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【インド】2022-23年度予算案から紐解く国家の展望〈HSBCアセットマネジメント レポート〉

LIMO / 2022年3月4日 7時45分

【インド】2022-23年度予算案から紐解く国家の展望〈HSBCアセットマネジメント レポート〉

【インド】2022-23年度予算案から紐解く国家の展望〈HSBCアセットマネジメント レポート〉

インド財務省は2月1日、2022-23年度(2022年4月~2023年3月)の予算案を発表。

予算案は、現政権が①インフラ、②経済的平等、③生産性と持続可能性、④民間投資を4本柱として重点的に進める発展ビジョンに沿ったものとなっている。

予算案全体に共通しているのは、官民両部門で生産性と効率を向上させるための技術導入やデジタル化推進への政府の意気込みである。

新年度予算案はシタラマン財務相により2月1日に発表された。予算案には2022-23年度の財政運営方針の概要が示されている。予算案の項目を見ると、政府がインドの将来の発展についてどのような展望を抱いているかが分かる。

モディ政権は発足以来、近代経済のニーズを満たそうとして国内でのインフラの拡大・改善を推進してきた。民間からの参加を促し、国内経済の生産性と効率の改善に向けて努力してきた。

それらの原則は新年度予算案でも、いくつかの新しい政策とともに、強調されている。

財務相による演説

シタラマン財務相は2022-23年度予算案に関する演説を行った。予算案は、現政権がインドを近代経済へと発展させるために掲げるビジョンに沿ったものとなっている。

同財務相は、このビジョンの実現に向けて、①「多様式コネクティビティへの国家インフラ開発計画」、②インクルーシブ開発、③生産性の向上と持続可能性、④投資のための資金調達という4本柱を挙げた。

多様式コネクティビティへの国家インフラ開発計画

インドでは物流面での障害と、そのために人とモノの流れが相対的に活発さを欠いてきたことが、経済発展に対する主な足かせになっていると指摘されてきた。

こうしたなか、政府は2021年10月に近代的インフラ整備を目指す待望の「多様式コネクティビティへの国家インフラ開発計画」を打ち出した。

この開発計画には、道路、鉄道、空港、港湾、公共交通、水路、物流インフラの7つの主要項目が盛り込まれている。政府は、開発計画に含まれる関連項目向けの歳出を新年度予算案で計上した。

その中には、総延長2万5000キロメートルの国道の新年度内敷設、今後3年間の高速鉄道車両400台の製造計画、モノの流れの状況把握改善に繋がる全国統一的なデジタル物流プラットフォームの運用開始などが含まれている。

インクルーシブ開発

インドのインクルーシブ開発への取り組みは、中国が提唱する「共同富裕」構想と同じように、急成長する経済の恩恵を社会全体、とりわけ社会経済階層の下位に属する人々が、確実に共有出来ることを目指している。

そのために、予算案では特に農民、子供、小規模企業経営者への支援策が明記された。具体的には、政府は1600万人の農民を支援するために、小麦と米の買い上げ予算として2.4兆ルピーを計上した。

農業支援予算には、農薬や肥料の散布などをおこなう農業用ドローンなどの技術開発と導入や耕地面積拡大のための灌漑インフラ整備向けの歳出も盛り込まれた。

子供に適切な教育機会を確保するために、テレビの教育放送チャンネル数を現在の12から200に増やす予定である。オンライン授業用の無料コンテンツも拡充される。

政府は、新型コロナウイルスに伴い打撃を受けた小規模企業を救済するために、緊急信用枠保証制度(ECLGS)の対象期間を2023年3月まで延長するとともに、信用枠総額を5兆ルピーに引き上げた。

政府保証の裏付けがあるECLGSは、小規模企業が経営難に陥った際に資金繰りの改善に繋がる。

生産性の向上と持続可能性

ビジネス環境の改善が生産性の向上に繋がり、ひいては経済に利益をもたらすと確信する政府は、規制緩和を公約に掲げている。

実際、最近数年間で2万5000件以上のコンプライアンス規則と1486に上る国家規定が撤廃された。民間企業に求められる現在の法的届出は手動で、時間を要し無駄な手続きが多い。

こうしたなか、政府は「ビジネス環境の改善」を一段と推進させるために、これらの手続きのデジタル化と、異なる政府機関のプラットフォームを統合するために必要なITソリューションの確立を計画している。

インドの人口のほぼ半数は21世紀半ばまでに都市部に集中するという見通しがあるなか、政府は、いわゆる人口ボーナス(農村から都市への労働力の移動は生産性の向上をもたらすことで知られている)をフルに活用するため、現行の都市計画フレームワークの刷新を予算案で提案した。

モディ首相が2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)にて、インドが2070年までにカーボン・ニュートラルを達成すると表明していたため、予算案の重点項目としてクリーン・エネルギーへの移行が浮上したことに驚きはなかった。

気候変動関連では高効率の太陽光発電モジュールの生産に向けて、生産連動型優遇策(PLI)として1950億ルピーの予算が上乗せされた。

さらに、二酸化炭素排出削減を推進するために、石炭火力発電燃料の5~7%をバイオマス燃料にすることが決まった。

投資のための資金調達

上記の政策の全てを実現するためには、最終的には財源の確保が重要になる。政府予算案で示された野心的な歳出計画に必要な財源の全てを単独で賄う能力がないことは明らかだ。

そのため、官民連携によるブレンド・アプローチが求められる。政府は適切な公共投資は民間投資を引き寄せる触媒として重要な役割を果たすと考えている。

そうした役割を満たすために、新年度の公共投資予算額は7.5兆ルピーで前年度比35%増となった。

近代的デジタル化への決意

予算案の前年度比増減率を省別に見ると(図表1)、予算配分がインフラ関連に著しく偏っていることは明らかだ。

予算案全体に共通しているのは、官民両部門で生産性と効率を向上させるために、農業生産支援ドローンから、異なる政府機関のプラットフォームの統合に至るまで、これらの技術導入やデジタル化の推進に対して見せる政府の意気込みだ。

これは、インドがグローバル市場において競争力を有するために不可欠な、近代的なデジタル経済への移行の必要性を政府が認識していることの表れと言える。

〈マーケットサマリー〉

株式市場

高値圏にあるものの、足元、やや資金流出が見られる
インド株式市場は引き続き高値圏で推移しているが、足元、新型コロナウイルスのオミクロン株の出現、米国の早期金融引き締め観測、地政学的リスクの高まりなどから、資金流出が見られた(2月18日現在)。

HSBCアセットマネジメントの株式運用戦略

本年は力強い経済成長が予想されていること、国内での新型コロナウイルスのワクチン接種が急速に進展していることなどを背景に、サービス消費への需要の高まりが期待され、これが市場にとりプラスに働くと考える。

インドの拡張的な財政政策を背景とした設備投資の推進や世界経済の成長などにより、インド経済は中長期的に拡大していくと見られている。

こうしたなか、同国の企業業績にも持続的な改善が期待され、企業の利益成長が中長期的な相場のけん引役になると思われる。ただし、短期的には原油高に伴うインド経済への影響、やや高水準にあるバリュエーションに留意が必要である。

インド株式の運用では、持続的な収益成長性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別する。

業種別には金融、不動産、ヘルスケアを選好し、公益事業、通信、エネルギー、生活必需品、資本財、素材には慎重なスタンスをとっている。またインフラ関連銘柄は、モディ政権が推進するインフラ投資計画の恩恵を受けると見込まれる。

債券市場

売り優勢の展開が続く
国債市場は、2021年5月下旬から軟調な展開(利回りは上昇)が続いている。

インド準備銀行(中央銀行)が政策金利を据え置くなど緩和的な金融環境は市場のサポート要因となっているものの、米国の長期金利の上昇や原油高などが債券市場の重しとなっている(2月18日現在)。

HSBCアセットマネジメントの債券運用戦略

新型コロナウイルスなどインド経済を巡る懸念材料が払拭されないなか、中央銀行は国内景気に配慮しながら、当面、緩和的な金融環境を維持していくと考えられる。

ただしインフレが高進した場合、中央銀行は、より中立的な政策に軸足を移すこともあり得る。新型コロナウイルスの感染が収束し経済活動が正常化すれば、インド経済の優位性が際立つと思われる。

こうしたなか、世界の投資家はインド国債の相対的に高い利回り水準に再注目すると考える。インド債券の運用においては引き続きインドルピー建国債に重点を置いて投資を行っている。

また、中期ゾーンのインドルピー建社債を選好している。

為替市場

インドルピーは対円で上昇、対米ドルで下落
インドルピーは2021年9月以降は、米国の金融政策の正常化などから米ドル高・円安が進行するなかで、対米ドルでは下落、対円では上昇している(2月18日現在)。

インドルピー相場は中長期的には、相対的に良好な経済ファンダメンタルズや高い金利水準、海外からの直接投資の拡大などが支援材料となり、堅調な展開が予想される。

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