ASMR≠バイノーラル録音!YouTubeで人気の「知られざる音の世界」とは
LIMO / 2022年2月5日 19時15分
![ASMR≠バイノーラル録音!YouTubeで人気の「知られざる音の世界」とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_27367_0-small.png)
ASMR≠バイノーラル録音!YouTubeで人気の「知られざる音の世界」とは
皆さんは「ASMR」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
YouTubeなどの動画サイトで近年、根強い人気を誇っているジャンルです。
今回はこの謎めいた動画ジャンルについて、論文を活用しながら解説していきます。
ASMR動画とはどういうものなのか、改めて解説
ASMRの正式名称は” Autonomous Sensory Meridian Response”といい、直訳すると「自律感覚絶頂反応」です。
読み方は「エーエスエムアール/アスマー/アズマー」などと、複数あります。
何となく物々しい名称ですが、「首筋がぞわぞわする感覚」というと一気に身近になります。
このような感覚を想起させる音として、
スライムを握りつぶす音
耳かきされる時の音
石鹼をナイフで削る音
などがあり、これらの音を収録した動画の総称が「ASMR動画」です。
これらの音を聴くことで、癒しや入眠促進といったプラスの効果が得られるということで、YouTubeなどで繰り返し聴かれています。
「ASMR=バイノーラル録音」ではない
ASMR関連で気になることは、ASMRとバイノーラル録音があまりにも結び付きすぎていることです。
バイノーラル録音とは、人間の頭部や、その音響効果を再現するダミーヘッドなどを利用して、鼓膜に届く状態で音を記録して、ステレオ録音を聴いた際の臨場感を高める録音技術のことです。
バイノーラル録音をした音源はヘッドホンで聴くと「耳元で話している」ように感じられることから、声優の音声コンテンツとして、以前から人気がありました。
もちろん、人間の囁き声はASMR感覚を誘発する条件(片耳に極端に近い人工音)を持っていますが、ASMR感覚を誘発する音は「耳かき音」「野菜を切る音」「石鹸を削る音」など想像以上に範囲が広いので、必ずしもバイノーラル録音の人間の声である必要はありません。
極端な話、自分で耳かきをしたり、片栗粉を水でこねていたりするだけでも「ASMR音が聞こえてくる」状態になるのです。
私自身、自分の耳で耳かきをしていると、耳がきれいになること以外でも音でも癒されているので、仕組みはわからないものの、確かにASMR的な現象は経験しているようです。
ASMRはいつ頃出てきたのか。論文数推移を見る
インターネット上で公開されている論文数推移について、「Google Scholar」を活用してみてみました。
2022年1月14日現在、autonomous sensory meridian responseをキーワードに含む論文は890件あります。
これを、公開年別に分けてみます。
2022年:11件
2021年:190件
2020年:194件
2019年:125件
2018年:93件
2017年:59件
2016年:38件
2015年:24件
2014年:2件
2019年頃から、ASMRを扱う論文数が急激に増えていることがお分かりいただけるかと思います。
研究対象になったのがここ10年以内の話であるため、” Autonomous Sensory Meridian Response”や「自律感覚絶頂反応」が具体的にどういう反応なのかは医学的には解明されていないのですが、「経験上、そういう現象が確認されている」状態のASMRに対して、各種アプローチから研究が進められています。
ASMRについて、実際に何を研究しているのか
英語圏で論文数がそれなりの数あるということは、日本語の学術誌でも、ASMRについて言及しているものは相応にあります。
例えば、「ASMR (自律感覚絶頂反応) を誘発させる音刺激の物理因子解析」では、人工音10種と自然音10種の特徴分析と、それらの音を聴いたときにASMR感覚を誘発するかどうかを確認する実験を組み合わせて、「ASMR感覚を誘発する音の特徴」について調べています。
結果、「片耳に極端に近づいた、左右で不揃いな音がする人工音」でASMR感覚を誘発する可能性が高いことがわかっています。
実験例の中だと、「耳かき音」「シャンプーされる音」で特に反応が高かったようです。
また、別の論文では、「機械学習を用いて、ASMR音を人工的に作る方法」について言及したものもありました。
確かに、「人工音の方がASMR感覚を誘発しやすい」ということであれば、わざわざ生音を収録するより、既存の音の特徴を学習して「それらしい音」を作る方が効率的という着想は合理的だと感じました。
このように、徐々に研究成果は積みあがっていっていますので、いつの日かASMR感覚が起きるメカニズムが解明される日も来るかもしれません。
聴くだけで手軽に癒しが得られ、現状特に副作用も報告されていないASMR動画。
人工音から人間の話し声まで、バリエーションも豊富なので、気になるモチーフのものを試しに聞いてみても良いでしょう。
参考資料
下倉 良太「ASMR (自律感覚絶頂反応) を誘発させる音刺激の物理因子解析」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/62/5/62_475/_article/-char/ja/)
杉田健・片寄 晴弘「AASG (Automatic ASMR Sound Generator):機械学習を用いたASMR音源生成アプリケーション」(https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=206522&item_no=1&page_id=13&block_id=8)
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