子育て世帯「年収600万円台・平均貯蓄723.8万円」でも楽観できないワケ
LIMO / 2022年1月14日 15時0分
子育て世帯「年収600万円台・平均貯蓄723.8万円」でも楽観できないワケ
18歳以下への10万円相当給付を受け取った方も多いでしょう。コネヒト株式会社がママ向けアプリ「ママリ」の利用者を対象に行った調査では、給付金対象者の53.1%が給付金(現金部分)を「ベビー・子ども用品」に利用する予定と答えています(2021年12月27日)。
一方で、少し前の調査になります※が厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、児童のいる世帯の雇用者所得(世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額で税金や社会保険料を含む)は651.8万円。子どもがいるご家庭の平均的な年収は600万円台です。
年収600万円台というとゆとりがある印象ですが、子育て世帯の場合はそうとも言い切れない場合もあります。今回は子育て世帯のお財布事情や教育費のリアルな数字を確認していきます。
※編集部注:2020年の調査は新型コロナウイルスの影響で中止となっています。
給付金は何に使用する予定?
まずは子育て世帯の方は給付金を何に使用する予定なのか、その結果をみていきましょう。
最も多いのが「ベビー・子ども用品」で53.1%。子どもが小さいうちはあまりお金がかからない印象があります。ただ、3人の子どもを育てている筆者は、それぞれの子が乳幼児の頃はおむつ代だけでも月約5000円くらいかかりました。ほかにミルク代、ベビー服、離乳食、ベビー用品、安全対策グッズなど何かとお金はかかります。
子どもが乳幼児のころは専業主婦や時短勤務などで働く女性も多く、産前よりは世帯年収が減るご家庭もあるでしょう。
次に「貯蓄」(42.7%)、「食費・生活費」(35.3%)、「保育費・学費・教育費」(34.4%)と続きます。現段階の食費や生活費、教育費として使う人や、将来の備えとして使う人もいるようですね。
子育て世帯の平均的な世帯年収や貯蓄は?
それでは、先ほどの厚生労働省の調査より、「児童のいる世帯」のお財布事情を見ていきましょう。
上記を見ると、児童のいる世帯の総所得は745.9万円。そのうち、雇用者所得は651.8万円です。
では、貯蓄や負債の平均はいくらでしょうか。
児童のいる世帯の平均貯蓄額は723.8万円です。最も多いのは「貯蓄がない」で11.6%。次に「500~700万円」(10.6%)、「100~200万円」(10.1%)、「1000~1500万円」(8.7%)です。
子育て世帯とはいえ、その年代や家族構成、収入などはさまざまなので貯蓄に差がみられます。
借入金額を確認すると、児童のいる世帯の平均は1119.7万円。全世帯の平均が425.1万円ですから、倍以上になります。
詳しく見ると借入金があるのは55.8%で、そのうち多い順に「2000~3000万円」(15.2%)、「3000万円以上」(10.1%)と高額です。これは住宅ローンと考えられるでしょう。
子育て世帯は平均で見れば年収651.8万円、貯蓄723.8万円とまとまった貯蓄がある印象ですが、借入金額も大きいと分かりました。
気になる幼稚園~大学までの教育費は?
子育て世帯の負担が大きいお金として同時に確認したいのが「教育費」です。幼稚園〜大学までのリアルな教育費を確認していきましょう。
幼稚園から高校までの学習費総額については文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」を参考にします。
上記を見ると、幼稚園から高校まですべて公立で541万82円。すべて私立では1829万8324円にもなります。
大学費用は日本政策金融公庫の「令和2年度『教育費負担の実態調査結果』」(2020年10月30日公表)を参考に、国公立と私立に分けて4年間の学費を確認しましょう。
大学費用(入学費用と4年間の在学費用の合計)
国公立大学:合計537万円
私立大学(文系):合計703.5万円
私立大学(理系):合計863万円
※入学費用とは、受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用とは、学校教育費(授業料や通学費、施設設備費などのその他の学校教育費)と家庭教育費(学習塾・家庭教師の月謝や参考書・問題集の購入費などの補助教育費や、おけいこごとにかかる費用)
幼稚園〜大学まで、すべて公立の場合でも約1000万円となりました。幼稚園や高校、大学などは私立に通う方も一般的です。そうなるとそれ以上かかると考えられるでしょう。
また、きょうだいがいれば教育費は2倍、3倍とふくらみます。特にお金がかかる大学費用は、早いうちから長い時間をかけて準備する必要があります。
さまざまな情報収集をしよう
子育て世帯は住宅ローンや教育費の負担が大きいですが、同時に老後資金も必要です。2019年には、年金以外に老後2000万円が必要という「老後2000万円問題」が話題になりましたね。老後資金も大きな金額となりそうです。
ただ、支払う時期はそれぞれ違いがあります。住宅ローンは期間が決まっていますし、教育費はご家庭により異なりますが特に大学費用の負担が大きいでしょう。一方で、老後資金は60代以降になります。
支払うタイミングが違うからこそ、計画的に準備したいもの。収入は簡単に増えるものではないですし、支出を大きく減らすのもお子さんがいると難しいですから、お金だけでなく「時間」に視点をあてるのもいいでしょう。
たとえば貯蓄の一部に資産運用を取り入れると、お金に働いてもらうこともできます。毎月コツコツと一定額を積み立てていく積立投資なら、ある程度リスクを抑えながら運用を行うことも可能でしょう。
「月2万円、年利3%、30年」で運用できた場合、元本720万円が1165万4738円になります(金融庁「資産運用シミュレーション」を使用)。このように一部に運用を取り入れて、時間を味方につけながらお金を増やす方法もありますね。
リスクはありますし、投資対象などによってもパフォーマンス等は変わるので、しっかり情報収集をしましょう。
人生三大支出を準備するのは大変ですが、中には利用できる助成制度もあります。さまざまな情報収集をしながら、自分にできることを考えてみましょう。
参考資料
PRTIMES「始まった子育て給付金、全額貯蓄世帯は約1割〜最も多い使い道は「ベビー・子ども用品」〜」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000082.000019831.html)
厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)
日本政策金融公庫「令和2年度『教育費負担の実態調査結果』」(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r02.pdf)
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00102.html)
金融庁「資産運用シミュレーション」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html)
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