとしています。

「日本では、働き方改革、個人の生産性向上といった文脈で業務自動化のコンセプトが紹介された経緯があり、RPAは便利ツールとしての側面が強調されてきた」という指摘です。

総務省では、RPAの導入・発展イメージをクラス1から3まで「定型業務の自動化」「一部非定型業務の自動化」「高度な自律化」と定義していますが、日本の多くの企業は「クラス0=デスクトップ上作業の自動化」にとどまっていると同社は分析しています。

DXの誤解

続いてDX(デジタルトランスフォーメーション)の誤解を見てみましょう。経済産業省は2020年年末に発表した「DXレポート2(中間とりまとめ) 」において、以下のように分析しています。

「先般のDXレポートによるメッセージは正しく伝わっておらず、『DX=レガシーシステム刷新』、あるいは、現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である、等の本質ではない解釈が是となっていた」としています。

そもそも日本のDXは、同レポートによると、実に全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)という壊滅的な状況のようです(2020年10月時点、独立行政法人情報処理推進機構のDX推進指標の自己診断結果・回答企業約500社)。

「RPAの誤解」「DXの誤解」。この二つの現象から共通して読み取れることは、“要はデジタル化すればいいんでしょ"というように、デジタルテクノロジーの話に本質を矮小化してしまうことです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質も、本来は前段の「デジタル」ではなく、後段の「トランスフォーメーション(変革)」にあります。

それは、当初のDXレポートから明記されているのですが、どうしても、本来のゴールとは異なり、デジタルテクノロジーの話に矮小化されてしまう。

なぜ、そのようになるのかを次に考えてみます。

日本企業の視野は短期的・対症療法的?

世界的なコンサルティング会社の2019年レポートでは、以下の分析が行われています(「KPMGグローバルCEO調査2019」)。

「日本企業および経営層は保守的であり、目先の問題を対症療法的に解決する傾向にある。中長期的な視野に立ったゴール設定がない」。

日本で「経営の機動性は企業の存続を左右する」と考えているCEOは66%(前年度は84%)。「AIで自動化済のプロセスがある」企業は12%(米国31%)。「自社の技術戦略を自らリードしている」とするCEOは77%(米国89%)。

前述のRPAと関連しますが、以下の指摘もあります。「日本では既存の業務を変更することなく人の作業を代行できるRPAの導入が進んでいるだけであり、お金も手間もかかる業務の改革は進まない」。

耳の痛い話ばかりです。日本企業および経営者のマインドは、やはり「現状維持」にあるのかもしれません。つまり、DXの本質の“変革"とは程遠いところにある。だとすれば、DXが進行しないのも当然かもしれません。

今回のコロナ禍で露呈したさまざまな問題で、デジタル化やDXが加速すると分析する識者もいます。ただ、個人的には微妙な気もしますね。そんなふうに上手く運ぶといいのですが。

最後に、デジタル庁が起動した日本政府を見てみます。コロナ禍での対応力は、まさにデジタル敗戦国でした。たとえば「5万5千件以上ある国の手続きで、オンラインで完結できる割合は7.5%しかない」(2020年6月26日、日本経済新聞)。

”秘伝のエクセル”だらけの日本

日本政府のデジタル化でも、さまざまな問題が錯綜しています。たとえば、コロナ接触確認アプリCOCOAの不具合が話題となりましたが、そもそもコロナ感染を自己申告するという、その“設計思想"が正しいのか。

国と地方自治体の横断的なシステム構築でも、そもそも現状の国と自治体の役割・機能分担が最適解なのか。ここでも同様に言えることは、単にデジタルテクノロジーの問題だけではないということです。

ここで唐突に思いだすのが、システム開発などでよく聞く“秘伝のエクセル"の笑い話です。この笑い話は、システム開発において「そこのロジックは秘伝のエクセルを踏襲して」と言われ、計算式を分析・確認すると、「ここは現状とは違う」「そこも最近、変わった」というのが出てくるという落ちです。

日本にはそこら中に、先祖伝来の秘伝のエクセルがいっぱいあります。つまり前例踏襲・思考停止したなかで生成されたブラックボックスが山ほどある。テクノロジーの問題だけでなく、社会システムや価値観を含めてです。つまり、デジタル化の前提となる標準化があまりにも進んでいない。そして、これらは経営層だけの問題ではないと思います。

少し大げさに言えば、日本に必要なことは「デジタル化で社会を変える」ことではなく、「まずデジタル化を必要とする社会に変える」ことだという気さえします。

いずれにしろ、2022年はブラックボックスが少しでも解消された、見通しの良い社会につながる1年になることを願っています。

参考資料

RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html)(総務省)

DXレポート2(中間取りまとめ)(https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf)(経済産業省)

グローバルCEO調査2019(https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/jp/pdf/2019/jp-ceo-outlook-2019.pdf)(KPMG)

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