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為替レートが日本の景気に与える影響とは。ドルの値段の決まり方も解説

LIMO / 2022年2月16日 19時35分

為替レートが日本の景気に与える影響とは。ドルの値段の決まり方も解説

為替レートが日本の景気に与える影響とは。ドルの値段の決まり方も解説

かつては米国の景気拡大はドル安要因であったけれども、最近ではドル高要因になっている。これは為替レートが美人投票だからだ、と筆者は考えています(経済評論家 塚崎公義)。

ドルの売買をする人は多様

為替レートというのは通貨の交換比率のことですが、一般にはドルの値段の事を意味しているでしょうから、本稿でもドルの値段について記すこととします。

ドルの値段は、かつては固定相場制といって法律で決まっていましたが、今では変動相場制と言って需要と供給が一致する水準に決まっています。つまり、ドルの買い注文と売り注文の量が等しくなる水準でドルの値段が決まる、というわけです。

そうは言っても、ドルを売り買いしている人々は非常に多様ですから、ドルの値段の決まり方も複雑です。売り買いする人は、大きく分ければ貿易している人、米国債等を購入している人、投機をしている人、に分けられます。

貿易している人がドルを売り買いするのは当然です。円建の取引であっても、貿易相手がドルを円に替えたりしているでしょうから、貿易収支がそっくりドルの需給を決めている、と言って良いでしょう。

米国債等を購入している人は、日米金利差を見ながら行動しています。日米の金利差が大きければ、ドルを持つことによる為替リスクがあっても米国債を買うでしょうし、金利差が小さければ為替リスクを嫌って米国債よりも日本国債を持つでしょうから。

問題は投機家です。彼らはドルが高くなると思えば買い、安くなると思えば売るわけですから、まさに美人投票の世界です。彼らの行動を予想することは非常に困難だと言えるでしょう。

ちなみに、ここで投機家と呼んでいるのは、文字通りの投機家だけではなく、一般人も投機的な取引をする場合にはここに含みます。たとえば、来年行く予定の海外旅行に持参する小遣いのドルを今のうちに買っておく個人とか、受け取った輸出代金をすぐに売却せずにドル高になるのを待っている輸出企業などです。

米国の景気がドルの値段に影響する

日本の景気よりも米国の景気の方が、ドルの値段に影響しています。日本の通貨の価値を決めるというのに、悲しいことですが(笑)。

米国の景気が良いと米国の輸入が増え、悪いと減ります。米国の輸入はそもそも巨額ですし、景気変動による影響を大きく受けます。一方で、日本の輸入はあまり景気変動の影響を受けませんから、結果として米国の景気変動の方が貿易収支に大きく影響するわけです。

米国の景気が良いと米国が金融引き締めをするので米国の金利が上がり、日米金利差が拡大します。従って、米国の景気拡大はドル買い需要を増やすわけです。

一方で、日本の景気拡大は理屈で言えば日本の金利を上げるわけですが、日本の方がインフレ率が低いので、上昇幅も小さくなりがちなのです。特に最近は景気と関係なくゼロ金利ですよね(笑)。

美人投票に関しても、米国の景気が注目されています。それは何故かと投機家に尋ねれば、「他の投機家たちが日本の景気よりも米国の景気に注目しているから」と答えるはずです。

皆が注目しているものは更に多くの注目を集め、皆が注目していないものは更に注目されなくなる、というのが美人投票ですから。

今では米国の景気拡大がドル高要因だが・・・

かつては、米国の景気拡大はドル安要因でした。米国の景気が拡大すると輸入が増え、米国の貿易赤字が悪化してしまう、という事だったのです。プラザ合意により猛烈なドル安となった記憶が鮮明で、米国の貿易赤字悪化で再度のプラザ合意が開催されるといった思惑が形成されていたのかも知れません。

しかし最近では、米国の景気拡大は日米金利差を拡大させるドル高要因だと考えられています。従来より遥かに大きな金額が国際的に資金移動しているからなのでしょう。

というわけで、美人投票の審査員が注目する評価項目が変化したので、同じ事が起きても反対の結果が生じる、という事になっているのでしょうね。少なくとも、筆者はそうだと信じています。本当にそうなのかは、美人投票なので確かめようがありませんが(笑)。

かつてドル安円高は日本の景気に悪影響が大きかったが・・・

かつて、ドル安円高は日本の景気に悪いとされ、ドル高円安が日本の景気に良いとされました。しかし、為替レートが日本の景気に与える影響は以前より遥かに小さくなっているようです。

その主因は、日本の輸出企業が現地生産化を進めているからです。為替レートの変動に影響されない経営体質を目指す、という事のようですが、人口が減少していく日本では経済が衰退しそうなので、早めに人口が増加している地域に根を張ろう、という事もあるようです。

というわけで、アベノミクスによる大幅なドル高円安でも輸出数量は少ししか増えませんでした。海外経済の成長だけで説明できてしまう程度の増加にとどまったのです。

今後についても、この流れが続くとすれば、為替レートは日本の景気にほとんど影響しない、といった時代が来るかもしれませんし、もしかするとドル高は景気に悪い、という時代が来るかも知れません。それについては別の機会に詳述しましょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

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