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夫が先に亡くなったら、妻がもらえる「遺族厚生年金」の受給額はいくら?

LIMO / 2022年2月20日 18時50分

夫が先に亡くなったら、妻がもらえる「遺族厚生年金」の受給額はいくら?

夫が先に亡くなったら、妻がもらえる「遺族厚生年金」の受給額はいくら?

令和2年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.64歳、女性の平均寿命は87.74歳。つまり、平均的には女性の方が、男性よりおよそ6年長く生きるということです。老後に遺族厚生年金を受給する女性は多いといえるでしょう。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、寒さが厳しく家にいる時間の増えるこの時期は、じっくり「お金」について考えるのに良いタイミングです。

今回は「遺族厚生年金」の受給要件や受給額について、わかりやすくご説明します。夫亡き後に年金をどのくらいもらえるのかを知っておくことで、一人になった時の年金生活をイメージできるでしょう。

「遺族厚生年金」とは

遺族年金には、国民年金の「遺族基礎年金」と厚生年金の「遺族厚生年金」の2つがあります。それぞれ支給要件が異なり、「遺族基礎年金」は被保険者に生計を維持されていた子のある配偶者、または子に支給されます。

「遺族厚生年金」は、厚生年金保険の被保険者(要件あり)が死亡した時に、生計維持関係にあった遺族に支給される年金です。「遺族基礎年金に上乗せして支給されるケース」と「遺族厚生年金のみが単独で支給されるケース」があります。

ここでは、老後に夫に先立たれた妻を想定して、主に単独で支給される遺族厚生年金についてお話します。

遺族厚生年金の受給要件

遺族厚生年金は、次の1から5のいずれかの要件を満たしている場合に支給されます。

    厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

    厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

    1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡したとき

    老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき

    老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき

※1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
※4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限ります。

老齢厚生年金受給者であっても、25年以上厚生年金保険に加入していた場合でないと、遺族厚生年金は支給されないということです。

次に、遺族厚生年金を受け取る遺族の要件も見てみましょう。

遺族厚生年金の受給対象者

生計維持関係にあった遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。

    妻(30歳未満の子のない妻は、5年間のみ受給)

    子(18歳到達年度の末日までの者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある者)

     夫(死亡当時に55歳以上の者。なお、受給開始は60歳からとなるが、遺族基礎年金を受給できる場合に限り、60歳より前から遺族厚生年金を受給できる)

    父母(死亡当時に55歳以上である者。なお、受給開始は60歳からとなる)

    孫(18歳到達年度の末日までの者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある者)

    祖父母(死亡当時に55歳以上である者。なお、受給開始は60歳からとなる)

優先順位は次のようになります。

    配偶者および子

    父母

    祖父母

※子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません。

遺族厚生年金の受給額

遺族厚生年金の受給額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。

※前述の受給要件の1から3(短期要件)に基づく遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

たとえば、老齢厚生年金の報酬比例部分が年120万円であれば、その4分の3である90万円を受け取ることができます。

「遺族厚生年金」と「老齢厚生年金」の両方を受給できる場合

65歳以上の遺族厚生年金の受給者(死亡した人の配偶者)が、自身の老齢厚生(退職共済)年金を受け取れる場合、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較して、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

なお、このように遺族厚生年金と自身の老齢厚生年金の両方を受け取れる場合、自身の老齢厚生年金が優先して支給されるため、遺族厚生年金額が老齢厚生年金額を上回る場合は、その差額が遺族厚生年金として支給されます。

出典:「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構」をもとに筆者作成

 

遺族厚生年金の加算2つ

厚生年金保険の加入期間が20年以上ある夫の死亡によって、妻に支給される遺族厚生年金には、要件によって加算があります。それぞれ確認しましょう。

<中高齢寡婦加算>

次のいずれかに該当する場合、妻が「40歳から65歳になるまで」の間、中高齢寡婦加算として58万5700円(年額)が加算されます。ただし、遺族基礎年金が支給されている間は、中高齢寡婦加算は支給停止となります。

    夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子(※1)がいない妻。

    遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(※2)が、子が年齢要件から外れるなどで、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。

※1:「子」とは、18歳到達年度の末日を経過していない子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子をいいます。
※2:40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻。

<経過的寡婦加算>

中高齢寡婦加算は妻が65歳になると加算されなくなりますが、昭和31年4月1日以前生まれの妻については、経過的寡婦加算として65歳以後の遺族厚生年金に、生年月日に応じた一定額が加算されます。

老後一人になった時の年金生活は?

ここで、平均的な厚生年金受給者を例にして、夫が亡くなった後の妻の生活をイメージしてみましょう。

厚生労働省の資料によれば、厚生年金受給者の平均年金月額は「14万4268円(令和2年度)」です。また、総務省の家計調査(家計収支編・2021年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の社会保障給付は平均「21万6519円」です。

これらを目安にした次の夫婦を例にして、遺族厚生年金の額を出してみましょう。

夫(75歳)‥年金月額:約14万6000円(老齢厚生年金の報酬比例部分8万1000円)

妻(70歳)‥年金月額:約7万円(老齢厚生年金の報酬比例部分5000円)

夫が亡くなった場合、妻は夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3である「6万750円」から、自身の老齢厚生年金の報酬比例部分を引いた「5万5750円」を遺族厚生年金として受け取ることができます。自身の老齢年金7万円と合わせると妻が受け取ることができる年金の月額は「12万5750円」となります。

妻が一人となった場合の生活費も見てみましょう。

前出の総務省の家計調査(家計収支編・2021年)より、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は「13万2476円」となっています。この数字を使って、先ほどの妻の年金収入から消費支出を引くと「6726円の赤字」となります。

実際はこの他に税金や社会保険料などの非消費支出も引かれるので、さらに赤字は増えますが、遺族年金は非課税となっているためその部分の税金は抑えられます。

遺族年金を知って老後について考えよう

これまでのシミュレーション結果から、残された妻の生活は、遺族厚生年金によって少し支出を抑えれば成り立つ程度になることがイメージできたのではないでしょうか。

ただし、あくまでも平均的なデータを用いた一つの例なので、遺族厚生年金をもらえれば安心というわけではありません。それでも、女性は人生の最後に「おひとりさま」となる確率が高いので、遺族年金を知ることで不安が少なくなるといいと思います。

参考資料

令和2年簡易生命表の概況|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/index.html)

遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html#PTOP)

令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/000872907.pdf)

家計調査 家計収支編 (2021年) 二人以上の世帯 第3-12表 (高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別|総務省(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032167628&fileKind=0)

家計調査 家計収支編 (2021年) 単身世帯 第6表 職業別|総務省(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032167812&fileKind=0)

No.1605 遺族の方に支給される公的年金等|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1605.htm)

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