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日本製鉄の株価が意外にも堅調なワケとは

LIMO / 2022年1月13日 8時5分

日本製鉄の株価が意外にも堅調なワケとは

日本製鉄の株価が意外にも堅調なワケとは

日本最大手の鉄鋼メーカーである日本製鉄。

マザーズに上場しているキラキラした新興IT企業と違って、重厚長大・伝統的な企業といったイメージを持たれている人も多いと思います。

コロナをきっかけに事業環境は厳しいように見えますが、実は日本製鉄の株価は足元で強い動きを見せているのです。

今回はその動向・理由を解説しながら、投資のヒントもご紹介しようと思います。

日本製鉄の株価は急速に持ち直し!

まずは、コロナ禍前(2020年1月)を起点として、日本製鉄の株価とTOPIXのパフォーマンスを比べてみましょう。


上の図は、2020年の大発会(初取引日)である2020年1月6日の終値を100として値動きを指数化したグラフです。

こうして見ると、日本製鉄の株価パフォーマンスはコロナ禍において2021年2月頃までTOPIXを下回ってきました。

コロナの影響を受けて国内外の経済活動が停滞する中、「ザ・景気敏感企業」ともいえる日本製鉄の株が売られるのは容易に想像できますね。

しかし、ずっと軟調な動きを見せていたわけではありません。

2020年10月頃からの株価持ち直しの勢いは強く、2021年3月頃にはパフォーマンスはTOPIXと並び、それ以降は大きく上回る局面も見られました。

一体、何がこんなに買いを呼び寄せているのでしょうか。

堅調な株価の背景にある4大ポイントとは?

コロナが完全に収束したわけではないにもかかわらず、日本製鉄の株価はなぜ強い勢いで持ち直すことができたのでしょうか。ポイントは、以下の4つだと考えられます。

1. 世界的な経済回復期待

コロナの蔓延をきっかけに世界経済は大きく停滞しましたが、ワクチンの普及や各国の財政支援を背景に経済回復に向けた期待は高まりつつあります。

たとえば現状、米国ではバイデン政権が巨額な景気刺激策・インフラ投資計画を検討しており、これらを通じた大きな鉄鋼需要が期待されています。こうした政府の助力もあって、鉄鋼需要には明るい兆しが見えつつあります。

また、世界的にワクチン接種が進んでいるほか、経口薬開発の可能性なども出てきており、こうした側面からも経済回復に向けた期待は高まっています。

2. 中国の粗鋼減産

世界最大の粗鋼生産量を誇る中国において、今、減産の機運が高まっています。世界鉄鋼協会の統計によると、世界64カ国・地域の10月の粗鋼生産量は前年同月比10.6%減の1億4570万トンとなりました。肝心の中国は、環境対策による電力制限を進めて減産していることが影響し、23.3%減と大幅な減産となりました。

世界最大の生産量である中国が減産を進める中、鉄鋼の需給改善を通じて日本製鉄は利幅の拡大が期待できる状況となっており、実際に足元の利益拡大にも寄与しつつあります。

3. 脱炭素姿勢の好感

日本製鉄は中期経営計画の中で、脱炭素を目的に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050 ~ゼロカーボン・スチールへの挑戦」と題した取り組みを進めています。具体的には、2030年までにCO2総排出量を30%削減し、2050年にはカーボンニュートラル(100%削減)を目指すものです。

ESG投資の普及を背景に日本製鉄のこういった取り組みは株式市場でも高評価されていると考えられ、実際に日本製鉄はESG投資のための株価指数「FTSE4Good Index Series」「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に4年連続で採用されています。

4. 再編による経営合理化期待

鉄鋼業界は典型的な成熟産業であり、業界全体としては各プレーヤーが統廃合し、生産を合理化する流れが強まっています。

実際、日本製鉄は今年、同業の東京製綱の株式を公開買い付け(TOB)によって20%近く取得しました。この取り組みはその後、独占禁止法の観点において公正取引委員会から指摘を受け、株式持ち分が10%以下になるよう東京製綱株式を売却していく方針に切り替えられました。

とはいっても、こうした取り組みを通じて日本製鉄の経営が徐々に合理化され、利益率が改善されていくといったシナリオには注目が集まっていることでしょう。

鉄鋼株よりも他の業種がいい?

上記の通り、日本製鉄にはいくつかの大きなポイントがあります。

ここで振り返りたいのは、先ほど解説した「業界再編の機運」です。

再編となると、日本製鉄のような大きな会社が小さな会社を取り込む流れとなります。大きな会社にとっては、事業を拡大させながら、合理化を通じて利益率を改善させられるといったメリットがあります。

しかし、投資家からすると小さな会社の株式を持っておいた方がいい場合もあります。

再編はTOBを通じて株式が買い集められて成立していくのですが、その際、買われる側の株価は大きく上昇するケースが多いです。要するに、大きなキャピタルゲインが期待できるということです。

また、日本製鉄のような大きな会社の場合、上記の通り独禁法の観点から施策に制限がかかることもあります。

鉄鋼業界に追い風が吹く中、国内最大手の日本製鉄をつい注目しがちなのはわかりますが、こういった点も踏まえ、小さいプレーヤーの株に投資しておくことも、選択肢として考えてみるといいでしょう。

参考資料

世界粗鋼生産統計(world steel ASSOCIATION Crude Steel Production)(https://www.worldsteel.org/steel-by-topic/statistics/steel-data-viewer.html)

世界粗鋼生産10.6%減 10月、電力制限で中国が減産(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC244CN0U1A121C2000000/)

2022年3月期第2四半期決算短信〔IFRS〕(連結)(https://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20211102_400.pdf)(2021年11月2日)(http://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20211102_400.pdf)

日本製鉄グループ中長期経営計画(https://www.nipponsteel.com/ir/pdf/20210305_200.pdf)

ESG投資のための株価指数「FTSE4Good Index Series」、「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に4年連続で採用(https://www.nipponsteel.com/news/20210713_100.html)

東京製綱株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ(https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20210121_100_01.pdf)

東京製綱株式会社株式の一部処分(予定)に関するお知らせ(https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20210803_050.pdf)

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