電気自動車は普及するか。テスラやBMW、トヨタの動向は?購入には補助金も
LIMO / 2022年1月7日 11時30分
電気自動車は普及するか。テスラやBMW、トヨタの動向は?購入には補助金も
2021年11月にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開かれました。この中で「販売する新車を全てゼロエミッション・ビークルにしていく」という共同声明があったことをご存じでしょうか。今回は日本におけるゼロエミッション・ビークルの状況を紹介します。
COP26で示す決意。ゼロエミッション・ビークルとは
COP26では、2035年までに主要市場で、2040年までに全世界で新車販売をゼロエミッション・ビークルにしていくという声明を出しました。署名したのは議長国の英国など38カ国、フォード、ゼネラル・モータース、メルセデス・ベンツなどの自動車メーカー11社です。
ゼロエミッション・ビークルとは、二酸化炭素等の人体や環境に有害なガスを排出しない自動車です。この声明では、蓄電池でモーターを動かして走行するバッテリー電気自動車(EV)、水素と酸素の化学反応による発電で走行する燃料電池自動車(FCV)を想定しているようです。
つまり、この声明は「二酸化炭素を排出しない自動車だけを販売する時期の目標」と理解してください。ちなみに、日本や日本の自動車メーカーはこの声明に署名していません。署名していない国や企業はゼロエミッション・ビークルに消極的ということでしょうか。
新車販売の50%をEVに。テスラやBMW
世界の状況を見ると、時価総額が100兆円を超えているテスラ(米国)や、2030年までに新車販売の50%をEVにすると宣言しているフォルクスワーゲン(ドイツ)などが現時点でのEV販売台数が多いようです。
また、BMW(ドイツ)も同じく2030年までに50%をEV化する目標を立てており、多くのメーカーが2040年頃に全新車をEV化する戦略を立てているように見受けられます。
なお、EUでは2035年以降ゼロエミッション・ビークル以外の新車販売ができない規制がかかる予定で、日本が得意なハイブリッドカー(HV)やプラグイン・ハイブリッドカー(PHV)も売ることができなくなります。
ちなみに、海外の多くはFCVではなくEVでの目標達成を狙っており、HV/PHV/FCV(日本勢) 対 EV(日本以外)という構図になっていました。HVやPHVに力を入れている日本勢はゼロエミッション・ビークルの推進に非協力的に見えていたかもしれません。
このような状況で、最近になって日本の自動車メーカーもEVに対して前向きな目標を設定するようになりました。
例えば、トヨタ自動車は「2030年までにEVを30車種市場投入し、EVの世界販売台数350万台を目標とする」と2021年12月14日に発表し、関係者に衝撃を与えました。
元々トヨタ自動車はMIRAIを投入するなどFCVに力を入れる少数派である上に、PHVに力を入れているためEVに消極的とも思われていました。その中で、今回は「EVだけで350万台」という目標を発信しEVへの本気度を示しました。ちなみに、350万台というのは、この販売台数だけで経営できる自動車メーカーが存在する程度に多いと考えていただくと良いと思います。
トヨタ自動車はこのEV事業に対して今後4兆円投資する(2兆円は電池関連の新規投資)としています。なお、テレビCMで「選択肢を増やす」というフレーズを聞いたことがある方も多いと思いますが、FCVやPHVに対しても4兆円規模の投資額を用意し、全方位の準備を進めていくようです。
更に、トヨタ自動車だけではなく、本田技研工業も2021年4月に「先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年には80%、2040年には、グローバルで100%」という目標を発表して進めていますし、日産自動車も長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において2030年までにEVの割合を50%にするという目標を掲げています。また、軽自動車に関しても電動化の方針が発表され始めています。
このように現状でEV販売台数の少ない日本メーカーも前向きに対応しており、ゼロエミッション・カー普及に協力的と言えます。なお、米国やドイツ、前述したBMWやフォルクスワーゲンなどもCOP26の共同声明に署名していません。署名していないからといって努力をしていないというわけではなさそうです。
電気自動車の普及に向けた国の補助
国も世界の動きに追従しようとしています。経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と明記されており、普及促進のため「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が令和3年度補正予算案に盛り込まれました。
これにより電動車購入に下記の補助金が出ます。バッテリー調達のコストが高く車体が高価という課題を解決する目的と思われます。
電気自動車(軽自動車を除く):上限60万円
軽電気自動車:上限40万円
プラグインハイブリッド車:上限40万円
燃料電池自動車:上限225万円
超小型モビリティ;定額20万円(個人)、定額30万円(サービスユース)
なお、直接または間接的に自動車側から電力を取り出す機能がある場合は補助上限額が以下のようになります。(具体的な条件は申請時に確認してください)
電気自動車(軽自動車を除く):上限80万円
軽電気自動車:上限50万円
プラグインハイブリッド車:上限50万円
燃料電池自動車:上限250万円
超小型モビリティ;定額30万円(個人)、定額40万円(サービスユース)
また、インフラが充実していないことから、購入者だけでなく充電・水素充填のインフラ整備に対しても補助金が出ます。
雇用やエネルギー EVの課題
EVに関しては下記の問題も指摘されています。
自動車業界のサプライチェーン変更による雇用の問題
現在の自動車の部品は多く、自動車業界では550万人が働いていると言われています。
EVになると部品点数が減り、労働者が働ける場が減り雇用に影響すると言われています。
EV製造、走行のために使用するクリーンな電気調達の問題
EVは単体で見るとエコなのですが、数千万台規模がEVになった場合、製造過程や走行過程で大量の電力が必要になります。日本は石炭による火力発電の割合が30%強と最も多く、他の発電方法に比べてより多くの二酸化炭素を排出します。このため、現在の電源構成では必要な電力を作る時に二酸化炭素がより多く発生する可能性も指摘されています。
このような問題は企業だけで解決できず、国として対策する必要がありそうです。前述のグリーン成長戦略では再生可能エネルギーを成長分野としていますので、新たな電力源を増やしつつ、新たな雇用を生む方向に進むかもしれません。
参考資料
COP26 DECLARATION ON ACCELERATING THE TRANSITION TO 100% ZERO EMISSION CARS AND VANS(COP26資料)(https://ukcop26.org/cop26-declaration-on-accelerating-the-transition-to-100-zero-emission-cars-and-vans/)
ZERO EMISSION VEHICLES TRANSITION COUNCIL: 2022 ACTION PLAN(COP26資料)(https://ukcop26.org/zero-emission-vehicles-transition-council-2022-action-plan/)
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005.html)
「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」(https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211126004/20211126004.html)
ゼロエミッション・ビークルの普及に向けて(東京都環境局)(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/vehicle/sgw/promotion/index.html)
2050年二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組等(環境省)(https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/02_list_210406.pdf)
第二百四回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説(首相官邸)(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0118shoshinhyomei.html)
日産自動車、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表(日産自動車)(https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/211129-00-j)
社長就任会見 代表取締役社長 三部 敏宏スピーチ概要(ホンダ)(https://www.honda.co.jp/news/2021/c210423.html)
バッテリーEV戦略に関する説明会(トヨタ自動車)(https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/36428939.html)
Mercedes-Benz Strategy Update: electric drive(Mercedes-Benz)(https://www.daimler.com/company/strategy/mercedes-benz-strategy-update-electric-drive.html)
NEW AUTO: Volkswagen Group set to unleash value in battery-electric autonomous mobility world(Volkswagen)(https://www.volkswagenag.com/en/news/2021/07/new-auto--volkswagen-group-set-to-unleash-value-in-battery-elect.html)
BMW GROUP NEWS Top(BMW)(https://www.bmwgroup.com/en/electromobility.html)
二次エネルギーの動向(経済産業省 資源エネルギー庁)(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/2-1-4.html)
外部リンク
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