公共投資の効果は過小評価されている?公共投資と減税のメリットも解説
LIMO / 2022年1月31日 21時0分
公共投資の効果は過小評価されている?公共投資と減税のメリットも解説
公共投資は無駄だ、と考えている人も多いようですが、公共投資は人々が考えているよりも効果が大きいと筆者は考えています(経済評論家 塚崎公義)。
景気が悪い時は財政出動で景気を回復させる
景気が悪い時は、失業者が大勢いるので、政府日銀が景気対策で景気を回復させて失業者を減らそうと頑張ります。日銀は金融緩和をし、政府は財政出動をするわけです。
財政出動には、公共投資と減税があります。公共投資は、政府が自分で橋や道路を作って失業者を建設労働者として雇うものです。減税には、所得税減税等と設備投資減税等があります。
所得税減税等は、人々の懐を温めて消費をしてもらおう、というものです。
設備投資減税等は、設備投資をすれば税金を安くするというインセンティブで設備投資を増やそう、というものです。エコカー減税などもこれに近いですね。
日本では公共投資が一般的ですが、米国では減税がよく用いられるようです。どちらにも一長一短あるので、どちらが良いという事はないようですが。
■公共投資と減税には一長一短あり
公共投資の良いところは、必ず失業者が減る、という事です。政府が自分で失業者を雇うわけですから、当然ですね。雇われた元失業者が給料をもらって消費をすれば、更に景気が良くなって更に失業者が減る、という期待も持てるでしょう。
一方の減税には、失業者が減らない可能性があります。所得税を減税された人が消費をせずに貯金してしまえば景気は良くならないですし、設備投資減税をされても以前から設備投資を予定していた企業だけが設備投資をするという場合には景気を良くする効果が無いからです。
しかし、公共投資には悪い面もあります。
不況期に急いで道路を作るためには、用地買収の簡単な田舎が選ばれがちですが、田舎に道路を作っても人も車も通らない無駄な道路になってしまう可能性があるからです。
一方の減税であれば、所得税減税であれ設備投資減税であれ、減税された人が必要だと思う場合にだけ消費や投資が行われるわけですから、無駄な物が作られるという事はないわけです。
「公共投資は無駄だ」は誤解
公共投資は無駄だ、と思っている人も多いようです。バブル崩壊後に巨額の公共投資が行われましたが、景気が良くならなかった上に、莫大な借金と無駄な道路だけが残ったから、というわけですね。
しかし、これは二つの意味で誤解だと筆者は考えています。景気が良くならなかったから無駄だった、無駄な道路が出来たから無駄だった、という二つです。
あれだけ大きなバブルが崩壊したわけですから、公共投資をやらなければ大不況になっていたはずなのに、公共投資のおかげであの程度の不況で済んだわけですから、公共投資には大きな効果があったのです。
公共投資をしなければ大不況が来ていた、という事を証明することは容易ではありませんが、筆者はそうだと信じています。
理科系であれば実験室でバブルを100回崩壊させてみて、公共投資をやった場合とやらなかった場合が比較できるのですが、それが出来ないので筆者の主張を裏付ける証拠は残念ながらありませんが、それが筆者の考える「常識」だというわけですね。
無駄な道路が出来たから公共投資が無駄だった、ということも言えません。失業者が減ったことは間違いないからです。ケインズは、不況の時は失業者を雇って穴を掘らせろ、と言ったようですが、穴を掘るよりは田舎に道路を作る方がマシだ、と筆者は考えているわけです。
大不況時の公共投資は効きが悪いが必要
バブル崩壊後の公共投資の効果が薄かったというのは、筆者も感じていますが、それは仕方のないことです。大不況の時には公共投資で雇われた元失業者が「どうせ再び失業するのだから、給料は使わずに貯金しよう」と考えてしまうからです。
仮にテレビを買ったとしても、テレビメーカーには社内失業者が大勢いるので、テレビを増産するために新しく労働者を雇う必要は無いわけです。というわけで、公共投資に直接従事した元失業者の分だけしか失業が減らないのです。
しかしこれは、大不況時には公共投資が不要だ、という事ではありません。山火事の時にコップで水をかけても蒸発してしまって効果が薄いですが、だから水をかける必要がない、とは言えません。水のかけ方が足りないのです。
バブル崩壊後に景気回復が見られなかったのは、公共投資が無駄だからではなく、公共投資が足りなかったからだ、と筆者は考えています。
公共投資はカンフル剤に過ぎない?
「公共投資に効果があったとしても、それは一時的なものであり、翌年に公共投資をしなければ元の不況に戻ってしまうのだから、公共投資はカンフル剤に過ぎない」、と考えている人もいるようですが、筆者はそうは思いません。
景気は自分では方向を変えないので、景気が下を向いているとそのまま悪化を続けてしまいますが、公共投資によって景気の方向を上向きに変えてやれば、今度は自分で上向きの回復を続けるようになるからです。
マッチで部屋を温めることは出来ないけれども、マッチでストーブに火をつければ部屋が温まる、というイメージですね。
少子高齢化による労働力不足に注意
今後、少子高齢化による労働力不足の時代が来ると、公共投資をしたくても労働者が集まらずに工事が出来ない、といった事になるかも知れません。実際、アベノミクスの公共投資は、労働力不足で工事が出来なかったものも多かったようです。
しかしこれは、公共投資が景気対策として使えないという事ではありません。失業者がいないので公共投資が不要だ、という事なのです。そうなれば、素晴らしいことですね。前向き思考で素直に喜びましょう(笑)。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。
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