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今が50年ぶりの円安だと言われる理由は物価上昇率の格差。為替レートを丁寧に解説

LIMO / 2022年3月6日 19時15分

今が50年ぶりの円安だと言われる理由は物価上昇率の格差。為替レートを丁寧に解説

今が50年ぶりの円安だと言われる理由は物価上昇率の格差。為替レートを丁寧に解説

今が50年ぶりの円安水準だと言われるのは、諸外国の物価が上昇したわりに為替レートの円高が進んでいない事を示したものでしょう。(経済評論家 塚崎公義)。

今は50年ぶりの円安だと言われる事がある

為替レートが実質的に50年ぶりの円安水準になったと言われ、話題となっています。50年前は1ドルが300円程度であったのが、最近は115円程度で推移しているのに、なぜなのでしょうか。

それは、海外の方が物価上昇率が高いので、ドルの値段がその分だけ安くなっても実質的な円相場は同じだ、という事なのです。

事実とは若干異なりますが、数字でイメージしてみましょう。50年間、日本の物価は変わらず、米国の物価は3倍になりました。50年前は1ドルが300円でしたが、今は100円です。米国で1ドルだったものが3ドルに値上がりしましたが、日本人から見れば300円のままです。

日本の物価も変化していないので、日本製品を米国に輸出する時の困難度は50年前と同じです。つまり、実質的には為替レートは50年前と同じなのです。

その事を示したのが下のグラフです。

青い線は為替レートの推移、赤い線は物価上昇率を考慮した輸出の困難度の推移です。どちらもグラフが上にいくと円高で輸出が難しいという事を示しています。

実際にはドルだけでなく、日本の貿易相手国の通貨を広く考慮して指数を計算しているわけですが、細かいことはマニアックなので文末の補論に詳述することにします。

25年間の円高分が、その後の25年で戻ったことに

グラフを見るとわかるのが、為替レート自体は50年前より大幅に円高になっているけれど、物価上昇率を加味すると50年前と同水準であるということですが、前半25年間と後半25年間で動きが全く異なることも見て取れます。

前半25年間は、急激な円高が進み、物価上昇率格差より円高が早かったので輸出企業が苦労したわけです。その後は物価上昇率格差が残った一方で為替レートが横ばい圏で推移したため、輸出の厳しさが次第に薄れていった、ということですね。

過去50年間の平均と比べて今の方が遥かに輸出が容易であるわけですし、25年前でさえも貿易収支は黒字だった事を考えると、今の為替レートは円安水準だと言って間違いないでしょう。

それでも最近の貿易収支は概ねゼロなのですが、その話は別の機会に詳述することとします。

為替レートの基本的な考え方は、インフレ分だけ変化すること

そもそも為替レートは、各国の物価水準を等しくするように決まるのが基本です。米国で1ドルのものが日本で100円ならば、為替レートは1ドル100円であるのが基本です。

もしも1ドルが1円だったとすれば、日本人が円をドルに替えて米国に買い物をしに行くでしょう。彼らのドル買い注文が銀行に殺到することでドルの値段が上がっていき、1ドルが100円になった所で止まるはずです。

反対に、1ドルが1000円だったら、米国人がドルを売って日本に買い物に来るでしょうから、彼らのドル売りでドルが値下がりし、やはり100円になるはずです。

もちろん、貿易には輸送等々のコストがかかりますし、自動車は日本の方が安いけれども牛肉は米国の方が安い、といった品目別の違いもありますから、ぴったり同じ値段になるわけではありません。ただ大雑把に言えば同じ値段になるはずだ、とは言えそうです。

そうなると、インフレ率の違いだけ為替レートは変化していくのが自然だという事になります。日本の物価が一定で米国の物価が2倍になれば、ドルの値段が半分になることで日米の物価水準が等しくなるからです。

その観点からすると、過去25年間の為替レートが概ね横ばいで推移していた事は驚きですが、「貿易収支がゼロだからドルの売り買いが均衡して為替レートが動かない」と考えれば納得が行くかも知れませんね。

実質実効為替レートは「輸出困難度指数」と呼ぶべき(補論)

グラフの青い線は、名目実効為替レートと呼ばれるものです。米ドルと円の関係のみならず、他の貿易相手国の通貨との関係も総合的に考えよう、ということで、各国の為替レートとの関係を貿易相手国としての重要性に応じて「加重平均」したものです。

グラフの赤い線は、実質実効為替レートと呼ばれるものです。各国の通貨との関係を物価上昇率を考慮して輸出の難しさを求めた上で、それを各国との貿易相手国としての重要性に応じて「加重平均」したものです。

実質というのは物価上昇率を勘案したものである事を意味する言葉で、実効というのは貿易相手国とのウエイトに応じて加重平均している事を意味する言葉なのですが、為替レートという部分がいただけません。

これは為替レートではなく、「輸出困難度指数」とでも呼ぶべきものなのです。指数ですから「1ドルは◯◯円」といった表示ではなく、「◯◯年を100とすると今年は95」といった表示になります。

1ドル◯◯円という表示だと、数字が大きくなると輸出が容易になりますが、実質実効為替レートは数字が大きくなると輸出が困難になるので注意が必要です。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

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