日本版MaaSとは?海外の事例も解説!交通手段が「サブスク化」する未来はくるのか
LIMO / 2022年1月12日 11時15分
日本版MaaSとは?海外の事例も解説!交通手段が「サブスク化」する未来はくるのか
皆さんは目的地に移動する時にどのように経路を調べ、チケットを購入し、決済していますか。スマートフォンの経路検索アプリケーションを使って乗物を決め、駅、バス停などに行き、各交通機関が指定する方法で支払いを行っているのではないでしょうか。この一連の作業がもっと便利に行えないでしょうか。今回はそれを実現するMaaS(Mobility as a Service)について紹介します。
MaaSとは何か?海外での事例は?
MaaSはフィンランドのスタートアップ企業MaaS Globalが最初に提供したサービスで、都市の公共交通、タクシー、レンタカー、電動キックボード、自転車などを定額で利用可能なものです。”Whim”というアプリケーションをインストールして利用者登録を行い、利用プランを選択するだけで使い始めることができます。
Whimによる影響を調査した”WHIMPACT”によると、Whim利用者の公共交通利用率は73%、対する一般の公共交通利用率は48%となっており、自家用車をやめて公共交通で移動する人を取り込むことで利用者を増やす戦略のようです。(2019年調査)
日本は実証実験段階
日本でもMaaSを推進しており、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省が連携して進めているスマートシティの取り組みの一環という位置付けとなっています。
ちなみに、国土交通省によるMaaSの定義は「地域住民や旅行者の移動ニーズに対応し、複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて検索、予約、決済などを一括で行うサービス」としています。この実現のため、下記の領域に分けて実証実験を推進しています。
日本版MaaS推進・支援事業
地域新MaaS創出推進事業
募集要領によるとそれぞれの目的は下記となっています。
日本版MaaS:交通手段と観光、商業、医療、教育、子育て、防災・減災等の交通分野以外のサービスを連携させ、地域課題の解決策を目指す。
地域新MaaS:無人自動運転車やコネクティッドカーなど先端のモビリティを利用したサービスを地域で試作し、事業性・社会受容性・地域経済への影響・制度面での課題などを調査すること
実証実験の事例1.川崎・箱根観光MaaS実証実験
正月に箱根駅伝をご覧になった方も多いと思いますが、箱根町・川崎市・小田急電鉄・小田急ホールディングスが取り組む観光に関するMaaSです。箱根に車で訪れる観光客を公共交通に分散と、現地に訪れた後の観光地への移動の利便性向上の意図があります。こちらは日本版MaaS推進事業の一環となります。
”EMot”という小田急電鉄が提供するMaaSアプリケーションをインストールすることで、箱根登山バス、箱根登山鉄道、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウェイ、箱根海賊船などのフリーパスや、新宿や川崎からの運賃がまとめて決済できるサービスです。その他、アプリケーションによる目的地までの経路検索や特急券購入なども実施することができます。交通機関に乗る際はアプリケーションの画面を提示して乗降することになります。
試しにアプリケーションをインストールしてみましたが、チケットの種類を選んで複数の公共交通の運賃をまとめて支払えるのは便利だと感じました。観光地同士が離れている場合でも、この仕組みであれば移動の負担を軽減できそうです。鉄道会社が運営しているため、出発地として自社の駅しか選択できませんでしたが、複数の鉄道会社が連携していると利用者にとってはよいかもしれません。
実証実験の事例2.マルチタスク車両を活用したオンデマンド医療MaaS実証実験
三重県の9自治体、三重大学など2大学、MONET TECHNOLOGIESなど26企業が参画した医療MaaSに関する実証実験です。こちらは地域新MaaS創出事業に分類されています。高齢化が進み、人口も減少している地方で、公共交通の利便性が悪いため、普段は医療サービスをすることが困難な方々に医療サービスを提供するものです。(実証実験は2021年12月27日に終了しました)
「マルチタスク車両」とは、通常の自動車の目的(移動)と異なる機能が搭載された車両ととらえてください。ここでは、町役場・地域の診療所・全国の専門医と繋ぐことができる移動する保健室を用意して運用して下記のサービスを提供しています。
保健指導、必要に応じて医療機関受診への誘導
移動式保健室からリモートで医療機関と接続したオンライン診療
全国の専門医への相談、必要に応じた受診推奨、医師紹介
なお、朝夕は公共交通としても活用するそうです。この実証実験のポイントは複数の市町村をまたいでサービスを展開している点で、1つの自治体では採算が合わないサービスを複数の自治体で共有することで効率化を狙ったと考えられます。
今後への期待
昨今では人口が減り、高齢化が進み、公共交通が不便な場所は増えています。そのため地方では自家用車が欠かせませんが、運転が困難な方もおられます。そのような方のために前述の医療MaaSなどは期待が高まっていく取り組みでしょう。
ただし、このようなサービスはビジネスとして成立しづらいことが課題と思われます。それを解決するために複数の自治体をまとめてサービスを提供する・地方と都市をまとめてサービスを提供する等の取り組みも必要かもしれません。更に、人手の足りない地方では無人自動運転車の活用を行うなども有効かもしれません。
また、今回インストールしたMaaSアプリケーションのような事例では、複数の交通や交通以外のサービスの決済をまとめることで利便性が感じられるものの、アプリケーションを提供する企業は公共交通以外が良いかもしれません。公共交通がアプリケーションを提供する場合、同じような出発地、同じような目的地に駅を持つ同業他社が連携することができなくなり利便性が減少してしまうかもしれません。
まだ課題は残っていますが、目的に応じた最先端の車両を利用することで移動の負担を最小限に抑え、都市の公共交通がサブスクリプションになり利用者が増え目的地となる施設が潤い、交通と異業種が連携することで新たなビジネスが発生して雇用機会が増える可能性もあるなど、今後が楽しみな分野ではないでしょうか。
参考資料
Whimのプラン(MaaS Global)(https://whimapp.com/helsinki/en/plans/)
Whimの利用方法(MaaS Global)(https://whimapp.com/helsinki/en/how-it-works/)
Ramboll’s Whimpact Study Reveals that Public Transportation is the Backbone of Mobility as a Service(MaaS Glocal)(https://whimapp.com/helsinki/en/rambolls-whimpact-study-reveals-that-public-transportation-is-the-backbone-of-mobility-as-a-service/)
日本版MaaSの推進(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/promotion/index.html)
スマートモビリティチャレンジ(経済産業省、国土交通省)(https://www.mobilitychallenge.go.jp/)
令和3年度「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業(地域新MaaS創出推進事業)」に係る委託先の公募(企画競争)について(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2021/k210618001.html)
令和3年度日本版MaaS推進・支援事業の公募について(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000163.html)
令和3年度 スマートシティ事業合同審査 採択結果(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/pdf/210824_bessi3.pdf)
川崎・箱根観光MaaS実証実験(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/universalmaas_mlit05_kawasaki_hakone.pdf)
EMot(小田急電鉄)(https://www.emot.jp/)
マルチタスク車両を活用したオンデマンド医療MaaS実証実験(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/newmaas_meti06_mie6town.pdf)
「オンデマンド医療MaaS」の実証実験を11月4日に開始(MONET TECHNOLOGIES)(https://www.monet-technologies.com/news/press/2021/20211101_01)
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