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景気予測が難しいのは景気回復初期。景気予想家の考えることとは

LIMO / 2022年2月25日 21時0分

景気予測が難しいのは景気回復初期。景気予想家の考えることとは

景気予測が難しいのは景気回復初期。景気予想家の考えることとは

景気予測で簡単なのは景気が順調に拡大している時、難しいのは景気回復の初期だ、と筆者は考えています(経済評論家 塚崎公義)。

景気予測の基本は、景気が自分では方向を変えないこと

景気は自分では方向を変えません。景気拡大時は売り上げが増えるので企業が生産を増やし、そのために労働者を雇い、雇われた元失業者が給料をもらって消費をし、売り上げが更に増えて景気が拡大する、といった好循環(景気悪化時は悪循環)が生じるからです。

教科書には在庫循環や設備投資循環などといった単語が出て来ますが、昔はそんな事もあったのか、といった程度に考えておけば良いでしょう(笑)。

そうなると、景気予想屋の仕事は「景気が上を向いているのか下を向いているのかを判断する」「財政金融政策が景気の方向を変えるか否かを予想する」「海外景気の変動が輸出数量の変化を通じて国内景気の方向を変えるか否かを予想する」といった事になるわけです。

本来であれば、「今がバブルか否かを判断し、仮にバブルであったとすれば、いつバブルが崩壊してどの程度の影響が出るのか」を予想したところですが、それは不可能でしょうから、チャレンジする景気予想屋は稀でしょうね。

政府の財政金融政策で十分か否かを経験と勘で予測

景気が下を向いている時には、政府日銀が財政金融政策で景気を回復させようとしますから、それで景気が回復するのか否かを予想することになります。

財政政策については、各種報道でどのような措置が講じられそうかが予想できます。

あとはそれで景気を回復させるのに十分なのか否かを予想するわけですが、それには長年の経験と勘が必要です。「景気は気から」なので経済学理論では予想が難しいからです。

公共投資に関しては、政府が直接失業者を建設労働者として雇う分については予測が容易ですが、雇われた元失業者が受け取った給料を消費するのか貯金するのか、といった乗数効果の部分の予想は経験と勘で行います。

問題は、減税です。減税が消費や投資につながるのか、全額貯金されてしまって効果がゼロなのか、大いに消費者マインドや企業家マインドに影響されるからです。

金融緩和に関しては、景気を回復させる力は弱いので、あまり気にする事はありません。金利が大幅に引き下げられれば少しは設備投資等が増えるかも知れませんが、その程度です。

不況期は既存の工場の設備稼働率が低いので、金利が下がったからと言って新しい工場を建てようという会社は少ないからです。

金融緩和が美人投票的に株高やドル高をもたらし、それが景気を回復させる、という可能性はあります。ただ、そもそも美人投票の結果を予想するのは極めて困難ですし、仮に株高やドル高になったとしても景気への影響はそれほど大きく無いでしょうから、あまり気にしなくて良いと思います。

反対に、景気過熱によってインフレが心配な時には緊縮財政と金融引き締めによって景気をわざと悪化させてインフレを防ぐわけですが、こちらについても長年の経験と勘が必要なはずです。

問題は、過去数十年にわたってインフレ懸念が生じた事がないので、経験と勘を使える景気予想屋がほとんどいない、という事でしょうね。

財政は、インフレ抑制は苦手です。成立済みの予算の執行を凍結する事は容易ではありませんし、インフレ抑制のために増税する事は更に困難でしょうから。というわけで、金融引き締めの影響を論じることになるわけですね。

これについては、経験と勘が使えないならば、「日本で最も優秀な景気予想屋たちを大勢雇っている日銀が決めたことだから、きっと景気後退は軽微でインフレも抑制されるだろう」と考えておけば良いように思います(笑)。

海外経済の変化による国内景気変動に注意

海外経済の変化によって輸出数量が増減して国内の景気に影響を与える可能性についても、しっかり予想する必要があります。まずは海外経済の予想屋の話を聞き、景気に変調が見られそうならば、それが日本の輸出にどう影響し、それが日本の景気にどう影響するかを予想するわけです。

日本経済は内需が弱いので、景気が過熱してインフレ懸念が出てくる前に、海外経済の変調で輸出が減少し、景気が腰折れる場合が少なくありません。というか、バブル崩壊後の長期低迷期の景気後退はほぼ海外経済の変調によるものだったわけですね。

海外経済が回復することで日本の輸出が増え、日本の景気が回復する場合もありますが、こちらは余り気にする必要はないでしょう。海外でも日本でも景気の回復は後退に比べて緩やかな場合が多いので、海外経済が回復する時には日本の輸出数量への小幅な影響が長期間続くわけで、政府日銀の景気対策の影響に紛れてしまって見えない場合も多いからです。

景気が順調に拡大している時は比較的余裕がある

景気が順調に拡大している時には、景気の予想屋は比較的ヒマです。インフレ懸念が出るほど景気が過熱していれば別ですが、そうでなければ財政金融政策は発動されないでしょうから。

海外経済の担当者に変調の兆候があるか否かを定期的に聞くわけですが、これも変調など滅多にあることではないので、「特にない」と言われたら、特にすることは無いわけです。

もちろん、本当にヒマにしているわけではなく、次の不況期に備えた勉強等は当然に必要なわけですが。

景気回復初期の予測が最も困難

景気予想屋にとって最も悩ましいのは、景気回復初期に海外経済に小さな変調が生じる場合です。景気が順調ならば、多少の輸出数量の減少があっても景気は拡大を続ける場合が多いのですが、回復初期はそうでもないからです。

もともと体が弱い人が、病み上がりで体力が弱っている時には、少し寒風に当たっただけで風邪を患ってしまう事が多いでしょう。そんなイメージですね。

しかも、景気は自分では方向を変えないので、微妙な判断を間違えると結果を大きく間違えることになりかねません。船が嵐で傾いている時に、あと1センチ波が高まれば転倒して沈没するが、現状の波が続くのであれば、嵐の後に船が元に戻って何事も無かったように航海を続けるだろう、と言う時に似ています。

船員たちは非常に緊張するのでしょうが、景気の予想屋も非常に緊張するわけです。僅かな違いが大きな結果の違いになってしまいますから。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

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