「年金71歳以降に繰り下げたい」は7.4%だけ。厚生年金「月額15万円以上」の割合とは
LIMO / 2022年3月8日 17時50分
「年金71歳以降に繰り下げたい」は7.4%だけ。厚生年金「月額15万円以上」の割合とは
2022年4月、年金制度改正法が施行されることに伴い、年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げることが可能になります。
75歳まで繰り下げた場合、年金額は84%増やせることに。
多くの方は60歳~65歳で退職を迎えますが、そこから75歳までの収入に困ることがなければ、「割増された」年金を受け取れるということです。
しかし、日本トレンドリサーチが2022年2月4日~2月7日に全国の男女計1250名を対象に行った「年金の受け取り年齢に関するアンケート」によると、71歳~75歳に年金を受給したいと答えた方は、わずか7.4%でした。
繰り下げ受給のハードルの高さとなる原因を見ながら、厚生年金を「月額15万円」受け取れる割合も確認していきます。
71歳以降に年金を繰り下げたい人「7.4%」
原則、公的年金の受給開始は65歳ですが、65歳より前に受け取る「繰り上げ年金」や、66歳以降に受け取る「繰り下げ年金」を選択することも可能です。
しかし日本トレンドリサーチの「年金の受け取り年齢に関するアンケート」によると、受給開始年齢の希望として一番多いのは41.1%の65歳でした。
4月から可能になる「71~75歳」に関しては、7.4%という少数派に。
また現行可能である「66~70歳」よりも、繰り上げ受給の対象となる「60~64歳」の方が多い結果になりました。
1.7%いる「その他」を選んだ理由としては、次のような声がありました。
そんな先のこと、今は考えられない
仕事できているかによる
そのときの状況で変わる
「早く受け取れば受給月額が減る」「遅く受け取れば受給月額が増える」。
制度上は単純に思えますが、いざ将来のことを考えてみると、不確定要素が多すぎて判断できないというのが本音といえるでしょう。
具体的に将来を考えやすいように、年金受給額の実態をご紹介します。
厚生年金を「平均並み」の15万円以上受け取っている割合とは
厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給者数は1610万133人。
受給月額の平均は14万4366円です。
平均を約15万円とすると、それ以上受け取っている人の割合が気になりますよね。
男女別でその割合を確認してみましょう。
全体:約46.4%
男性:約64%
女性:約9.2%
全体では半分弱の約46.4%が「15万円以上」の厚生年金を受給していますが、男女でその違いがはっきりと表れています。
厚生年金の受給額は、基本的に「平均標準報酬額×5.481/1000×加入(勤務)期間」で求められます。(2003年4月以降の加入の場合)
「現役時代の賃金」と「加入期間」が反映されるため、働く女性が少なかった今の年金受給世代では、このような結果が表れているのです。
男女差は埋まりつつありますが、個人差は今後も続いていくでしょう。
厚生年金が「ひと月15万円」に対して多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれですが、実際の受給額を知ることは大切です。
少ないと感じた場合、対策の一つは「繰り下げ受給」となるでしょう。しかし、繰り下げ受給には消極的な結果も垣間見えました。
繰り下げ受給のメリットとデメリットにはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
繰り下げ受給はハードルが高い?メリットとデメリットを比較
年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額を上げられる繰り下げ受給。具体的には1カ月あたり0.7%増額できます。
1年で8.4%なので、最大の75歳まで繰り下げれば84%も増額できる計算になります。
しかし厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金と厚生年金の繰り下げ率は1~2%台で推移しています。
先ほどの調査でも、「71歳以降に繰り下げたい」と答えた若者は7.4%に留まります。
なかなか選択されない繰り下げ受給について、そのメリットとデメリットを見ていきましょう。
繰り下げ受給のおもなメリット
受給額を上げられることが何よりのメリットです。
増額は一生涯に渡るため、長生きすればそのメリットをより享受できます。
繰り下げ受給のおもなデメリット
年金を受給するまでの間は無年金となるため、その間働くか預貯金を切り崩すこととなります。
厚生労働省の「健康寿命の令和元年値について」によると、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。さらに健康寿命は男性で72.68歳、女性で75.38歳。
これらを参考にする限り、75歳まで受給を遅らせるのは不安が残ります。
また増額された年金からは、税金や保険料が天引きされます。課税所得が増えるほど天引きされる金額も増えるため、「思ったより手取りが増えない」というケースもあります。
非課税ラインの方が課税額を超えると、さらに負担感が増すでしょう。
手続きの煩雑さもデメリットの一つです。もともと申請制の年金ですが、繰り下げ受給をする場合はさらに申請が必要になります。
「国民年金のみ繰り下げるのか、厚生年金も繰り下げるのか」などのパターンごとに手続き方法が変わるため、その複雑さから断念する方もいます。
長生きリスクへの備えを
公的年金は「生きている限り受給できる」という性質上、長生きへの備えとして必須の制度です。
受給額の平均は約14.4万円。平均なので個人差があるため、まずは自身の受給額を知ることが必要です。
もし受給額が十分でないと考えたときは、「繰り下げ受給」が一つの選択肢となるでしょう。
しかし実際には選択する人が多くない現状から、少なからずデメリットがあることもうかがえます。
年金だけでなく貯蓄や保険、資産運用なども組み合わせながら、長生きリスクに備える方法をしっかり考えておきたいですね。
参考資料
日本トレンドリサーチ「年金の受け取り年齢に関するアンケート」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000087626.html)
厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf)
厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/000872907.pdf)
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