認知症対策に最適!家族信託の基礎とは。家族信託と介護保険の関係も弁護士が解説
LIMO / 2022年2月28日 12時0分
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認知症対策に最適!家族信託の基礎とは。家族信託と介護保険の関係も弁護士が解説
最近、「家族信託」という言葉を見聞きする機会が多くなりました。
銀行や保険会社の力の入れようは目を見張るものがあり、ブームになっているようです。
今回は、家族信託が力を発揮する場面の一つである認知症対策に焦点を当て、家族信託とは一体何なのかをご説明します。
認知症になるとどうなるか?
認知症の原因は様々で、誰もが発症するリスクを抱えています。
【図表】認知症の人はどれだけ増えそうか
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/-/img_5234081f99f322bb3dccc2625786b70b74330.png)
【出典】厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」
2012年の時点で高齢者の約4人に1人が認知症または軽度認知障害(MCI)
2018年の時点で高齢者の約7人に1人が認知症
2025年の時点で高齢者の約5人に1人が認知症(予測)
このような厚生労働省の調査結果が公表されています。
認知症が進行し、財産を管理する能力が無いと判断されると、預貯金の引き出し、不動産の売買契約や賃貸借契約、株式取引等の資産運用といった法律行為ができなくなります。
年金や家賃等の定期的な収入で毎月生計を立てている場合、預貯金が引き出せなくなってしまうと、たちまち生活に困ってしまいます。
認知症対策としての家族信託
そこで、このような認知症による資産の凍結への対策として注目されるのが、「家族信託」です。
資産が凍結されてしまった場合、これまでは「成年後見」という方法で対応することが一般的でした。
「成年後見」とは、家庭裁判所が選んだ成年後見人が、あなたの代わりに財産を管理する仕組みです。
もっとも、成年後見の場合、成年後見人は健康なときのあなたの意向を十分に理解しているわけではありません。また、成年後見が開始した時点では、あなたの判断能力はかなり低下していますので、現在の意向を十分に汲み取ることができません。
そのため、成年後見人は、保守的な財産管理を行うことにならざるを得ません。
これに対し、「家族信託」は、あなたが健康なうちに財産管理の内容を決めることができますので、あなたの意向にそった柔軟な財産管理が可能となります。
「成年後見」も「家族信託」もどちらもあなたの生活を守るという意味では同じように役に立ちます。ただ、保守的な財産管理を得意とする「成年後見」と柔軟な財産管理を得意とする「家族信託」というように、それぞれの得意分野があります。
そして、「家族信託」は、この柔軟な財産管理という点が支持され、ニーズが高まっています。
これだけは知っておきたい!「家族信託」の基礎知識
「家族信託」を実際に行う際は、弁護士等の専門家にご相談されるでしょうから、ここでは、入門として、これだけは知っておきたい基礎知識をお伝えします。
「家族信託」は契約ですので、取り決めた内容を契約書に記載することになります。
その契約書には、登場人物として、「委託者」と「受託者」と「受益者」が出てきます。そして、管理の対象となる財産を「信託財産」と呼びます。
たとえば、あなたが、お子様に対し、不動産の管理を任せる場面を想像してください。
「あなた(=委託者)が、お子様(=受託者)に対し、あなたのため(=受益者)に、あなたの不動産(=信託財産)の管理を任せる。」ということになります。
あなたが「家族信託」を行う場合、財産の管理をお願いする「委託者」は常にあなたです。
あなたの依頼を受けて財産を管理するのが「受託者」です。「受託者」は誰でも構いません。お子様でなくても、甥っ子や姪っ子でもかまいません。信頼できる人であれば誰でも良く、第三者でも構いませんが、家族を信じて財産を託すことが一般的であるため、「家族信託」と呼ばれています。
「受益者」とは「家族信託」によって利益を受ける人です。通常はあなたですが、場合によっては体の悪いお子様ということもあります。
「信託財産」は全財産である必要はありません。財産の一部だけを「信託財産」とすることも可能です。ですので、収益動産のみを「信託財産」とし、それ以外の預貯金はそのままにしておくということも可能です。
要支援認定・要介護認定と「家族信託」
最後に、要支援認定・要介護認定との関係で時々受けるご質問についてお答えします。
Q. 私の父は要介護認定を受けています。そうなると「家族信託」をするのはもう無理なのでしょうか。
A. 介護保険制度における要支援認定・要介護認定は、主に身体的機能の低下を対象としており、財産を管理する能力とは必ずしも同じではありません。介護が必要な状態であっても、認知機能がそれなりに備わっているというケースは多いです。
自分がどのような財産を持っており、どの財産の管理を誰に託そうとしているか、財産の管理を託すことで何をしようとしているかを理解できる能力があれば、「家族信託」を行うことが可能です。
「家族信託」は契約ですので、契約が有効でなければ目的を達成できません。詳しくは弁護士など専門家に相談すると安心でしょう。
参考資料
厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」(令和元年6月20日)(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf)
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